不安なエミル
「俺はダグラに通信をしてから行く。 既に甲板に他の奴らが集まってるはずだ。 先に行っておけ、俺がつくまで早まった事はするんじゃないぞ?」
「わかりました!」
「大丈夫です」
そう言って二人は部屋から出ていった。
その頃船長室ではダグラが船員と流れ岩を観察していた。
「船長、あれ…」
「ああ、分かっている。 …マキナの巣だな」
流れ岩を鏡で拡大して見ながら、彼は言った。
流れ岩の一部には、球体型のマキナの巣が半分埋まっていた。
「だが、穴は見えているようだ。 警戒して向かえば問題ないだろう」
「そうですね、誰を最初に向かわせますか?」
「ハイドだ。 後ろに銃を持たせた奴らを集めていつでも援護できるよう待機させろ」
「わかりました、ハイドさんに伝えます」
「任せたぞ」
そう言ってダグラは席を離れ、後ろを振り向いた。
そこには心配そうな顔をしたエミルがいた。
「…船長」
「どうしたエミル、しおらしい顔をして。 いつもの元気はどうした」
ふっと笑いながらダグラは言うが、エミルの顔は晴れない。
「…あの二人も、行くんですよね?」
「ユールとジグか。 大丈夫だ、心配するな。 ハイドもついてる、他に戦闘員も居る。 無事に戻ってくる、必ずだ」
「…はい」
ダグラはエミルの頭をなでながら言った。
少し恥ずかしそうにしながら、エミルの顔には笑顔が戻った。
「そうだ、エミル。 他に任せようかと思っていたがお前に頼みたいことがある」
「なんですか?」
不思議そうにエミルは訪ねた。
そんな彼女を横目に、ダグラは近くの箱から服のようなものを取り出した。
「これを二人に届けてくれ」
「これは…防具ですか?」
「ああ、研究区画に俺が案を出して作らせ…作ってくれた新作の防具だ。 性能はお墨付きだが、コストがかかるもんで量産はまだ先のはずだったが…」
ダグラは言葉に詰まりながらエミルに話した。
「先に少しだけ作らせたんだ。 届けてくれるか?」
「…はい! すぐに持っていきます!」
「使い方は、この紙に書いてある。 ハイドも知っているはずだ、伝えてくれ」
「わかりました!」
その防具は今までの防具よりも軽く、エミルでも2着持って走れるほどだった。
それを大事そうに抱えてエミルは言った。
「よし、行って来い。 届けたら戻ってくるんだ、甲板は危険になるからな。 それに、ここであいつらの勇姿を見るんだろう?」
「はい、ありがとうございます!」
それがエミルの安全を思って言っていることは彼女にもすぐ分かった。
顔に似合わない心配性に、エミルは少し笑いながらお礼を言った。
「行ってきます!」
「行って来い」
そう言ってエミルは船長室を出た。
ユールとジグは甲板につながる廊下を歩いていた。
「いよいよだな!」
「ははは、何もない可能性のほうが高いだろう。 今から興奮してたら後で冷めるんじゃないか?」
興奮がおさまりきらないといった様子のユールに落ち着いた口調でジグは言った。
「そんな事言うなよ! 久々の発見なんだ、もうちょっと喜んでもいいだろ?」
「ははは。 まぁ、気持ちはわかるが」
不満げに言うユールにジグは少し笑って返した。
しばらく歩いていると二人を呼ぶ声が聞こえた。
「ユール!ジグ!」
「エミル! またあったな、どうした?」
「なにか持っているな」
ユールはエミルに返事をし、ジグはエミルの持っているものに目を向けて言った。
「…はっ、はぁ。 これ! 届けに来たの!」
エミルは息を整えながら、二人に服を渡した。
それは鱗のような表面をしていた。
「これは、防具か? 見たことがないな」
「軽っ!」
「ダグラ船長から、新作の防具だから二人に届けてくれって言われたのよ。 …あ、これに使い方書いてあるらしいわよ」
渡された防具を調べている二人にエミルは紙を渡した。
「どれどれ…」
「なんて書いてあるんだ?」
そんな時、後ろから3人に声がかかった。
「ん? お前らまだそんな所にいたのか?」
「ハイドさん!」
「船長から、これが届いたんです」
追いついて話しかけてきたハイドに二人は答えた。
「それは…。 あぁ、ダグラがせがんで作らせた新しい防具か。 持ってきていたとは、あいつらしいな」
二人の持っている防具を見て、ハイドは笑いながら言った。
「使い方を教えてやろう、貸してみろ」
「知ってるんですか?」
二人から服を受け取りながら言うハイドに、エミルは聞いた。
「ああ、ダグラが研究区画の奴らに無理難題を言っている所に俺もいたからな。 まぁそれは置いといてこれの使い方だが…」
そう言ってハイドは防具を裏返す。
「ここを開けるとコアをいれる場所がある。 コアを入れたら指の所のボタンを押すんだが…もう入っているなら押すだけでいい、やってみろ」
「はい」
「わかりました」
ハイドに言われた二人は人差し指の親指側あたりにあるボタンを押した。
すると服の表面が黒っぽく変化する。
「おお! 黒くなった?」
「硬くなっていますね…それにしては動きやすいですが…」
「そうだ、表面が変化して硬度が上がるが動きはあまり阻害されない。 よくこんなものを作らせたもんだ、 きちんと装備しておけ」
驚く二人に笑いながらハイドは言った。
「はい! エミルもありがとうな!」
「ええ、もう一度言うけど気をつけていきなさいよ!」
「エミルはどうするんだ?」
ユールとジグはお礼を言った後にエミルに尋ねた。
「私は船長室に戻ってこいって言われてるの。 ハイドさん!二人を宜しくお願いします!」
「あぁ、任せろ」
「それじゃあ、またね」
そう言ってエミルは船長室に走り去っていった。
「着れたか? なら行くぞ」
「「はい」」
ハイドは防具を着込んだ二人を見て言った。
そして三人は甲板に向かって進んでいった。




