アメリとリゼ
甲板に着いた四人は海の方を見る。
「見えてきたな」
「あれが…」
「そうだ、見るの初めてか?」
「港に泊まっているのを見たことはありますが、動いているのを見るのは初めてです」
ダグラの問にエミルは答えた。
その船はこちらの偵察船と同じく外側は外殻で覆われている。
各所に砲台が設置されているが、一番目立つのは甲板にある巨大な砲身だった。
間もなくこちらの船に近づき停止した。
「梯子をかけろ!」
ダグラの指示に船員は互いの船を渡れるようにはしごを掛けた。
そして奥から人影がこちらに向かってくるのが見える。
「リゼさんだ…」
「ああ、いつ見ても綺麗だな。 あの船長とは大違いだ。 唯一似てるのは身長くらいじゃないか?」
「違いない」
そう船員達は話している。
彼女、リゼはその長い髪をなびかせながらこちらに歩いてきた。
「聞こえてるよ! お前達!」
「ひっ!」
そのすぐ後ろから聞こえてきた怒声に、船員は竦み上がった。
声の主、アメリはダグラと殆ど変わらない巨体で筋肉質な体つきをしており、まさに女傑と呼ぶに相応しかった。
「リゼさん! アメリさん!」
そう言ってエミルは二人に駆け寄った。
「エミルか。 無事だったか? 遅くなってしまった、すまなかった」
「いえ、大丈夫です! この通り怪我もしてませんし!」
駆け寄ってきたエミルにリゼは鋭い目を和らげて話した。
「んん? エミルかい? 大きくなったもんだ、見違えたね。 ほら顔を見せておくれ」
「アメリさん!お久しぶりです!」
そういってアメリは近寄ってきたエミルの頭を撫でる。
「こりゃ、将来美人になるね。 母親似のいい顔だ」
「ありがとう、アメリさん」
孫と話すように褒めるアメリにエミルは笑顔で礼を言った。
「エミルが居るってことは…。 ジグ! ユール! 居るんだろう?」
そう言ってアメリはエミルの後ろを覗いた。
「おっ、お久しぶりです。 アメリさん…」
「今回は助かりました、ありがとうございます」
ユールは歯切れ悪く言い、ジグは頭を下げて感謝した。
「いい、いい、頭なんか下げなくて! 助けるのは当たり前さね!」
かしこまるジグにアメリは笑いながらそう返した。
「ユール! どうだい? 鍛錬はサボってないかい? 少しは動けるようになったんだろうね?」
「は、はい! サボってないです!」
アメリの定めるような視線にユールはたじろいだ。
「どれ…。 筋肉はついてきてるようだね。 その調子で励みな!」
「は、はい!」
乱雑にユールの体を触りアメリは言った。
「アメリ」
「ダグラ! 今回は災難だったね」
「ああ、お陰様で助かった」
ダグラはアメリに礼を言った。
「良いんだよ! さっきも言ったとおり、助けるのは当たり前だ。 それに礼より酒を奢ってくれたほうが嬉しいねぇ」
「そうだな、帰ったら宴会でもするか。 奢るぞ」
「そりゃあ良い!」
そう言ってアメリはダグラの背中をバシバシと叩いて豪快に笑った。
「うへぇ。 船長よく平気だな…」
「ああ、俺達が叩かれたら吹き飛びそうだ」
凄まじい音をして叩かれる駄鞍を見てユールは恐怖し、ジグは苦笑いをして言った。
「ん? あれが飛ばしてきたっていう巣かい?」
甲板の一角をみてアメリは言う。
「ああ、そうだ。 ネルレイズがそれらしい動きをしただろう?」
「そうさね…。 確かに背中に砲台みたいなのがあった。 事前に言われてなかったら厄介なことになってたかもねぇ」
ダグラの言葉にアメリはネルレイズの様子を思い出して言った。
「まさか俺も巣を撃ち込まれるなんて思ってなくてな。 船内にマキナが侵入して対処に遅れた」
「クルーは無事だったのかい?」
「ああ、幸い軽い怪我人だけで済んだ。 だが…」
アメリの問いにダグラはユールたちの方を振り返った。
「あいつらもマキナに襲われてな、二体倒したようだ」
「三人でかい?」
「ああ、俺の落ち度だ。 あいつらには謝った」
ダグラは申し訳無さそうな顔をして言った。
「お前達、無事なんだろう?」
「はい!」
「大丈夫です」
アメリの問いにユールとジグは答えた。
そしてエミルの方を振り返る。
「エミル、怪我は?」
「ありません! 大丈夫です!」
アメリの代わりに質問したリゼにエミルは言った。
「今まで無かったことだ、お前は最善を尽くした。 次にいかせばいい、引っ張るんじゃないよ!」
「…そうだな」
再度振り返って言ったアメリの言葉にダグラは笑いながら返事をした。




