エリオット教編5・VSギラ
飛行機の移動、徒歩の移動、なんにせよ時間が掛かるが、最短距離を飛行するリース達が最も素早く行動できた。
第三地域の空港に辿り着いてついてすぐ、リース達は驚くべき光景を目にする。
歩く人物が皆、黄金の鎧を身に付けている。
そして、その一人がリースを見つけて言う。
「銀の仮面の少女! おいみんな、例の奴がいるぞ!」
同時に黄金の鎧の集団がリースを見つめ。鎖に手をかけた。
その中で、近い者が堂々と一歩に出て、リースに言う。恐らくは隊長格。
「まず貴様は何者だ!? なぜ我らに仇為す!?」
「ふん、悪に名乗る名など持ち合わせていないが、挨拶代わりに伝えて置こう!」
深呼吸の後、リースは叫ぶ。
「正義を盾に私利を求める者どもよ! この銀の武闘家が天誅を下す!」
ビシッと決めポーズまでとって、リースは叫んだ!
場所は空港、敵三百以上、味方はリース一人!
ロゼッタとノルドは他のお客さんと紛れてこっそり外へ向かった。
「悪を倒せと声がする……正義の拳が銀に輝く……私の輝きを見よっ!!」
ズビシッ、と腕を振り上げポーズを決める、エレノンが面白がって作ったものがだんだんリースにもハマってきたらしい。
リースが動くと同時に三百以上の鎧も同時に動くが、別の男が一歩前に出る。
「待て! 我々が悪だと……面白い。俺と決闘だ!」
姿形は他の鎧と同じなれど、その威風堂々たる態度は明らかに違う、先ほどよりも高位の存在!
「ふむ、良い心がけだ。さては……武人だな?」
「ほう……分かるか?」
武人同士、何か通じることがあったのか二人はそれぞれ仮面と兜の下でニヤリと笑う。
「ならばその邪魔な鎧は脱ぐのだな?」
「ふん、当然!」
周りの信徒達がざわめく。
あれが出るぞ、あの名物の、そんな声が次々と繰り返される。
「ぬぅんっ!」
男が叫ぶと黄金の鎧が砕け散り、中からは鍛え上げられた肉体が露になった。
「我こそは神聖大隊長が一人ィ! ギラ・ゴーレム! そしてこれが!」
鎧の外れた肉体に鎖を縛り付ける!
「ムゲンチェーン、俺専用型! これが俺の戦いだぁ!」
裸体に巻きついた鎖は!
ギラの体に対しては吸い付く付加を!
外側に対しては弾く付加を!
それはまさしくギラを包むの鎖の鎧!
そしてこれこそがギラ・ゴーレムの鎖達磨!
「我が鎖縛拳法を受けてみるが良い!」
『鎖縛』と称される、最強の神聖大隊長ギラ・ゴーレム!
「我が銀装に敵うか!?」
互いの拳が! 鎖と銀が弾けあう! だが勝ったのは鎖!
リースの拳はけたたましい金属音と共に弾かれた!
単純な力ではギラとリースは拮抗している。だが弾く魔法は物理の力関係なしに全てを弾く。それをリースは詰るように叫ぶ。
「ほう! 大した魔法だ、だがそれでは鍛え上げた肉体の威力を発揮できないのではないか?」
それはその通り、鎖の弾く力のみではわざわざ肉体を鍛えずとも魔法を操る訓練のみでよい。
「威力を発揮できない、か? ならば試してみるがいい!」
ギラはそのように、自信たっぷりに言う。
それを受けリースはともかく考える。
弾くのは魔法の圧倒的な力、武力で破るのは不可能に近い。
ならばどうするか、顔にすら鎖が巻かれているギラのどこに攻撃を当てればよいのか。
隙間に銀剣を突きこめばよい!
「行くぞギラッ! 火華馬猛っ!!」
一気に距離を詰める。
だがその前に、悪射炎擂を数発牽制してから、改めて破我納火を食らわせる!
