グラント 2
グラントは山を上下逆さまにして海に浮かべたような土台に、街が形成されている。
街は『居住区』『商業区』『研究区』など複数の区画に別れている。
その中央には一際高い城がそびえ立ち、城の付近の区画には国王や階級の高いもの達が居住していた。
街の一番外側には壁が形成され、砲台が配備され外殻で覆われた壁は外敵から街を守る役割を担っている。
「グラントに到着する! 次の出港まで、しっかりと羽を休めておけ!」
ダグラの放送とともに、グラントの外側にある門が開き二隻の船を迎え入れた。
港に到着した船では船員たちが慌ただしく動き回っていた。
「積み荷をおろせ!」
「怪我人がいる! 応急処置は終わっているが治療を頼む!」
がやがやと船員達の叫び声で港が慌ただしくなる。
「よし!着いた!」
「はしゃぎすぎだ、転けるぞ」
ユールとジグは船からグラントに降り立った。
「ちょっと! 置いて行かないでよ!」
「エミル!」
「ラミアンさん達はもう大丈夫なのか?」
遅れてエミルが船から降りてきた。
「ええ、あらかた終わったから大丈夫だって」
「なら、リゼさん達に会いに行くか」
「そうだな」
三人はそう言ってもう一隻の船の方を見た。
そちらには人だかりがあるのが見える。
「あれかな?」
「恐らくな」
「行きましょ」
そちらに向かって歩いていくと、ネルレイズの残骸に人だかりが出来ているのが見えた。
「おお、ネルレイズの残骸か」
「これ、仕留めたんですか? リゼさん!」
「見ろ、背中。 すげえ傷跡だ」
船から降りたアメリとリゼに人だかりから思い思いに声がかかる。
「仕留めたが、船全員でだ。 私だけの功績じゃない」
「ほら、作業の邪魔だよ! 散った散った!」
リゼは律儀に返すが、アメリは野次馬を解散させた。
「アメリさん! リゼさん!」
そこにエミルが声を上げて駆け寄った。
「おや、エミル。 無事に帰れて何よりだ」
「ああ。二人もな」
アメリはエミルを受け止め、リゼは遅れて近づいてきたユールとジグにも声をかけた。
「はい!」
「お陰様です」
声をかけられたユールとジグも返事を返した。
「それじゃあ、私達は国王に報告しに行かないといけないからね。 訓練頑張るんだよ」
アメリはそう言いながら町の中央方面にある城を指さした。
「エミル、ユール、ジグ。 こちらの準備が整い次第連絡する。 恐らく数日はかかると思う。 その間しっかり体を休めておいてくれ」
「はい!」
「「わかりました!」」
アメリとリゼに三人は元気よく返事をした。
「それじゃあ、行くよ! リゼ」
「はい」
二人は城に向かって歩いていった。
「さて、どうしようかな」
「エイダンさんのとこに行くんだろう?」
「そうだ、まずは爺ちゃんのとこに行かなきゃ」
その時、三人に遠くから声がかかった。
「エミル~! ユール、ジグ!」
「リリー!」
走ってくるリリーにエミルが真っ先に反応した。
リリーと呼ばれた彼女はエミル達と同年代で灰色の髪をした幼い顔立ちの少女だ。
普段は研究区画に在籍していて、船に乗ることはあまり多くない。
エミルが料理に仕上げた野菜も、リリーが研究区画で育てたものだった。
「エミル!」
「リリー!」
二人はそう言いながら抱き合った。
「やっぱり、ここに居たね」
「どうしてわかったの?」
「遠くから見たらすごい人だかりが出来てたから居るかな~って」
「ふふ、私達も今ここに来たところよ。 すれ違わなくてよかった」
リリーとエミルは再会を喜びあった。
「ユールとジグも! おかえり!」
「ああ、ただいま!」
「リリー、またお前はそんな格好で…。 それにここに来るのに許可はとったのか?」
ハイタッチするユールに対してジグは小言を言い始めた。
「う…。 だって船が帰ってくるって聞いたからじっとしてられなくて…。 それに許可はとったよ! 出る時に言ったもん!」
「だからといってそんな薄着で…。 それは許可をとったとは言えないぞ」
「はは、ジグは心配性だなぁ」
「そうね、リリーだけにね」
言い合う二人をユールとエミルはニヤニヤしながら眺めていた。
「…なんだ、その目は」
「いや、なんでも」
「なんでもないわ。 あ、それよりリリー! あの野菜の事だけど」
ジグに睨まれユールとエミルは話題をそらした。




