Episode 033【フェルの軽さ】
TrashとDが見守る中。
ダビドとフェルのサイコロ・ポーカーが始まった。
二人はそれぞれサイコロを振り、どちらが先に5つのサイコロを振るのかを決めていた。
「それじゃあ、僕からだね。」
デッキから5つのサイコロを手に取るフェル。
フェルは手の中でサイコロを何度か転がしてから、デッキにサイコロを振った。
デッキの中で転がるサイコロたち、それを見るダビドが話してきた。
「これで負けたら、お前達の負けだな。」
その言葉にフェルがあっさりと答えた。
「そうだね。」
そしてサイコロが止まる。
そこに表された目は "6・4・2・2・1" だった。
その目を見るフェルは黙ったままだった。
「2のワン・ペアやな。」
Dの横でTrashが呟く。
「ほんなら、2残しで。他のサイコロ全振りやな。」
「そやけど、ダビドの手次第って感じやな。」
「そっか。」
そしてダビドがサイコロを振り始めた。
ダビドはまた右手を軽く振ってから、デッキにサイコロを転がす。
その仕草を眺めるフェル。
「必ず、右手で振るんだね。」
フェルに言われて、自分の右手を見るダビド。
「これはゲン担ぎみたいなもんさ。右手でサイコロを振った方が良い手がよく出るんだよ。」
「ふうん。そうなんだ。」
そしてダブドが振ったサイコロが止まる。
「ほらな。」
自分のサイコロを見るダビド。
そこには "2・3・4・5・6・" と出ていた。
「なんや、ブタやんけ。」
ダビドのサイコロを見てDが話す。
そんなDにTrashが声を掛けた。
「お前、ほんまアホやな。あれはブタちゃうわい。ストレートや。」
「え? ストレート?」
そして役が書かれた紙を見るD。
「ほんまや! あれも役なんか。」
「これで、フェーはフルハウス以上やないと勝たれへんぞ。」
そしてフェルの方を見る二人。
そんなフェルはもうサイコロを振り出していた。
「はやっ!?」
フェルがあっさりとサイコロを振った事に驚くD。
「あいつ、何個サイコロ振ったんや?」
デッキに目をやるTrash。
そこには3つのサイコロが転がっていた。
「2のワン・ペアは残しとったんやな。」
安心するように呟くTrash。
「ダビダビは今まで、これで負けた事とかもあるの?」
デッキに転がるサイコロを見ていたダビドがフェルに目をやる。
「あるに決まっているだろ。ギャンブルなんだから、常に勝っていられる訳がないじゃないか。」
「やっぱり、普通はそうだよね。」
質問を終えたフェルが、自分の振ったサイコロに目を戻した。
その様子が気になったのか? フェルの質問が気になったのか?
ダビドがフェルに声を掛けてきた。
「嬢ちゃんは、賭け事するのかい?」
再度、ダビドの方を見るフェル。
「僕は賭け事はしないよ。 ただ…。」
フェルが話している最中に、サイコロが止まった。
その目を見ずに、フェルはダビドに続けた。
「こういう遊びで負けた事ないんだよね、僕。」
フェルの話を聞いて、ダビドは軽く笑い。
その言葉を真に受けてはいないようだった。
そしてデッキのサイコロに目を戻すダビド。
「トラ? あれってや…?」
ものの見事にあっさりと。
本当にあっさりとフェルに振られたサイコロたちは。
これまた、あっさりと "2・2・2" を出していた。
「なんや、あいつ…。そんな、あっさりやって。ファイブ・カードて…。」
フェルの手に驚くDとTrash。
それも、そのはず。
サイコロを振った時のフェルを見た印象では、本当に軽く。
ただただ軽く、何も考えていないような何気ない感じがしたからだった。
「…まさかな?」
フェルの出した目を見て、先程フェルから聞いた言葉を思い返すダビド。
「だよね。 まあ、運次第だから気にしなくて良いよ。」
そんなダビドに声を掛けるフェル。
「おい、トラ? これはもう、ほぼ勝ち確定やんな?」
「まあ、せやろな。 あれひっくり返そう思たら、3のファイブ・カード以上出さなあかんからな。」
「あのオッチャン、サイコロ全振りするやんな?」
「そうやろ。3も4も、5も6も1個しかないんやさかい。」
二人の予想通り、5つのサイコロを手に取り。
また右手を軽く振ってから、デッキにサイコロを振るダビド。
デッキの中で転がるサイコロを見ながら、フェルに声を掛けるダビド。
「本当に今の今まで、負けた事が無いってのか? 嬢ちゃんは?」
そんなダビドは、今までしてきたサイコロ・ポーカーでは感じた事の無い異様な感覚に陥っていた。
ダビドの言葉に、またあっさりと答えるフェル。
「うん、ないよ。」
ダビドには、そんなフェルの雰囲気が更に謎に思えた。
そんなダビドを追い込むように、デッキの中を転がっていたサイコロが出した目は。
"4・1・4・2・5" の4のワン・ペアであった。
「フェルって、何もんやねん…。酒癖悪ぅて、ギャンブル強いって。なんかギャンブル漫画で出てくるような奴やんけ…。」
「それに勝ったっていうのに、全然嬉しそうにもしよらんな。あいつ。」
そんな二人の元にフェルが戻ってきた。
「とりあえず、これで1勝1敗だね。」
フェルに声を掛けられても、相変わらずの軽さゆえに反応出来ないでいるTrashとD。
そんな二人を不思議そうに見るフェル。
「トラもDも、どうかしたの?」
「……。」
「………。」
「いやいやいや!?」
「 "どうかしたの?" ちゃうぞ、フェー!!」
「うん? 何が?」
「さっきのん何やねん!?」
「ファイブ・カードやぞ!? ファイブ・カード!?」
二人の話を聞いて「ああ、その事かぁ。」と呟くフェル。
「軽っ!?」
「その事以外に何があるぅいうねん!?」
「だって、さっきも二人に言ったじゃん。」
フェルの言葉に対して?マークの二人。
「言うたって、何の事やフェー?」
「あれ? 言ってなかったっけ? あ! そっか。言おうとした時にトラが戻ってきたから、言ってなかったんだった。」
「何の事を言うてんねや? フェル?」
「うんとね。僕、こういうので負けた事無いんだよね。」
「はい? それは今まで負けた事がそんなに無いって意味か? フェー?」
「ううん。1回も無いって事だよ。」
フェルの言葉を聞いて、顔を見合わすTrashとD。
「………。」
「………。」
そしてお互いの脳に、耳から来た情報がようやく伝達されたのか。
もう一度、フェルの方を向いて驚く二人。
『はぁああああああっ!??』