ギラは放たれたの炎の矢を鎖の弾く能力を使用していなすと、破我納火を繰り出そうとするリースの腕を鎖で絡め受け止めた。
事態が把握できず、捕まったリースが一瞬呆ける。
すぐに抜け出そうとしても、鎖は腕に完全に吸い付き離れない。
「な、なんだと!? 弾く鎖では……」
「弾くも巻きつくも俺次第だ、銀仮面」
そして、鎖が巻き付いてある逆の方の腕で思いっきり殴った!
鎖が巻かれた拳の一撃は棍棒を振り下ろしたかのような一撃、銀の仮面は壊れ、その下のリースの顔面からは血が流れる。
その強烈な一撃は弾く魔法を解除した、ギラ本来の一撃! それは弾く以上の破壊力!
「弾くも巻きつくも、ただの鎖の状態も俺次第…………。 ん!?」
鎖がついただけの腕で殴るという武術をも組み合わせた技があるということだが、ギラはそれどころではない。
「貴様……小柄だとは思っていたが、まさか女だったとは……しかもまだ子供じゃないか」
片腕を縛られ、痛む頬を擦ることもできないが、リースは苦痛に表情を歪ませつつ敵を睨む。
「ふん、子供だと思って舐めると痛い目を見るぞ?」
ギラは一瞬狼狽したが、すぐに武人の顔になった。
「……なんにせよ、この鎖縛デスマッチに繋がった以上何人たりとも逃れることはない」
そう、お互い、リースの左腕とギラの右腕は巻きつく鎖で縛られている。
「一つだけ聞こう、銀仮面。なぜ魔族に肩入れする?」
「それはこちらの台詞だ! 何故主のような武人がエリオット教なぞに力を貸す!? 主は自分がしていることがわかっているのか!?」
「なに? エリオット教は正義の宗教だぞ、それを知らないというのか!?」
「主こそ、エリオット教がどんな悪事を働いているのか知らないのか!?」
「あ、悪事だと!?」
ギラが周りの信徒に目をやるが。
騙されないでギラ様、そやつが嘘を申しているだけです、などの言葉が飛ぶのみ。
なんなら何も言わない信徒までいる。
「嘘なものか! 何の罪もない魔族を無意味に虐殺しているそうではないか!」
「罪のない魔族がいるのか!?」
「いる! 少なくともアリス殿は確かな武の心を持ち合わせていた!」
リースの真摯な、真剣な瞳にギラの心は揺らぐ。
だが、ギラの心は変わらない。
「俺はまだそいつを知らない。今は邪魔者たるお前を倒すのみ!」
わざと大仰な動きをしてリースを殴ろうとする。
「主がそういうなら、それもまた良かろう」
リースも敢えて大仰な動きで、拳に銀を纏いその拳にぶつけようとする。
二つの拳がぶつかりあい、リースの拳が勝った。
だが、打ち破ったはずのリースの方が悔しげな顔をしていた。
「手加減など無用だ! 私は、武人なのだから!」
顔を殴られたリースだからこそ、その一撃が明らかに力を抜かれたものだと感じ取れる。
リースの言葉に、ギラは目を覚ましたような反応をした。
二人は拳を交わしていく! 足を、腕を、頭までも、振り回す!
「埒があかんっ! 炎舞炎膚『火乃魂』!」
埒が明かないのではない、実際にはリースが一方的に押されているのである。
逆転の一手として、弾く鎖にも通用する熱伝導を考えたのだ。
かつて魔女シュールにも地味なダメージを与えた戦法である。
純粋に体に炎を纏わせる基本となる技。
だが、その炎すら弾く鎖を繰り出され炎は散る。挙句弾かれた腕には地味なダメージもある。
打つ手無しにも思えたが、その場合のダメージは鎖の魔法で弾かれるのみで、小さくはないがギラの格闘に身をさらすよりかはマシである。
実際最強にも思えるギラであるが、これほどの魔力操作は並外れた集中力でなければできない。
何か集中を掻き乱す手段があれば、その隙に近距離最強とも言える技、ゴリアックも使えるリースの奥義が一つ、『羅鬼数多』を使い鎖ごとギラを倒せる。
「どうした銀仮面、動きが鈍っているぞ!? 鎖縛拳法『大縛掌』」
鎖の多くがみるみるうちにギラの左腕に巻きつき、巨大な拳になる。
こうまでなるとただの鉄塊、まともにぶちあたれば誰だって死ぬ。
だが逆に考えれば、それは弾く攻撃ではないはず。吸い付こうが弾こうが、鎖に魔力がある場合、威力が均一なものになってしまうから。
「対空奥儀、格闘華和……」
振り下ろされる巨大な拳を壊す勢いで、リースは叫ぶ。
「片手銀装『晴日』!」
片手が防がれているため本物とはかけ離れたものになるが、威力は銀でカバーする!
