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ノエルの文化祭

「シュクルのテントはどこだろう?」


 貴族院の入り口付近は王都や公爵家の領地のテントが密集している。まさかシュクルのテントはその様な場所にあるのだろうか。ノエルは一応行って確認してみる事にした。


「何かな?」


そばのテントでひと際盛り上がっているテントがあった。


「このクリームでシミを防止できますよ」


「まあ!」「欲しいですわ!」「でも本当かしら?」「美白したいのよ」「皺も嫌だわ」


どうやら女性に人気の化粧品類だろう。そしてその横のテントには沢山のチェリーとスリーズが働いていた。多分ここがシュクルのテントだと思う。


「こんにちは。あれ? 確かあなたは魔術師の⋯⋯」


お店にいた人はデビュタンの時にシュクルの腰にしがみついていた魔術師だった。


「⋯⋯ピンクの頭⋯⋯シュクル様のご兄弟でしょうか?」


「はい。シュクルの兄のノエルです」


あの魔術師に顔は似ているけど、しっかりとした雰囲気が似ていない感じもする。

もしかすると兄弟なのかもしれない。


「シュクルサマの兄?」「ヒョロいネェ」「髪がピンクダネ」「ムシシ」「細いのヨ」 「ケケケ」


いきなり精霊たちに囲まれて観察された。精霊は大きいので威圧感がある。


「すみません、死のダンジョンTシャツはありますか?」


「ございますよ。ドラゴンのS,M,Lがございますが――――」


「パンイチ帝国の軍旗はありますか?」「魔蜜蜂のはちみつ下さい」 「謎の仏師の作品を下さい!」


「あるヨ!」「ありがとネ~」 「売り切れダネ」


シュクルのテントは大忙しみたいだ。 邪魔をしないように他に行こうかな⋯⋯


「ちょっと! あなたシュクルの兄弟なの? あらま! 可愛い顔してるじゃない! ちょっと顔貸しなさいよ」


「え?」


いきなり隣の化粧品を販売している女性に話しかけられた。どうやらシュクルの知人らしい。


「ほらここに座って! ではみなさ~ん、このラビット化粧品一押しの、この基礎化粧品の効果的な使い方を伝授いたしま~す」


「え?」


いつの間にか丸い椅子に座らされ、髪も止められ顔に色々塗られ始めた。


「まぁ~!」「可愛いわ~!」「買っちゃう!」「私もよ!」「お兄さんはおいくら?」


目の前で高価そうな化粧品が飛ぶように売れだした。凄いな。これが王都のマダム⋯⋯



「シュクルの兄弟だけあるわ~ありがとうね! ばっちり売れたわ! ハハハ!」


「そうですか。それは良かったです」


なかなかできない体験をしたノエルは次に学習展示物を見に行く事にした。


まずは淑女科の綺麗な作品を見て、クラリスは家で一人で大丈夫かな? と考えていると⋯⋯


「ノエル様~!」「私の作品どうですかぁ?」「ノエル様の好きな女性のタイプを教えて下さい!」


淑女科の女性に囲まれた。


「みなさんこんにちは。素晴らしい作品ばかりでお店なのかと思いましたよ。好きな女性のタイプですか⋯⋯妹みたいな方でしょうか」


ノエルはこの学園でも地位が低いので常に低姿勢を心掛けているが、本当に飾られている作品は綺麗だったし、お店で売れる品質だなぁと思った。


そして好きな女性のタイプ⋯⋯それは将来自分と結婚してパックの町に移り住むことが出来る女性だから⋯⋯とにかく健康な人がいい。寒さが厳しく、王都みたいな娯楽もなければ魔獣がいて危険もある。おまけに家は貧乏男爵家だから⋯⋯シュクル位強い女性ならやっていけると思った。


