ノエルから見た文化祭
――その頃のノエル――
「ノエルしっかりやっているの?」「パックの紹介かぁ~ある意味大変だよね」
パン家の両親がノエルのいるテントに到着していた。 文化祭は二年に一度なので、二年生のノエルとシュクルの文化祭は今回の一度きりになる。よって両親の二人は頑張って文化祭にやって来たのだった。
「父上も母上も無事に王都に着いていたんだね。安心しました。僕も一応パックの紹介を頑張っている所だよ」
ノエルのテントは一番端っこの残念過ぎる場所ではあったのだが、それなりに人気だった。なぜなら⋯⋯
「な、何あれ? 魔獣?」「ギルドタグがあるし、安全よね⋯⋯?」「流石パック⋯⋯」 「黄色い」
「ショコ・ボン(削る)」
見た事もない巨大な珍鳥ショコボンが木彫りをしており、その横で小さな珍鳥が眠っていた。それはノエルの使い魔であるキウイだった。
両親が他の展示を見にこの場を離れると、今度はノエルの元にベレンガー辺境伯のルイが訪れた。
「お久しぶりです。辺境伯様」
「ノエル君、元気そうですね」
次期パン男爵のノエルにとっては上司に当たる寄親のベレンガー辺境伯。失礼が無いようにしっかりと挨拶を交わした。
「⋯⋯ところで、その売られている服ですが⋯⋯」
「はい。誰でも一度は憧れるベレンガー辺境伯家の私設騎士団の騎士服です。もちろん似ているだけですが」
このベレンガー辺境伯騎士団風の制服が人気で、先ほどから試着をしてみてもいいかと何度も尋ねられている。売上は上々だ。
「⋯⋯本物に見える気がしますが⋯⋯」
「本当ですか? でも色が違うので」
ベレンガー辺境伯騎士団は青い隊服で、この偽物は紺色なのだ。
「ちなみにこの騎士服はどうしたのでしょう?」
「はい。妹のシュクルが販売して欲しいと持ってきたのですよ。おかげでお客さんがこのテントまで来てくれるので良かったです」
妹のシュクルも一緒にパックの紹介を手伝ってくれたのだ。妹はいつも優しくて才能がある。
「⋯⋯なるほど⋯⋯あの日毟り取られた隊服ですか⋯⋯」
ベレンガー辺境伯とお別れをすると次はシルヴァン王子が現れた。
「こんにちはノエル君。シュクルさんはいるかな?」
「こんにちはシルヴァン王子。シュクルは朝少しこちらへ顔を出しましたが、今はいませんよ」
「そうか。おかしいなぁ、文化祭と言えばアベックである私としっぽりと、しけ込む日だと思ったのにどこに行っちゃったんだろう⋯⋯GPS欲しいな。そしたらいつでもシュクルさんの位置が分かるのに。魔道具で作れるかな――――」
「⋯⋯?」
王子は博識で難しい言葉を使うのか、ノエルには何を言っているのか分からなかった。
「こんにちは! ノエル君」「こんにちは! シュクルさんはいるかな?」
「あ、エマ様とアデリーン様。お久しぶりです。申し訳ございませんがシュクルはこちらにはいません」
優秀な王宮魔術師でシュクルのお友達である双子のお二人が現れた。
「そうなんだ~ え? あの鳥何?!」「また変な鳥だわ!」
「シュクルの精霊ですよ」
二人はショコボンを観察して人ごみに消えて行った。これから何かの研究を見に行くらしい。
するとすぐにまたお客さんが来た。
「そこのお前! そのいかがわしいピンクの髪は淫魔と同じではないか! もしやお前は淫行仲間だな! ところで君の仲間である巨乳童顔淫魔はどこ? ちなみに今日の彼女の服装はどんな感じ?」
「え? いん⋯⋯?」
ノエルの前によく分からない神官が現れた。
「ん? 真面目そうな体だな⋯⋯仲間じゃなかったか。すまない。これをあげるから許してくれ」
神官は怒鳴り散らしてからいきなり謝り、ノエルに紙切れを渡すとすぐに消えてしまった。
紙切れはどこかのお店の30分延長無料券だった。
「ノエル店番変わるわよ」「せっかくの文化祭なんだからノエルも色々見て来なさい」
「ありがとうございます」
両親が戻って来て店番を変わってくれたので、ノエルは文化祭を見に行く事にした。
少し歩くとノエルの目の前には毎日見慣れた学院の噴水が現れたのだが⋯⋯
「あれ? 噴水にお金を投げている?」
お客さん達が何故か噴水に背を向けてお金を投げ入れていた。よく見ると噴水のそばには看板があり、噴水にお金を投げて願い事をすると願い叶う伝説について書かれていた。
「そんな伝説があったなんて知らなかったな」
今ノエルは幸せなので噴水には寄らず、他のテントの特産品を見に行った。
まずクラスの友人達のテントを覗いて、そういえばシュクルのテントはどこにあるのか気になったので探す事にした。すると⋯⋯
「フン! やかましい! 日光浴の邪魔をするでない!」
「鳥魔王よ!」「みかんあげるね」「ツンツンしてる!」「お菓子あげるよ~」 「足キモイ~」
テントとテントの間の隙間にシュクルの使い魔が随分と派手な玉座に座って騒いでいた。そして鳥の目の前には派手な箱が置かれており、山盛りの餌や銅貨を貢がれていた。 人気だね。
そしてまた歩き出すと今度はテントとテントの間にシュクルのユニコーンがいて、目の前にはまた同様の箱が置かれており、中には山盛りの野菜が貢がれていた。
ノエルは一体どこからその野菜が来たのかと考えていたら、ユニコーンのそばに『野菜一本=小銅貨一枚』と書かれた看板とお金を入れる箱が置かれており、無人販売所となっていた。
「ユニコーンさん可愛いね~」「ニンジン食べるかしら?」「幻獣なんて初めて見たわ」
「ヒヒン!(幼女!)」
皆楽しそうで何よりだと思い、ノエルはまた歩き出した。
「シュクルのテントはどこだろうね?」