銀の拳ならば鎖の塊など破壊できる、そう決断しての攻撃!
だが、予定外のことが起きた。
リースの拳は大縛掌に、魔法で弾かれたのだ!
そしてそれが確認された直後、大きな鉄塊はじゃらじゃらと地面に落ちていく!
鎖に弾く魔法を付与してリースの体勢を崩し、更にギラ自身に吸い付く魔法も解除したのだ!
残るのは晴日に失敗し、空中で無防備に落ちるリースと、大きな鎖がなくなり軽快なギラ。
無傷で出てきたギラの左腕が、素早くリースの顔面に向かう。
殴られる瞬間、しかしリースも負けていない、顔から突如現れた銀剣が、ギラの指を切り裂く、だがギラはそのまま殴りぬけた。
がしゃんと鳴る鎖の音と同時に、リースは膝をついた。
いや、本来、体すら倒れそうなのを、左手に巻きついた鎖によってなんとか垂直に直っているのだ。
もうリースに意識はない。
ギラが鎖を特別な空間に収納すると、リースは正面に倒れた。
「……厳正な審議の後、異端審問にかける」
周りの信徒がリースを鎖で縛ると、そのまま空港の中へ連れて行った。
その様子を野次馬達と一緒にノルドとロゼッタは見ていた。
「どうするんですか、ノルドさん?」
かなり小さな声で訴えるも、ノルドも苦渋の表情。
「助けなくてはいけませんが、今はアリス様がどうなっているかも問題……」
選べるわけがない、そもそもアリスはリースに助けなど求めていなかった。
アリスは普段からリースちゃん可愛いリースちゃんのために、とか散々言っていて、今回もリースちゃんに心配掛けないようにしようなどと言っていたのだ。
その分実力も確かなものとして、部下達が勝手に判断してリースに力を借りようと考えた。
その結果、リースは捕まってしまった、これではアリスに合わせる顔がない。
「仕方ない……助けに行きましょう」
「正気ですか!? 数えたんですけど、百以上いますよ!?」
リースはそれでも戦った、武人として、神聖大隊長と真正面から。
「我々はこっそり助けましょう。僕は彼女ほど強くはない」
精神的にも、肉体的にも。そんな言葉を飲み込んでノルドはとある策を考える。
一方、シズヤとエレノンはほどほど急いで南へ、リース達がいた方へ向かっていた。
出発の時間自体はあまり違わなく、障害が何もなければすぐにでも追いつけただろうに、事態はもう変わっていた。
ジョンズ貿易会社が正式に魔族の巣窟と判断され、この大陸全土が強引にエリオット教の支配下に置かれる途中であった。
それに加え、飛行機で発つ前のリースが既にことを荒立てて、ここに増援が来ている。
つまりは実質的な戦争である。
それを二人は目の当たりにした。
「あなたたちはこれから我々の支配下となってもらいます!」
「反抗すれば、異端審問官と認定します!」
無茶苦茶な暴論を押し通し、支配としか言えないことを続ける信徒。
「……どんな状況?」
「私に聞かれても困るよ……でも、無差別的に悪い事してるね」
シズヤの一言に、エレノンは反論した。
「……違う、ある種最低の差別。この大陸の人というだけで、攻撃している」
どっちも大して変わらないよね、とシズヤは確認したが、エレノンは無言を通した。
既に卒業生や警察がエリオット教の人と戦っているし、一般市民すら鈍器や刃物を持ち出し無様なほどに戦っている。
「それで、どうしましょう?」
「……無視して、リースを探す、で」
二人は戦火をまるで気にせず淡々と歩く。
しかし当然速度は落ちる。
シズヤが本気を出せば飛行しながら下に見える信者を皆殺しにすることも可能ではあるが、エレノンを一人残すことも忍びなく、何より住民や肝心のリースまで巻き添えにしかねない。巻き添えにせずとも、追い越して見失っても意味がない。
