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整備士ギリム


寮近くに辿り着いたユールは、遠目にジグを探しながら近づいていく。


ジグは寮の一階、休憩スペースで本を読んでいた。




「おっ、居たいた」


ジグを発見したユールは扉を開け休憩スペースに入り、彼を呼んだ。




「ジグ!」


「ん、ユールか」


呼ばれたジグは読んでいた本を閉じて机に置き、ユールの方を振り返った。




「エイダンさんの所はもう良いのか?」


「子供達とも別れてきたよ。 研究区に寄って来たんだ」


「研究区に?」


「ああ。 ほら、赤いコアポケットに入れたまま持って帰ってきちゃってさ。 渡しに行ってきた」


「あれか。 そういえば持っていたな」


ユールの言葉にジグは船で見た赤っぽいコアを思い出していた。




「それ。 そしたらカイルさんが居てさ。 伝言頼まれたんだ」


「伝言? 俺にか?」


「ジグにっていうか俺達三人に。 ほら、リゼさんから訓練の日程」


「ああ、決まったんだな。 それでいつ頃なんだ?」


納得したジグは聞き返す。




「明日の昼過ぎ、寮の前に集合だって。 そこから全員で訓練場にいくってさ」


「昼過ぎか、わかった。 エミルには?」


「エミルには、カイルさんが伝えるって」


「そうか、なら大丈夫だな」


ユールの言葉にジグは頷く。




「しっかし明日かぁ。 それまでどうするかな…」


「船の手伝いでもしたらどうだ?」


「そうだなー…。 ちょっと顔だしてみるかぁ」


「ああ、行って来い」


早速向かおうとするが、立ち上がらないジグにユールは振り返った。




「行かないのか?」


「俺は昨日手伝ったからな。 今はこれだ」


そう言ってジグは本を手に持つ。




「…わかったよ、行ってくる」


「頑張ってこい」


再び本を読み始めたジグを尻目にユールは部屋を出ていった。




外に出たユールは船の方に向かって歩いていく。


船では沢山の船員達が作業をしていた。




「んー。 何か手伝えることあるかな…」


「おっ。 ユール、丁度いい所に」


ボーッと眺めていたユールにギリムが声をかけた。




「ギリムさん…」


「おいおい、そんな嫌な顔するなよ。 暇だろ? 手伝ってくれ」


「まぁ、暇ですけど…」


嫌な予感がしたユールは露骨に嫌な顔をする。




「大丈夫だ。 ちょっと荷物運んでほしいだけだよ」


「…わかりました、どれなんです?」


「おう、こっちこっち」


ギリムは船内にユールを案内して行く。




暫く船内を歩き、ギリムの作業部屋辺りに辿り着いた。




「ギリムさんの部屋ですか?」


「そうだ、船の補修にかかりきりでな。 荷物運ぶ時間がなかったんだよ」


そう言って作業部屋の扉を開けた中に入る。




「うぇぇ…」


部屋の様子を見たユールは思わず唸ってしまった。


ギリムの作業部屋は大量の木箱が積み重なっており、中には金属片や残骸、挙げ句はゴミまで入っていた。




「はっはっは! 凄いだろ? これを外の廃棄物置き場に持ってって欲しいんだ」


「…はぁ。 わかりましたよ…。 じゃあさっさと運んじゃいましょうよ」


笑いながら言うギリムに呆れつつユールは木箱の一つを持ち上げた。




「あー…。 それがだな。 俺はまだ仕事が残ってるんだ…だから…頼んだ!」


「ちょっ! ギリムさん!」


ユールの叫びも虚しく、ギリムは部屋から走って出ていってしまった。




「はぁ…。 仕方ない、運ぶか…」


取り残されたユールは、積まれた箱を見つつため息を吐いて箱を運んでいった。




木箱からガシャガシャと音を立てながら船内を進み、外に出る。


船から港に渡ってすぐの場所に廃棄物が集められている場所が見えた。


ユールはそこに向かって歩みを進めた。




「はっ、はぁ。 よっと…」


ガシャンと音を立てて木箱を置くユールに近くに居た船員が声をかけてきた。




「おう、ユール。 頑張ってんな、手伝いか?」


「はい、ギリムさんに手伝ってほしいって連れて行かれたら木箱が大量に積み重なってて…。全部運ぶんだそうです。 ギリムさんはどっか行っちゃいましたけど」


「はっはっはっ! そりゃあ災難だったな」


「笑い事じゃないですよ…」


豪快に笑う船員をユールはうらめがましく見た。




「…まぁ、そう悪く思うな。 ギリムのやつは昨日から殆ど休憩もしないまま補修作業をしていてな。 船が万全の状態を保ってるのも、あいつのおかげだ」


「…」


修理された甲板や外殻を見ながら彼は言った。


ユールはギリムの目元に大きな隈があったことを思い出す。




「そうですね…。 じゃっ! さっさと運んじゃいます!」


「ああ、その意気だ! 頑張れよ!」


「はい!」


そうしてユールは気合を入れて木箱を運ぶ作業に戻っていった。




結局ギリムの部屋の木箱は彼が作業を進めるたびに増えていき、運び終わったのは辺りが暗くなってきた頃だった。




「おう、ユール。 助かったぜ!」


「き、木箱が増えていくなんて聞いてないですよ…」


「はっはっはっ! わりぃな。 今度なんか奢るぜ」


息も絶え絶えにユールは言うが、ギリムもまた長時間の作業で若干ふらついていた。




「…ふぅ。 ギリムさんもフラフラじゃないですか。 そんなに急がなくても明日に回せばいいのに…」


「はは、まぁそうだな…。 だがもしも今救援が届いて、船が出払っちまってたら。 そんな事ばっかり考えちまって落ち着かないんだよ。 だから出来る事は今やっちまう」


「それでギリムさんが倒れちゃったら元も子もないですよ…。 ちゃんと休んで下さい」


「そりゃそうだ! 肝に銘じておくとしよう」


普段のふざけた様子と違うギリムの仕事ぶりに思わずユールは笑ってしまう。




「なんだ? 気持ち悪いな急に笑って…」


「はは…。 いや、いつもふざけてるのにこういう時は真面目だなーと思いまして」


「あ? おま、痒くなるだろ、やめろよ」


ギリムは若干照れながら言う。




「ダグラ船長はな…、こんなふざけたやつでも呆れずに手を差し伸べてくれたんだ…。 少しぐらい恩返し出来ねえかって思ってるんだよ」


「…何かあったんですか?」


その言葉にダグラに対する並々ならぬ恩を感じたユールは聞き返した。




「…いや、なんでもない。 ほら、今日はもう終わりだ! 帰ってしっかり休め!」


「…。 はい! それじゃお疲れ様でした!」


「おう、またな!」


ユールはそれ以上の詮索をやめ、ギリムの言う通り帰路についた。





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