エイダン・ハネット 3
ユールとエミルは暫く子供達に付き合い、気づけば辺りは暗くなっていた。
ユールは遊び疲れて眠ってしまった子供を部屋に送り届け、エミルを探していた。
「エミルー?」
そう言いながら明かりのついた部屋の扉を開けた。
「しっ。 今寝たところ」
「はは、いい顔で寝てるな」
「そうね。 さっきまで振り回されてたのが嘘みたいに静かになっちゃったわ」
二人は小声で笑いあった。
「遅くなっちゃったわね。 リリー達待ってるかしら…」
「あぁ。 でもまぁ飯の時間には丁度いいかもな」
子供達を起こさないように静かに部屋から出た二人は、窓の外を見て言った。
少し歩いて、広間に出るとエイダンが座って本を読んでいた。
「エイダンさん」
「爺ちゃん」
「おお、エミルにユール。 子供達は寝たのか?」
エイダンは本を置きつつ二人に聞いた。
「はい。 疲れて眠ってます」
「相変わらず力が有り余ってたよ」
「ははは。 そうか、二人共すまないな」
子供達を思い出して笑顔で言う二人につられてエイダンも笑った。
「いいえ、久しぶりに会えて楽しかったです」
「はは、そうかね? なら、また子供達の相手を頼んでもいいかい?」
「はい、喜んで」
エイダンの頼みをエミルは快く引き受けた。
「爺ちゃん、ちょっとジグ達と合流して、飯食いに出てくるよ」
「おお、そうか。 船上で碌なものが食べられなかっただろう。 ゆっくりしてくると良い」
「はは、確かに日持ちするものばっかりだったな~。 でも最後に旨い物食えたんだぜ」
エミルの方を見ながらユールは言った。
「旨いもの?」
「リリーが新種の野菜を持ってきてくれたんです。 それを私がうまく調理するのに成功して…」
「めちゃくちゃ美味かった!」
ユールはエミルの言葉を遮って言った。
「はっはっは。 そんなにか」
「もう、ユール…。 今日、研究区に報告してきたのですぐに出回ると思います。 エイダンさんには真っ先に持ってきますね!」
前に出てきたユールをエミルは押しのけた。
「ああ、楽しみにしているよ」
エイダンは笑いながら言った。
「さて、お前達。 食事をしに行くんだろう? ジグ達も待ってるんじゃないか?」
「そうだった!」
ユールははっとして声を上げた。
「それじゃ爺ちゃん行ってくる!」
「エイダンさん、また!」
「ああ、行って来い」
そう挨拶をして二人は歩いていった。
「どこに居るかしら?」
「まずは船の方に行こうぜ。 居なかったら寮に行こう」
「そうね」
そう話しつつ居住区を出て港の方に向かって行く。
港では、ユール達が帰って来た時ほどではないが人が残って作業をしていた。
「うーん。 居ないかな?」
「さすがにもう居ないんじゃないの?」
ジグたちを探す二人に作業をしていた船員が声をかけてきた。
「おう、お前達。 ジグから伝言だぞ。 『船の作業は終わったから寮に戻って休んでる。』だそうだ」
「わかりました、ありがとうございます!」
「わざわざ、ありがとうございます」
「ああ、気にすんな!」
ジグからの伝言を伝えてくれた船員に二人は礼を言った。
「やっぱり寮ね」
「ああ、行こう」
二人は寮に向かって歩いていく。
寮は居住区には無く、港近くに建てられている。
そこには主に船の乗組員が住み、有事の際にはすぐに出港できるようになっていた。
寮近くまで来た二人は一階のテーブルで話しているジグとリリーを見つけた。
「おーい!」
ユールの叫び声に二人は振り返った。
「ユール、エミル。 もう大丈夫なのか?」
「二人共、おかえり~」
ジグとリリーは、近づいてくるユールとエミルを見て言った。
「ああ、ごめん。 時間かかった」
「いや、構わないさ。 エイダンさんは元気だったか?」
「元気だったよ、子供達もな。 さんざんふりまわされたよ…」
「はは、だろうな」
ジグはもみくちゃにされるユールを想像した。
「リリー?」
「エ、エミル? どうしたの? 怖い顔して」
「よくもけしかけてくれたわね? おかえしよっ!」
エミルはジリジリと近づいてリリーをくすぐり始めた。
「あっ、あはははっ。 やめっ、やめて! エミルちゃっ!」
「おーい、二人共。 飯食いに行く体力は残しとけよー」
「何かあったのか?」
呆れるユールにジグは尋ねた。
「ああ、孤児院に二人が来た時に、リリーが子供をエミルにけしかけたんだよ」
「…なるほどな」
それを聞いて苦笑いでジグは二人を見た。
「はっ、はっ、はぁ。 次はあんたもあの子達の相手をしなさい…」
「わ、わかった。 わかったからもう許して…」
息を切らしながら二人は落ち着いた。
「終わったか? 飯行こうぜ」
「ええ、ちょっと待って…」
「助かった…」
エミルとリリーは息を整え、返事をした。
「良いわ、行きましょう。 どこにいくか決まってるの?」
「ヘンリーさんのところは?」
エミルにリリーはそう提案し、他の二人も頷いた。
「そうだな、あそこにするか」
「なら、早速向かうとしよう」
「ラミアンさん、居るかしら?」
ユール達が言うヘンリーは船の食堂を担当していたラミアンの夫で、商業区で店を開いている。
価格が安く、顔なじみ故にオマケもしてくれることがあるので、ユール達はよく利用していた。
「ああ、もう帰っているんじゃないか?」
「とりあえず行ってみようぜ!」
「そうね」
「じゃあ、出発!」
リリーの掛け声と共に、四人は商業区に向かって行った。




