ヘンリーの食堂 2
「ごちそうさまでした!」
そう言う四人の前にはラミアンとヘンリーが居た。
「いやいや、こちらこそ良い食べっぷりだったよ」
「あっはっは。 見てるこっちまでお腹いっぱいになりそうだったね!」
二人は笑いながらそう言った。
「それじゃあ、家まで送ってくよ」
「そうだな。 こんな時間になってしまったしな」
「それなら私達が送っていくよ!」
ユールとジグにラミアンが提案した。
「そうね。 ユールは逆方向だし、ジグは寮でしょう? ラミアンさん達と一緒に行くから大丈夫よ。 ありがとう」
「うん、大丈夫!」
「わかった、じゃあまたな!」
「気をつけて帰れよ」
そう言ってエミル達は帰っていった。
「じゃあ俺達も行くか」
「ああ、またな」
ユールとジグも、それぞれ歩き始めた。
ユールは教会方面に向かって居住区を歩いていく。
「遅くなっちまったな~。 起こさないようにしなきゃな…」
孤児院の子供達の寝顔を思い出しながら笑った。
孤児院に着いたユールは静かに建物の中に入った。
すると中はまだ明かりがついていた。
「おお、ユール。 帰ったか」
「爺ちゃん。 まだ起きてたのか? 寝ててよかったのに」
「ははは。 大丈夫だ、気にするな。 楽しんできたか?」
「ああ、久しぶりに四人集まって楽しかったよ。 こんな時間まで話し込んじまった…」
子供達を起こさないように二人は静かな声で話す。
「それは何よりだ。 さて、儂も休むとしようかな。 明日、船旅のことを聞かせてくれるか?」
「ああ、話したいことが一杯あるんだ、楽しみにしててよ」
「ははは。 それは楽しみだ。 では、おやすみユール」
「おやすみ」
エイダンが自室に戻るのを見て、ユールも自分の部屋に入っていった。
「ふぁ…」
気を抜いて眠気が一気に押し寄せてきたユールは直ぐにベッドに飛び込んだ。
「痛っ」
ポケットに違和感を感じ中にあるものを取り出す。
「あぁ…。 これ結局持ってきちゃったな…。 明日渡しに行かないと…」
寝ぼけ眼でそれを置きつつユールは眠りについた。
テーブルに置かれたそれ。 赤いコアは淡く光り輝いていた。
ユールはまた夢を見た。
そこは真っ白な空間。
大勢の人。
そして、鈍色の髪。
その人は必死に呼んでいた。
目の前に居る誰かを。
「…ちゃん! 兄ちゃん!」
「ん…」
部屋に響く叫び声にユールは目覚めた。
「兄ちゃん! やっと起きた! 朝ごはんできたよ! 早く行こう?」
「ん…。 くぁ…あぁ…。 …ああ、朝か。 すぐ行くから先行っててくれ」
起こしに来てくれた子供に先に行くように促す。
「わかった。 先行ってるね!」
「ああ、ありがとうな」
ぼーっと部屋を見渡すが、特に昨日と変わりはない。
「…気のせいか」
切り替えたユールは身支度をして部屋を出ていった。
「おお、ユール起きたか」
「おはよう、爺ちゃん。 お前達も」
「おはよう!」
食卓には既に朝食が並べられており、子供達も席についていた。
「おっ。 旨そうだな」
「もう食べていい?」
ユールが席についたのを見た子供達が催促をし始める。
「待ちなさい。 食べる前の挨拶だ」
「はーい」
エイダンに言われた子供は手のひらを合わせる。
それに続いてユールも手のひらを合わせた。
「頂きます!」
子供達は声を揃えて言った直後、勢いよく食べ始めた。
「こらこら、焦らなくても大丈夫だ。 おかわりは沢山ある。 ゆっくり食べなさい」
「ふぁい」
エイダンは軽く注意するが、子供達が食べる勢いは収まらなかった。
「お前ら、喉に詰まらせるなよ? …ほら、言わんこっちゃない」
「んっ。 ごほっ」
咳き込む子供に水を差し出しながらユールは笑った。
「ほら、お前達。 ユールが船での出来事を話してくれるぞ。 ゆっくり食べながら聞くといい」
「ほんと!?」
エイダンがそう言うと子供達は声を揃えてユールを見た。
「うおっ。 わかったわかった、話すから落ち着けって」
「はやくはやく!」
勢いづく子供達に若干引きつつ話し始めた。
ユールは昨晩、リリーに話したときのようにエイダンと子供達に船での出来事を話す。
聞かされた子供達は、驚いたり怖がったりと様々な表情をしながらユールの話に聞き入っていた。
「それで無事に帰ってこれたわけだ」
「凄い!」
「良かった…」
ユールは話を締めくくり、子供達は息を吐いた。
「はは、満足したか?」
「うん! 楽しかった、ありがとう!」
「楽しかった!」
「ほら、お前達。 手が止まっているぞ。 食べてしまいなさい」
「はーい」
話に集中して手が止まっていた子供達にエイダンは食事を促した。
「大変だったな、ユール」
「ああ、でもいい経験になったよ」
「はは、言うようになったな。 だが無理だけはすんじゃないぞ?」
「ああ、わかってる! 爺ちゃんもな」
「何を言う。 儂はまだまだ動ける」
そう言って両手をせわしなく動かすエイダンをユールは笑った。
「ユール。 この後はもう帰るのか?」
「そうだな。 ちょっと研究区にもよりたいし、そうする予定」
「えー。 もう帰っちゃうの?」
付近に居た子供達は抗議の目をしていた。
「そうだな…。 なら昼までは遊ぶか!」
「ほんと! やった!」
「遊ぶ!」
「こらこら、まずは食事を終えてからにしなさい」
ユールの提案にざわめく子供達をエイダンが注意する。
「いいのか? ユール」
「ああ、急いでるわけでもないし大丈夫だよ」
「いいっていいって。 ほら、お前ら。 焦って食べるなよ!」
そうして朝食を終えた後、暫く休憩をはさみ昼頃までユールは子供達と遊んだ。
その後、一緒に昼食を終えたエイダンと子供達は、孤児院の入り口にユールを送りに集まっていた。
「もう行っちゃうの?」
「はは、朝も聞いたな。 大丈夫だ、また遊びに来るよ」
「約束ね!」
「約束だ」
寂しそうな顔をする子供達の頭を撫でながらユールは言った。
「体には気をつけるんだぞ」
「爺ちゃんも。 またな」
最後にエイダンと言い合い、ユールは研究区に向かって歩いていった。
「ばいばーい!」
「またねー!」
後ろからは子供達の送る声が聞こえていた。




