マキナ
甲板では直撃した砲弾が半分ひしゃげてへばりついていた。
「あれは…まさか!」
ダグラは嫌な予感がして、すぐに拡声器を持った。
「マキナの巣だ! マキナの巣が撃ち込まれた! 全員武器をもて! 戦えないものは急いで避難しろ!」
船内にダグラの声が響くと同時に甲板の巣が蠢き、隙間からマキナが飛び出してきた。
-ギギギギギギギ-
音をたてながら甲板を確認しに来ていた船員に襲いかかった。
「ちっ。 甲板に戦闘員を増員しろ! それと船内にも数匹潜り込んだようだ。数人で組んで巡回させろ!」
「はい!」
ダグラに指示された船員は通信機で連絡を取り始めた。
武器庫では三人がダグラの放送に焦っていた。
「マキナの巣が飛んできたって事か? ネルレイズが?」
「さっきの放送を聞く限りそうらしいな…。 ネルレイズがマキナの巣を飛ばしてくるなんて初めて聞いたが…」
ユールは狼狽え、ジグはダグラからも聞いたことがない事例に驚く。
「ねえ、ここも危ないんじゃないの? マキナがいるんでしょ?」
エミルは不安そうに言った。
「…そうだな、ここも安全とは限らなくなった」
「俺達も武器を持っておかないか?」
ジグは顎に手をおきながら言った。
幸いなことに、ここは武器庫で装備は沢山置いてあり、それを見回してユールは提案した。
「ああ、そうしよう。 何が起こるかわからないからな」
「よし」
二人は立ち上がって装備品を確認しにいくが、エミルから声がかかった。
「ねえ、私は護身用の武器しか持ったことないんだけど…」
「そうだなぁ。 …これなんかどうだ?」
そう漏らすエミルに、ガラガラと箱を漁っていたユールは装備品を差し出した。
「槍?」
ユールから武器を受け取りながら、エミルは言った。
「ああ。 遠くから攻撃できる銃のが良いかなぁって思ったけど、あれはいきなり使うには危ないし…。 それならリーチもあるからさ」
「そうだな。 前には俺達が出るから、後ろで構えていてくれれば良いな」
そう二人はエミルに言った。
「わかったわ、二人も気を付けなさいよ?」
「ああ、エミルも俺達を刺すなよ?」
「今刺してあげましょうか?」
笑顔で槍を構えるエミルにユールはひきつった顔で手をあげた。
三人は装備を整え終わり、固まって待機していた。
「しかし、増援はまだみたいだな」
「ずっと砲撃してるもんな…」
定期的に聞こえる砲撃音と振動に、ユールとジグは奥の部屋を見ていった。
「ハイドさん呼んだ方が良いかな?」
「いや、今砲撃を止めるのは不味いだろう。 何かあったら俺達で出来るだけ対処しよう」
「そうね。 私達のために船を危険に晒したくはないわ」
「…そっか、そうだな」
そう三人は覚悟を決める。
「頼りにしてるわよ」
「任せろ!」
「出来るだけやってやるさ」
エミルの言葉に二人は返した。
そのすぐ後、小さな音がなった。
-キキキキキキキ-
「何か聞こえなかった?」
エミルは小声で二人に聞く。
「いや、何も…」
「どんな音だ?」
しかし、二人には砲撃の音で聞こえていなかったようで、そう返した。
「気の所為かしら…。 擦れるような音が聞こえたの」
「それって…。」
エミルに返事をしようとしたユールは途中で声を潜める。
-ギ、ギギ、ギリ…-
今度ははっきりと、聞こえた。
「マキナの動く音だ…」
「ああ、確かに聞こえた」
その音に、三人は警戒しながら辺りを見渡す。
-キィ…-
その音に一斉に扉の方を見た。
「なんだ…。 扉が開いただけか…」
「驚かせないでよね…」
「いや、まだ音は聞こえる。 警戒しろ」
安堵する二人にジグは注意した。
「どの辺りから聞こえる?」
「…上か? 管の辺りだ」
ユールの問いにジグは天井、通信機等の管が密集している辺りを指差す。
-キ、キキキキキ-
確かにその方向から音が聞こえ、三人は身構えた。
-カン、カンカンカンカンカン-
壁を叩くような音が聞こえた次の瞬間、マキナが飛び出してきた。
「きゃあ!」
「来たぞ!」
「任せろ!」
ユールは持っていた鎚で天井から飛びかかってきたマキナを叩き落とした。
-ガッ、ガン!-
マキナは音を立てて壁に吹き飛ぶ。
「八足型のマキナか…」
「ユール、お前は戦ったことがあるんだったか?」
二人は壁際で体勢を立て直したマキナから目を離さずに言った。
「ああ、前に倒した」
「一人でか?」
「いや、ハイドさんと一緒に…」
ジグの問いに苦い顔をしながらユールは言った。
「まぁ、なんとかするさ」
「そうだな。 大丈夫だ」
そう言って二人は武器を握りしめた。




