1章1部
CHAOSが発見されてから、1年近く経った、9月本州にも例年よりも早めな本格的な秋の陽気が漂い、人々の関心がCHAOSから今年の早めの秋に向いている頃。中学生になって初めての夏休み明けということもあり、登校が億劫になりつつある僕は幼馴染の翠と公園でもう1人の幼馴染、紫を待ちながら人々の記憶から消えつつあるCHAOSについて語り合う。
「ねぇ空今更なんだけど、あの謎の生物についてどう思う?」
「どうって?」
「何か新しい情報とか……ないの?」
「うん。1年近くなるけど、今のところCHAOSって名前がつけられたってことと、タコみたいな頭、コウモリみたいな翼があってイボイボでヌメヌメな躰って事しか……。」
そう。1年近く経つにも関わらず、未だに公表されている情報といえば、名前、形状のみである。今思えばおかしな話である。あれだけ世間を騒がせ、世界各地から研修者が集まり、多大な研究費を掛けていたにも関わらず、全くと言っていいほど情報がないのだ。
「僕的に何か情報を公開できない理由があると思うんだよね。」
「……と、言うと?」
「例えば、何か世間一般の人達が知っちゃいけないようなことが起きてるとか。」
「考えすぎじゃない?だって、あれ一応死骸だったわけでしょ?」
「実は、生きてたとか。」
「だとしたら、ただの新生物ってことになるし、そうなったらむしろ公表するよね?」
「そうだよね。うーん。じゃあ、こういう仮説ならどう?あれはどこかの国が開発した生物兵器とか。」
「……その方が、公表しない理由としては有り得るのかもしれないね。でも、そう考えるならどうしてあんな所に?兵器として運用するなら他国に使用した方が有効よね?あと、ABC兵器って条役で禁止されてるんじゃなかったっけ?」
「そうなんだよねぇ……。生物兵器説もなしか……。」
「ABC兵器の使用は禁止されてるけど、未だに核保有国は沢山あるし、可能性が低いってだけだけどね。」
「そもそも1体しか見つかってない、どこの国も関与を見られない、むしろ新生物として取り扱われてるってことでも否定できる内容ではあるのよね。」
「……じゃあ、こういうのはどう?CHAOSの研究所の職員達に何かしらの不幸が起きて、そもそもの研究が出来てない状況っていう説。」
「……うん。空、それはあるかもしれないね。でも、それどうやって調べよう?研究員、研究所共に消失とかで考えるなら、そもそもニュースになるはずだし、研究所は無傷で、職員だけなにか起きてるってこと?」
地上から建物がまるまる消えたみたいな情報もなかったはずだ。研究所は無事、職員だけ消える。そんなオカルトチックな話に飛躍するものなのだろうか。
「研究所については分からないけど、職員に何かあったのかもしれないのかなって、僕は思うんだよね。」
「そもそもの証拠が出てこなければ犯罪が発覚しないのと同じ考え方ってことよね?」
「そうそう。完全犯罪。この場合犯罪でいいのか怪しい部分もあるけど。人の作った法律とかって、人が何かに対して行ったことに対するものっていう前提だろうし。」
動物が人を殺してはいけない。そのような法律はないはずである。あるなら、山や森からクマが降りてきて人を襲うような事件の顛末は、クマの狩猟や捕獲等ではなく、殺人の容疑でクマ容疑者逮捕と言った形になるはずであるからである。
「職員が消えたと仮定するとして、方法は?動機は?」
「うーん。同時多発的に行われて、証拠が出てこない。建造物への被害もなしって考えると化学兵器、生物兵器を用いた犯行?ってくらいしか。」
「同時多発的、建造物への被害なしって考えるとそうなるよね。でも、そう考えるなら職員の家族たちは?1年近くなるのに帰ってこない、不審に感じない訳ないよね?」
「そこの地域の人達纏めて消えたとか?」
「同時に?」
「うーん。他の国から派遣された研究者もいるはずだから、そう考えるにしてもおかしな点が多くなるね。」
不思議な躰の今まで見た事のない新生物ということもあり、世界各地から研究者が派遣され、研究に向かったということは発見された1週間後くらいのニュースにもなっていたはずだ。その人たちの家族も纏めて消えたと仮定すると世界各地から人が消えているという考えになる。行方不明者の情報なんて探せばいくらでもあるのかもしれないが、僕達が知りたい情報との関連性の低さもあってそこまで把握していない。とは言っても、可能性は低いだろう。遠隔地の血縁者、交流のある友人、知人その全てが消えたとなるとかなりの数になる。
「……ところでさ、話すごい変わるんだけどいい?」
「なに?」
「空今時計持ってたりする?今何時?」
「持ってるよ。今は……10時半!完全に遅刻だよ!」
「あー……。どうする?」
「家に帰る訳にも行かないし、かと言ってここで話してたらいつ補導されるか分かったもんじゃない。と言うかまず紫は?まさか気付かずに置いて行かれた?」
「紫の家一応寄ってから、学校に行きますかね。怒られるは仕方ないにしても一応紫がまだ家にいないかの確認はしておいてあげたほうがいいよね?」
「そうだね。話し込んじゃってたけど、紫のこと待ってたんだし。」
紫の家のインターホンを鳴らすが、反応がない。
おそらくもう家には誰もいないのだろう。
「やっぱり、誰もいないね。紫、僕達のこと気づかなかったのかな?」
「まぁ、そういう事もあるさ。翠、僕達も一応急いで向かおう。遅刻は確定してるにしても、早めに着いておいたほうがいい。」
学校に着いた僕達は先生達に最初は心配されていたものの事情を説明すると安心して貰えたのかお昼休みまでしっかり時間たっぷりお説教を受けたのだがここでは割愛。




