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ヘンリーの食堂


門をぬけた四人は商業区を歩いていた。




商業区は居住区程ではないが、店舗が並んで建っており、露店も多く見られた。


船での遠征で得た資源の幾らかは、この商業区に卸され売買される。


その他にも栽培された野菜や、他の国から流通してきた物資、装備類など様々なものが取引されていた。


通貨は、島やネルレイズなどから取れる鉱物を加工した『硬貨』を使用しており


『銅貨』、『銀貨』、『金貨』等が存在するが、一般的には『銅貨』と『銀貨』が使われている。




商業区は、この時間でも人通りは多く、特に食事を提供する店の付近が賑わっていた。




「混んでるなぁ。 ヘンリーさんのとこ空いてるかな?」


「丁度夕食の時間だからな、混むのは仕方がない。 二人共大丈夫か?」


ジグはエミルとリリーを振り返って言った。




「ええ、大丈夫。 ほら、リリーちゃんとついてきなさい」


「はーい」


他の店に気を取られるリリーをエミルは引っ張って手をつないだ。




「あっちだ」


ユールは商業区の一角を指差して、進んでいった。


それに続いて他の三人もついていく。




「ヘンリーさん! 席あいてる?」


店につき、ユールが扉を開けて叫ぶと、中から大柄な男が出てきた。


その男、ヘンリーはダグラのような筋肉質ではなく丸い大きな体をしていた。




「おお、ユール達か。 奥の部屋が一つ空いているよ。 座って待っていてくれ」


ヘンリーは店の奥の部屋にユール達を案内した。




「良かった、空いてたな」


「ええ、早く座りましょ。 人混みで疲れたわ…」


そう言うユールを尻目に、エミルはそそくさと席につく。




「何にしようかな!」


「忙しそうだな」


リリーは早速メニューを見るが、ジグは店内を見回す。




「俺はいつもの魚定食かな~」


「なら、俺もそれにしよう」


ユールとジグは直ぐに決めた。




「私は…。 このオムライスにするわ」


「ちょ、ちょっと待って!」


続いてエミルも決めるが、リリーはまだ迷っていた。




「焦らなくていいわよ」


「うん…。 …じゃあ私もエミルと同じの! デザートつける!」


リリーも決めおわると、ヘンリーが席にやってきた。




「決まったかい?」


「はい。 俺とジグはこれ、エミルとリリーはこれで。 リリーのにはデザートも付けて下さい」


「はいよ」


注文を受けたヘンリーは厨房に戻っていった。




「ねえねえ、船での事聞かせてよ」


「エミルから聞いてないのか?」


聞いてくるリリーに、ユールらエミルを見ていった。




「長くなるから、集まったら話すつもりだったのよ。 それに殆ど食堂に居たから、私も二人の話を聞きたかったし」


「なるほどな。 ならどこから話す?」


納得したユールはジグを見る。




「見張り台からで良いんじゃないか?」


「そうだな」


「宜しくお願いします!」


話始めようとする二人に、リリーは期待の目をよせる。


それに少し笑いながらユールは話し始めた。




「俺が見張りの番の時に二人が来たんだ」


「エミルがユールに差し入れを届けにな」


「余計なことは言わなくて良いの」


補足するジグをエミルは睨む。




「エミルちゃん優しい~」


「リリー?」


「なんでもありません!」


茶化すリリーもエミルは睨んだ。




「はは。 …まぁそれで、何もなくて暇だったもんで話してたんだけど」


「エミルが遠くに何か見つけたんだったな」


二人はエミルの方を見た。




「エミルちゃんが?」


「ええ、黒っぽいのが遠くに見えたのよ。 それですぐに二人に言ったわ」


このくらいの、とエミルは手で表現した。




「それを単眼鏡で俺が確認したんだが、確かに流れ岩のような黒っぽいものが浮いていた」


「直ぐに船長に報告したんだ。 そしたら…」


「突然、警報が鳴り出したの。 驚いたわ…」


二人の言葉に続けて、辟易しながらエミルは言った。




「ああ。 何かと思った」


「親父に聞いたら視認しづらかったから、一応警戒して戦闘態勢を取ったそうだ」


ユールとジグは笑いながら言う。




「笑い事じゃないわよ。 ほんとに驚いたんだから」


「はは。 そこでエミルは食堂に行ったんだ」


「ラミアンさん達が心配だったからね」


「俺はユールと一緒に船長室に向かった」


「ああ、初めて船の発信を間近で見た!」


ユールは興奮した様子だったが、エミルは理解出来ないと顔を歪めた。




「それで結局流れ岩で間違いはなかったんだけど、俺達も作業に同行することになったんだ。 な? ジグ」