「え?」「あの時期獣王⋯⋯」「先ほど反社っぽい四人歩いておりましたわよ」「超美少女⋯⋯」「豊満な方が⋯⋯」


よく分からないけれど女性たちが固まってしまったので文理科の研究を見て、そのままシュクルの部活動の展示を見に向かった。


「オカ研⋯⋯ここかな?⋯⋯え?」


扉を開けてみるとそこは真っ暗な蝋燭の明かりだけが灯る部屋で、裸に赤いロープで縛られた男性達が四つん這いになっている奇妙な場所だった。


「ブヒブヒ?(新加入者?)」


「あら? 新しい豚⋯⋯じゃないわね。シュクルの兄じゃない。駄目よここに落ちては。シュクルに怒られるわ」


「え? あの、すみませんでした」


何だか物凄い服? 下着? を着た女性に部屋から追い出された。シュクルの知り合いなのかな? どうも四つん這いの男性の中には教師もいた気がしたけど顧問の先生だろうか?


世界にはまだノエルの知らない事が沢山あるなと思った。


次にノエルは隣のオカ研の部屋に行ってみた。


「こんにちは。シュクルはいますか?」


「あ! シュクルのお兄さんのノエルさんですね! いいですね~今度兄弟の近〇相姦モノでも書こうかな? 元おっさんと美形兄弟のドキドキ性活――――」


「⋯⋯」


シュクルの研究ではなさそうなので次の部屋へ向かった。


「こんにちは。シュクルはいますか? え?」


一歩中に入るとそこは手術室だった。ここは病院⋯⋯?


「いらっしゃい~ノエル君だね。どう? このUFO型ランプ。光の出方がアブダクションの時っぽくていいでしょ? しかもこの牛が付いた紐を引っ張ってランプを消すんだよ! あれ? あまり好みじゃない? じゃあ次にこのビッグフットのぬいぐるみはどう? あ~分かった! 北国出身のノエル君はイエティ派だね、じゃあ――――」


「え? あ、どうでしょうか⋯⋯」


良く分からない感じだったのでシュクルの研究を探しているのだと話すと、隣の講堂にあると言われたので行ってみた。


「ここだね。お邪魔します⋯⋯え? この頭が多い生き物は何だろう? ケルベロス?」


「ウーウ(ノエル)」


「あ、ニーチェじゃないか。やっぱりここはシュクルの研究なんだね」


どうやらシュクルの研究は動物に関する物らしい。黒いハリネズミ達が子供達から餌をもらっていた。とても愛らしい。

ノエルが動物達に癒されていると、そばにあるカーテンで仕切られた小さな部屋から変な声が聞こえて来た⋯⋯


「このままじゃ結婚できないと思うんですぅ⋯⋯何かぁ俺って女性に避けられてるし~名前じゃなくてイニシャルのSで呼ばれてるしぃ⋯⋯それに俺、あの高貴な男に襲われたんです⋯⋯足にスリスリされて――――」


「⋯⋯いつまでここで愚痴るおつもりですか? 私の主人なら『すべては金次第だ』と、そうおっしゃるでしょうが正直うっとうしいですね」


「金払うからぁ⋯⋯話を聞いてよぉ⋯⋯それで俺の尻にあの高貴な人が無慈悲を――――」


「話の内容が汚らわしいので銀貨を請求します」


どうやらシュクルの研究発表の中には人生相談所があるらしい。


そして講堂の奥では教師や研究者ら年配男性達が集まって研究談議とお酒に花を咲かせていた。一瞬パブかと思った。ここ文化祭の会場だよね⋯⋯?


「あれ? あの看板⋯⋯」


おじさん達の真ん中に置かれたテーブルには各種お酒とグラス、おつまみの乗った皿、そしてまたあのお金を入れる箱があり『お酒一杯銅貨一枚、おつまみ小銅貨二枚』と書かれていた。どうやらおじさん達はそこにお金を入れてお酒を楽しんでいるみたいだ。


「人件費ゼロで儲けるシュクルは本当に商売がうまいよね。僕も頑張らないと」


 ノエルも将来は人口が増えつつあるパックの新たなる産業や宣伝を頑張って、シュクルみたいに稼げる様になりたいと思った。

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