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幸せ

 アリスへの好意を自覚した、その瞬間だった。

 目の前に光が現れた。


 「……え?」

 最初は何か分からなかった。


 部屋の中央。

 何もない空間が、ゆっくりと開いていく。


 白い光。

 眩しいほどの輝き。


 アリスが立ち上がった。

 「……なに?」


 いつもの明るい声じゃない。

 戸惑っている。


 光の中から。

 一つの大きな扉が現れる。


 「天門……?」

 アリスが呟いた。


 「天門?」

 俺が聞き返す。


 アリスは答えない。

 ただ、目の前の扉を見つめていた。


 「違う……」

 小さな声。


 「まだ……」


 その言葉の意味が分からない。

 でも、アリスが混乱していることだけは分かった。


 「アリス?」

 声をかける。


 すると、彼女は突然、俺を見る。


 そして、目を見開いた。

 「ヒロト」


 「あなたの色……」

 俺には見えない。

 だから分からない。


 でも、アリスの表情で分かった。


 俺は幸福の色が綺麗な赤色になったんだ。

 

 アリスはゆっくり近づいてくる。

 まるで信じられないものを見るように。



 アリスの課題が終わったんだ。


 「……そっか」

 アリスは小さく呟く。


 「私、ヒロトを幸せにできたんだ」


 嬉しそうな声。

 でも、どこか寂しそうだった。


 俺は天門を見る。

 そして理解する。



 「帰るんだな」

 アリスは少し黙った。

 

 そして、笑った。

 「うん」


 本当なら。

 喜ぶべきことなんだろう。

 アリスがずっと目指していたもの。

 一人前の天使になること。


 でも、その笑顔を見て。


 俺は思った。


 帰ってほしくない。

 数日前まで、ひとりの時間が当たり前だった。

 寂しいとも思わないようにしていた。


 でも、今は違う。


 アリスがいなくなる未来を考えるだけで、胸が痛かった。


 「アリス」

 声を出す。


 「最後に、言いたいことがある」


 彼女は振り向く。

 「なに?」


 俺は息を吸う。

 「俺、アリスのことが好き」


 時間が止まったようだった。



 アリスは、少しだけ悲しそうに笑った。

 「ありがとう。ヒロト」


 「でも……ごめんね」


 そして、アリスは続ける。

 「私は、ヒロトを幸せにするために来た」


 「けど、ヒロトを好きになるために来たんじゃない。」


 その瞬間。

 アリスの表情が変わった。


 「……」

 彼女が鼻に手を当てる。


 「嘘」


 「今……感じた。あの時の匂い……」

 俺を見る。


 「最初から感じていた匂い。これだったんだ」


 アリスの目から涙が落ちる。



 天門の光が強くなる。


 アリスは涙を拭く。

 「ごめん」


 「でも、ありがとう」


 「ヒロトと過ごした時間。私、絶対忘れない」


 アリスは帰った。

 部屋には、俺1人だけが残った。


 そして、


 きっと、


 俺は青色になっている。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

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