ハイドの講義
「もうすぐだったか?」
「あれだ!」
ユールは前を指差して言った。
「ハイドさん!」
「お邪魔します」
二人は扉を開けながら言った。
「おお、ユール、ジグ。 来たか」
部屋で装備品の準備をしていたハイドは部屋に入ってきた二人を見て言った。
ハイドはダグラと同じような巨躯に丸めた頭で、体にある傷跡から戦いを生き抜いてきた雰囲気を醸し出していた。
「さっきの砲撃!さすがハイドさん!」
「あぁ、お前らもすぐ出来るようになる」
「本当ですか!」
ハイドの言葉にユールは舞い上がった。
「ハイドさん、あまり甘やかさないでくださいよ」
「なに、嘘は言ってないぞ」
苦笑しながらジグは言うが、ハイドはにやりと返した。
「ところで、ハイドさんがここに居るってことは…」
「ああ、砲台は別のに任せてる。 今はお前らの準備だ」
「ありがとうございます」
ハイドにジグは感謝した。
「ハイドさん! これ持っていくんですか?」
「おお、そうだな。 だがちょっと待て。 まずは講義だ、こっちに来い」
ハイドは騒ぐユールを宥めて部屋の真ん中にある机に呼んだ。
「よし、始めるぞ」
「はい!」
「お願いします」
揃った二人を見てハイドは言った。
「まずこれから回収に行く流れ岩だが…。 これについてはわかるか?」
「はい、島の欠片ですよね?」
「島が崩壊するときや、ネルレイズ等に削られた破片…と聞いています」
ハイドの質問に二人は答えた。
「そうだな、あれは島の切れ端だ。 島ってのはコアで浮かんでいる。 そのコアのエネルギーが尽きたとき、島は崩壊しバラバラになる」
ハイドは握った拳を開きながら言う。
「それが流れ岩だ。基本はな。だが…」
近くの箱からいくつか小型の模型を持ってきて彼は続けた。
「ジグの言った通り、ネルレイズが島を襲うことがある。 よくはわかっていないが島のコアを狙って来るそうだ」
「なるほど。だからさっき船長は、これだけ近づいても動きがないと言った訳ですか」
「どういう事だ?」
小さいネルレイズの模型を持って言うハイドにジグは納得するが、ユールはよく分からないと質問をした。
「つまり、あれだけ近づいても船のコアに反応しなかったという事は、少なくともネルレイズではないと確証を持ったんだろう。 もしそうだったら襲いかかって来るはずだからな」
「なるほど」
ジグの説明にユールは納得した。
「そうだな、あいつらがコアを狙う理由は吸収して自分の糧とするためだと言われている。 ネルレイズもコアで動いているようだからな」
「それじゃあ、船にコアを積んでなかったら狙われないんじゃ?」
ハイドの説明に、ふと疑問を持ったユールが言った。
「ああ、だがコアを積んでいない小型の帆船が襲われた事例もある。 基本的にあいつらは見境なく襲うが、特にコアには反応する…と言う事なんだろう」
「うーん、そうかぁ」
ハイドの言葉に残念そうにユールは返事をした。
「襲われる理由がわかれば、大分暮らしやすくなりそうだけどなぁ」
「襲われなくなっても生活は良くはならないんじゃないか?」
「なんで?」
そう言うジグにユールは聞いた。
「俺達の生活はネルレイズの素材に殆ど依存しているからな。 明かりも料理の火も、船だってそうだ。 これが急になくなったら困るだろう」
「あぁ、言われてみればそうだな…。 じゃあさ、必要になったら小さいのを狩りに行くとか…?」
ジグにユールは提案した。
「無理だろう。 今でさえコアに引き寄せられたネルレイズを狩っているんだ。 海の底にいるあいつらをどう捕まえる?」
「う…、そっかぁ」
そう返すジグの言葉にユールはうなだれた。
「はっはっは、そうだな。 本国の研究区画のやつらが、新しい武器でも開発してくれれば狩りも出来るようになるかもな」
二人の会話に笑いながらハイドは言った。