「ああ。 流れ岩にはマキナの巣がくっついていた。 だからハイドさんと一緒に行くことになった」


「えっ…。 巣が!?」


リリーは驚いて聞き直した。




「巣に近づいたらマキナが飛び出してきて焦ったよ。 ハイドさんが全部倒してくれたけどな!」


「はは、すごい動きだったな」


「肝を冷やしたわよ…」


笑いながら言う二人に、呆れたようにエミルは言う。




「エミルちゃんも近くに居たの!?」


「ううん、船長室から見てたの。 その時、船長に私も何か手伝えないかって頼んだの」


「びっくりした…」


「だから、あの時甲板に居たのか」


リリーは驚いたが、エミルの言葉に納得して頷いた。




「二人も危なかったんじゃないの? いきなり巣に近づくなんて…」


「俺達は事前にハイドさんに、詳しく教えて貰ってたんだ。 武器の扱いとか巣とマキナの事も」


「巣に近づく時も後ろに下がって見てたしな」


心配するリリーに二人は話した。




「それより危なかったのは、その先よ…」


「ネルレイズだな」


「どういうこと!?」


ネルレイズと聞きリリーは大きな声で聞き直した。




「あれってアメリさん達が倒したやつじゃないの?」


「リリー。 声が大きいわ。 確かにアメリさん達が倒したけど、襲われたのは私達よ」


興奮するリリーをエミルは諌める。




「流れ岩の回収作業中に、また警報がなったんだ」


「そうそう、そしたら放送でネルレイズが近づいてきてるから直ぐに船に戻れって」


肩をすくめながら言うジグとユールにリリーは言葉を失った。




「ハイドさんに連れられて、三人共船内に戻った」


「そこで増援が来るまで待機…のハズだったんだが」


「ネルレイズが船にマキナの巣を打ち込んできたって放送があったの」


代わる代わる言う三人のにリリーは聞き入っていた。




「それで俺達は一応戦う準備をしとくことにしたんだ」


「ユールと俺はまだいいが、エミルはまともな武器を持ったこともなかったからな」


「ええ、ユールに槍を渡された時は不安だったわ」


その後…と三人は続ける。




「暫くすると物音が聞こえたんだ。 天井の方から」


「ユールと俺で警戒したが、やはりマキナだった。 なんとか二人で倒すことは出来たが」


こんな形の、とユールはジェスチャーする。




「それで安心してたら、もう一体マキナが現れたんだ。 しかも気を抜いていたエミルの方目掛けて飛んできた」


ジグの言葉にリリーは息を呑む。




「思わず目を瞑ったわ。 そしたらユールが助けてくれたの」


「ああ、すごい動きでマキナを仕留めた」


「はは。 俺もよくわからないんだけど、とにかく助けなきゃって思ったんだよ…」


そこまで聞いてリリーは息を吐いた。




「…はぁ。 皆無事で良かった…」


「心配かけたな、大丈夫だ」


うつむくリリーの頭をジグは撫でた。




「ええ、皆無事よ」


「この通り!」


ふざけて力こぶを作るユールを三人は笑った。




すると、厨房の方から女性がやってきた。




「はい、おまちどう様!」


「ラミアンさん!」


注文した料理を運んできてくれたのは船で別れたラミアンだった。




「もう帰ってたんですね。 …休まなくて大丈夫なんですか?」


「あっはっは。 心配してくれてありがとうね。 でも大丈夫さ、このとおり元気だよ」


気遣うジグにラミアンは笑って返事をする。




「ほら、これとこれと…。 はい、おまけ!」


ラミアンはそれぞれの前に注文された料理を置いた後、中央に別の皿を置く。




「あっ。 これって…」


それを見たエミルが気づいた。




「そうだよ、エミルちゃんの作った料理さ! リリーちゃんの持ってきた野菜を少し貰ってね。 作ってみたんだ」


「ありがとう! ラミアンさん!」


「良いんだよ、ゆっくりお食べ」


四人は感謝を述べ、それを聞いたラミアンは上機嫌に厨房へ帰っていった。




「これって!」


「ええ。 それが報告した料理よ、リリー」


「うん? まだ食べてないのか?」


目を輝かせるリリーにユールは聞いた。




「報告しただけだから、食べるのは初めて!」


「はは、なら好きなだけ食べると良い。 俺達はもう食べたからな」


「良いの!?」


ジグの言葉に更にリリーは目を輝かせる。




「はは、旨いからって焦って書き込むなよ?」


「喉を詰まらせないようにね」


「はい、頂きます!」


ユールとエミルから言われ、行儀よく食べ始めた。




「ん~…。 美味しい!」


結局叫ぶリリーを三人は微笑ましく見ていた。




そして、四人は閉店まで話しながら食事を楽しんだ。













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