故に、敵を倒しつつゆっくり進む、それが最善の選択である。
「む、そこの二人! 君達も厳正な審議の後……」
男の声と確認してからの判断。
黄金の鎧の隙間から血が噴出した。
「ああいう閉鎖的な場所にいてくれると、楽でいいんだよね」
「……生きてる?」
「奇跡が起きれば」
シズヤはなんてことのないように言った。
これが最強という存在か、だったらならなくてもいい、そのようにエレノンは考える。
大陸南端の空港について、リース達がいないことに気付くまでまだしばらく掛かる。
一方、ネロとイツキも本校でとんでもない校内放送を聞き、体育館に集まっていた。
壇上では校長が、その後ろには教師の面々が並んでいる。
「我々魔女の大陸は……エリオット教と戦争状態になりました」
生徒が一斉にざわめくのを見越してか、校長はすぐに静粛に、と場を鎮めた。
「こうなった以上は我々も戦力です。今より攻撃が始まった南へと進軍していただきます。無論、その際には……」
重々しい口をなんとか開く、校長とて緊張しているのだ。
「我々、教師陣が先陣を切ります」
人との戦争など初めて、そんな集団の、危険な挑戦。
集会が終わって早速ネロはイツキを見つけて声をかける。
「イ、イイイイイイイ……イツキさん! あ、あわわわ、ど、どうしましょう、どうしますですか!?」
「少し落ち着きなさいエレノンじゃなくてシズヤじゃなくてネロじゃ……ネロ」
「イツキさんも落ち着きましょう!」
「これが落ち着いていられるかって話よ! 戦争!? 魔女じゃないのに!? どうして味方同士で争うのかしら!? 私達は魔女と戦うために訓練しているのよ!?」
無論、魔女との戦いなどほとんど忘れたも同然だが。
ちなみに長期休暇中で学校も既に放課後、実際に集まった生徒は少なめ、既に状況が掴めずに囚われた生徒もいるだろうから、今は大急ぎで連絡網が回されている。
警察がいても軍隊がいない大陸、あまりにも軍団VS軍団には弱い。
「勝てますかね、戦争?」
「勝ったところでよね。防衛戦なんて勝ったところで利益は出ないし、エリオット教の奴らから貰うものもないし。それに戦況なんて私達が考えることじゃないわ」
そうは言ってもイツキは考える。
最悪の場合は、全滅し、学校にいる町の魔女・シュールの存在がバレることである。
現在ならばエリオット教の暴走として周りの大陸から同情されるかもしれない。
なんせ昨今のエリオット教の暴走は有名なことで、むしろ昔からあった信頼は失墜していると有名だから。
だが魔女を匿ったとなればエリオット教は結果オーライで認められ、この大陸が乏しめられるのみならず、同盟のサド国まで村八分状態になってしまいかねない。
最終防衛線を学校と考えると、幸か不幸か北の魔女の森からの攻撃はないだろうし、エリオット教がそちらから来ることもない。西も東も第一学校と第三学校があるために安全。
本拠地である学校を守りつつ、南に進軍するだけでいい、というわけだ。
「シズヤとエレノン、リース達が先に進んだのは偶然だけど、ラッキーかも。特にシズヤが積極的に奴らを倒してくれれば……」
「な、なんでですかー? 馬鹿にもわかるように説明してください」
「だってほら、北は森、東西は他の学校があるから、南だけ守ればなんとかなるでしょ?」
「……もう少し詳しくお願いしていいですか? なんで学校を起点にしているんでしょう?」
「そりゃシュールがいるからよ。シュールがバレたら流石に駄目だから」
「……ネロにもわかるように説明してください」
泣きそうになりながらネロはお願いを繰り返す。
「やっぱり私達が考えることじゃないわ。命令されたことをそのまんま実行しましょう」
「諦めないで下さいよ! 見限らないで下さいよー!」
