1章2部
学校に着いた僕達は先生達に予想通り、いや予想より遥かにしっかりこってり絞られ、昼食を挟んで昼休みまでお説教を受けた。
お説教を受けた後、教室に向かう僕達の背後から忍び寄る不審な気配。
明らかにバレバレなのだが、翠は気付いてない様子なので僕も気付いてないフリをすることにする。そろりそろり。とか言ってるし。本人もバレてないつもりなのがまた面白い所である。
「空、先生達のお説教長かったねぇ……。」
「しっかりばっちり長かったね。まさかお昼休みまるまる使うとはね。」
動き出す不振な気配。この後の行動はいつも通りなら……。
「翠!空!おはよー!」
やっぱり。声の主であり不振な気配の主、紫はいつも通り僕と翠目掛けて飛び掛ってくる。察知していた僕はしっかりばっちり躱せたが、全く察知できていなかった翠は綺麗に直撃。
「うわぁ!びっくりしたぁ……。」
などと愉快なことを言い出す始末。
「紫おはよ。」
「くっ……。空にはよ蹴られてしまったか。」
「そりゃバレバレでしたもの。」
「紫おはよ。って、空気付いてたの!?なんで言ってくれなかったの!」
ぷりぷりと怒り出す翠。見た目が可愛らしいだけあって、なんと言うかこの世の不平等さを感じずには居られなかった。
「ごめんごめん。てか、見つかったらこうなるのはいつもの事だったろ?あと、2人とも避けてたら紫が地面とお友達になってたからな。」
「僕は!?」
「翠はそのくらいがちょうどいいのさ。」
なんと言っても可愛いからな。
「2人とも社長出勤とはいいご身分ですなぁ。何してたの?」
「話し込んじゃってた。紫の家の前の公園で。」
「あー。それで私が気付かずに家出てここまで来てしまった……と。」
「そうそう。」
「そいつは失敬失敬。いやぁ、今日も寝すぎてしまってな。」
「まさか紫も遅刻?」
「ギリギリセーフ。持つべきものはしっかりした姉と妹だね。」
「……。」
つまり、紫は朝ギリギリまで寝てた挙句、姉と妹に起こされ、遅刻ギリギリになっていたため、目の前の公園にいた僕達に全く気付かないままここに来た。ということらしい。僕達は朝早めに起きて準備して向かったはずなのにね!おかしいよね!翠も同じことを思っていたらしく、じとーっとした視線を紫に送っている。
「翠、そういう事もあるさ。なんと言うか紫らしいじゃないか。」
「紫はいつもマイペースだからね。しかたないか。」
「そうそう。仕方ないさ。」
「ところで、話し込んでたってなになに?まさか、彼女でもできた?」
「かのっ……。」
真っ赤になってフリーズする翠。しばらく帰ってこなそうなので、僕が返事しておくとする。
「翠はともかく、そんな訳ないだろ?CHAOSだよ。CHAOS。」
「君達ほんとあいつ好きよね。定期的に話し込んでない?」
「あのなんとも言えない、訳の分からない生物感がいいんだよ。」
「タコヘッド、コウモリウイングの?」
紫さんには理解できないらしい。残念。
「そうそう。意味わかんないじゃん?水中にいたのにコウモリの翼とか。そもそも翼あるならなんでタコの頭?とか!」
「ごめんぜんっぜんわかんない。」
ハッキリ言われてしまうと悲しい。ちょっぴりしょんぼりしていたら、いつの間にか帰ってきてた翠。
「あの訳分からないところがいいのよ。そもそもCHAOSは1匹とは限らない訳でしょ?それに今まで見付かったこと無かったってことはそれこそ世紀の発見なわけだし。」
「まぁ、そうなのかもしれないけど。発見されてからもう1年よ?世間様は興味も無くして次の事に興味を注いでるわよ?」
「何かあったっけ?」
本気で何を言ってるのか分からないと言った顔をする翠。この子本気で言ってるから怖い。恐ろしい子っ、、
「あるわよ!ハロウィンも近いし、その後は冬休み、クリスマスに年末に新年。そろそろクリスマスに向けて彼氏作らなきゃーって大盛り上がりよ?」
「かれっ……。」
またフリーズする翠。そろそろ慣れて欲しいものである。こういう所が年上の先輩方には可愛くて仕方ないのだろうけど。
「僕達にとっては、それこそ瑣末事さ。色恋沙汰に時間を割く時間はないよ。」
「恋人はCHAOS……と。」
「ちがわいっ!」
思考回路が謎すぎる。そもそも人じゃないし。いや、世間ではアニメキャラクターやそのフィギュア等を恋人と主張する人もいるくらいだ。人間である必要はないのでは……?
「いいじゃん!1回しか今年の冬はないんだよ!」
「去年の冬も来年の冬もなんなら今日だって1回しかないぞ?」
「そういうことじゃないの!これだから生物バカは……。」
「それはちょっと聞き捨てならないかな?」
いつの間にか復活していた翠。ちょっぴり怒ってらっしゃる様子。
「……。ごめん。生物バカは言い過ぎた。」
「ん。いいよ。人それぞれ考え方は違うし、好きな物とか違うからね。」
「うん。ごめん。」
反省したのか少し大人しくなった紫。少し赤くなってるし、よくわからない。赤いゴリラ?新生物?とか、思っても絶対に口に出せない。怒らせると怖いのは紫も同じだからである。
「空、今とっても失礼なこと考えてたでしょ。赤いゴリラとか。」
「いやいやいや!滅相もない。そんなわけないじゃないですか!」
図星を突かれるとは。
「空もそこまで酷いことは考えないよ。女の子にゴリラだなんて。」
フォローしてくれる翠。ごめん。本当は思ってたの。新生物かなって。
「そうだよね。流石の空でもそこまでは考えないか。」
まだ不審に感じてらっしゃるご様子。目を合わせないようにしながら、口笛でも吹いておく。
「それで?なにか新しいことでもわかったの?」
「何の話?」
「だから!CHAOSについてよ!話し込んでたんでしょ?」
あぁ、そういう事ね。と翠が今朝話してた内容について軽く説明してくれる。
「……。なるほどね。理解したわ。」
半分も話さないうちに紫はそう口にする。理解力がすごい。普段アホなことしかやらないのにね。実は賢いのよね紫って。
「それを私に話したってことは、私の力が必要ってことよね!」
ん?どうしてそういう話に?本当に理解したのあなた?
「私の力というか、パパの力が必要なんでしょ?CHAOSの研究所の周辺の状況とか、住民の安否について調べるために。」
わぉ、僕達もそこまでは考えてなかったよ。
「そう!そういう事。流石、紫理解力が高くて助かるよ。」
え?翠さん?そう言うつもりでしたの?全くそんなこと考えてませんでしたけども。確かに紫の父は大学で情報学の教授をしていたり、情報に関しての知識、経験が豊富だ。助力を得られるのならこれ以上ない力になってくれるだろう。
「わかったわ!そういう事ならこの後すぐパパに連絡してみるわ!今から行ってもいいかしら?って!」
「ありがとう。助かるよ!」
紫パパに連絡してもらった結果、今日の放課後にでも尋ねておいでとのことだ。娘の理解力の高さは父親譲りなのかもしれないね。すごいね。




