エイダン・ハネット 2
自分の部屋に着いたユールは、荷物を置きベッドに転がる。
「んー。 久しぶりに揺れないベッドだ…」
天井に手を伸ばし、船の部屋を思い出した。
「…次の航海はいつかな…。 またなんか見つかれば…良いな…」
疲れていたユールは、そのまま寝てしまった。
「しっ。 静かにするんだよ」
「ちぇ。 遊ぼうと思ったのに」
「兄ちゃん、疲れてるんだよ。 きゅーそくは大事って爺ちゃん言ってた」
がやがやと周りから聞こえる声にユールは薄目を開けた。
「あっ。 起きちゃった」
「ほら、うるさくするから」
「してないよ!」
更に大きくなった声にユールは笑いながら起き上がった。
「ん、んー…。 はは、ごめんな。 寝ちまったみたいだ」
「起きた! 遊ぼう?」
「大丈夫?」
起き上がったユールに子供達から声が上がる。
「大丈夫だ。 …暗くなるまで遊ぶか!」
窓から少し赤らんできた空を見て、提案する。
「やった!」
「何する?」
「じゃあ、兄ちゃん鬼ね!」
最後に言った子供の声を皮切りに、四方に散っていく様子を見てユールは焦りながら立ち上がった。
「ちょっ! いきなりかよ!」
「逃げろ!」
「あっちいこ!」
狼狽えるが子供達は止める様子はなく、一人残らず居なくなってしまった。
「はぁ。 仕方ない。 やるか!」
そう言ってユールも走り出した。
孤児院から外に出たユールは、すぐ前の柱に隠れきれていない子供に気づく。
「んー? どこ行ったかなぁ」
わざとらしく話ながら、その方向に近づいていった。
「んんー。 ……。 みっけた!」
直前まで来たユールは服を掴んだ。
-ゴンッ-
「痛っ!」
しかし、それは服に似たただの布切れだった。
布の上に仕掛けられていた木の枝が頭に落ちてきたユールは声を上げた。
「引っ掛かった!」
「逃げろ!」
その様子を見ていた数人の子供が走り去っていった。
「あっ! やられた! 待て!」
「やだ!」
「あはははは」
子供達を追いかけて庭まで来たが、中々捕まえられないまま壁にもたれ掛かった。
「はっ、はっ、はぁ…。 全く…相変わらず元気だなぁ」
「何してるの?」
そんなユールに外から声がかかる。
「ん? エミル? …リリーも。 どうしたんだ?」
「やっほー、ユール」
「報告が早く終わったから、夕食でも食べに行かないかって話になったのよ。 あとエイダンさんに挨拶もね」
研究区画での用が終わった二人はユールを誘いに来ていた。
「ジグは何処にいるかわからないから、まずあんたから誘いに来たわけよ」
「飯か! 良いな! ジグなら多分、船か寮じゃないかな?」
「そう、なら…」
そこまで話した二人を子供達が遮った。
「えー! 行っちゃうの!」
「もうちょっと遊ぼうよ!」
そう言いながらエミルの手を引っ張った。
「ちょ、ちょっと待って! わかった、わかったから!」
「ははは。 まだ早いし、もう少し遊ぶか。 リリー! ジグは船か寮だと思うから先に迎えにいってくれ! こいつらが満足したら行くから」
ユールは子供達に連行されるエミルを見て笑いながら、リリーに頼んだ。
「わかった! 先いってるね~」
「お姉ちゃんは遊ばないの?」
「また今度あそんだげる! 今日はあっちのお姉ちゃんと遊んどいで?」
リリーは、せがむ子供にエミルを指差して言った。
「リリー!」
「頑張ってね、エミルちゃん」
エミルは抗議したが、リリーはそう言い残して去っていった。
「ははは。 諦めろ、エミル」
「あんたも来なさいよ!」
「わかった、わかった」
二人は孤児院の中に連れていかれた。
「エミルか?」
「エイダンさん!」
中に居たエイダンはエミルに気づいて近づいてきた。
「お久しぶりです。 あの時はお世話になりました」
エミルはエイダンに頭を下げて言った。
「良い、良い。 当たり前の事をしただけだ、かしこまる必要はない」
それに…。とエミルに引っ付いている子供を見てエイダンは続ける。
「子供達の相手をしてくれて、儂の方こそ助かっているよ」
「はい! ありがとうございます」
エイダンの言葉にもう一度エミルは感謝を述べた。
「お姉ちゃん! 部屋で遊ぼう?」
「行こう?」
「はいはい。 引っ張らなくても大丈夫よ。 ほら、いきましょう?」
せがむ子供達に微笑みながらエミルは部屋に入っていった。
「兄ちゃん! 続き!」
「わかった、わかった」
「怪我をしないように気を付けなさい。 特にユール」
「俺もかよ!」
「はーい」
ユールは憤慨しながらも子供達に続き、外へかけていった。