ともかく、ネロ達は一晩の後、南への進軍を命令された。
さてここで、第二の校長がそれぞれの校長に電話したため情報の伝達が行き届き素早く戦闘に持ち込めたのだが、第三地域にいる第一校長に最強を返して欲しいという電話があった。
現在は五人の最強が一堂に集う第三学校、しかしその要請にはこたえなかった。
一つは第一校長の自衛、保身、ただのクズであるが、もう一つの理由は大きい。
ジョンズ貿易会社が第三の領土にあり、そこに押し寄せた軍勢がそのまま学校にまで進軍してくる可能性が大きいからだ。
だが、それが学校に来ることはなかった。
アリスを捕まえた後ネードはそのまま北に進軍した。
十人いる神聖大隊長は防戦に定評のあるジーク以外の九人がこの大陸に出張している。
ネードともう一人、インマがこの第三の領土に来ていたが。
ネードが見たのは、インマの死体であった。
「こ、殺されてるのねん! 一体誰がやったのん!?」
恐る恐る信徒の一人が指差す先には、血に濡れた金髪少女が一人、パジャマを着ていた。
「お、お前誰なのねん!? 何をしたのん!?」
「名前……ごめ……ちょっと、今……眠い」
ふわぁ、と大きな欠伸をしながらネイローは涙を拭いた。
「ふざけてるのん! 吹き飛ばしてぼろぼろにするのねん! ムゲンチェーン、劣化第一番!」
ムゲンチェーンを際限なく伸ばし、全てを弾き続けるという場当たり的攻撃。
だが鎖が伸びている途中にネードの鎧から血が噴出した。
叫び声もなく鎧はごおんと倒れ、ピクリとも動かなくなった。
「ふぁ……たまには、ね。ゴリさんに……花持たせなきゃ」
誰に話しかけているのか、自分を納得させる独り言なのか。約束をすっぽかし続けているネイローも、ゴリアックが嫌いではないのだ。戦いの邪魔はさせない、というつもりらしい。
そんなネイローを運んだ、傍にいるステラは、死体を見て気持ち悪そうに顔色を蒼くしている。
水を操る能力、そして人体の七十パーセントは水分。
ネイローは人の体を組織する血液、リンパ液、涙から尿に至るまで全てを自由に操ることができる。
四六時中共にいれば、病に見せかけて殺すことも、近くに寄れば液体の全てを活発に動かすことで血管を切ったり肉を裂くことまでできる。
「ネード様までやられたぞ!」
半信半疑近づく者は、皆言葉もなく倒れていく。
その様を見て、流石にもう誰も近づかなくなった。
ネイローはただ守るだけであった。
珍しい遠出に疲れたらしく、何度か立ちながら眠ったが、決して誰も彼女の後ろに進めなかった。
魔女の大陸より遥か離れた、とある魔族が所有する大陸。
化け物ばかりが住まう魔族の国の中でも一、二を争うそこは、中心に巨大な建物があり、その中の一室。
「で、どうします、デビル様」
「助けに行くに決まっておろう」
仮面をつけた奇妙な生命体が、豪奢な部屋で巨大な甲冑と会話していた。
この甲冑は見覚えがあるものだ、黒に近い深緑で淵は金、ただコントンの十倍以上は大きい、大きすぎる。
「ではでは、エリオット教の本拠に乗り込むのですか? デビル様が」
「指をくわえて見過ごすわけにも行くまい」
その大きすぎる体を動かし、デビルはまず連絡を取る。
大きな羽をはためかせ。
「自力で充分。やれやれアリスめ、会社などを作って目立ちおるからだ」
巨大なムシがその場から湧き出る。
「時にジョーカーよ、貴様はどうする気だ?」
「けけっ、あっしはただ情報を伝えるだけの情報屋、戦はできませんよ」
「ふんっ、貴様の態度を見てアリスは育ったのだ。ま、あの出来損ないに期待はしていなかったがな」
デビルはゆっくりと羽ばたいた。
ジョーカーの仮面だけが、楽しそうに笑っていた。




