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世界はもう同じではない


空は、相変わらず輝いていた。


青く。


何事もなかったかのように。


だが、地上は……


まるで別世界だった。


血。


悲鳴。


無惨に砕かれた死体。


人々は行く当てもなく走り回り、互いにつまずき、倒れ……立ち上がり……そして、また倒れていく。


混沌がすべてを支配していた。


レンは立っていた。


微動だにせず。


全身を血に染めて。


目の前には……


怪物の死体。


そして、足元には……


何もなかった。


かつてソウタがいた場所には……


ただ、空白だけが残されていた。


レンの手が震えた。


恐怖からではない。


痛みからでもない。


ただ……


もう、何も感じなかったからだ。


「……」


叫ばなかった。


泣かなかった。


何も言わなかった。


頭の中は真っ白だった。


まるで脳が……余計なものをすべて切り捨てたかのように。


(これから、どうすればいい?)


ある音が、レンを虚無から引き戻した。


何かが空から落ちてきた。


一つ。


また一つ。


さらに一つ。


そして、もう一つ。


「な、なんなんだよ、これは!?」


「まだ降ってくるぞ!」


「逃げろ!」


怪物たちが雨のように降り注いでいた。


地面に激突した衝撃で人々を押し潰すものもいれば、着地するとすぐに起き上がり……獲物を狩り始めるものもいた。


レンは顔を上げた。


その目は……空っぽだった。


「……」


ゆっくりと首を回す。


観察する。


分析する。


(ここにいたら……死ぬ。)


単純な結論。


余計な感情はない。


冷徹な判断だった。


レンは動き出した。


本能に従ったわけではない。


絶望に駆られたわけでもない。


ただ、論理に従った。


走る。


目の前に倒れ込んできた人間を避ける。


死体を飛び越える。


衝突した二台の車の間をすり抜ける。


背後で怪物が咆哮した。


レンは振り返らなかった。


(振り返るだけ時間の無駄だ。)


角を曲がる。


路地裏へと飛び込む。


暗い。


狭い。


安全だ。


……そう思った。


そこには、怪物がいた。


犬と人間を無理やり混ぜ合わせたような、醜悪な姿。


顎は不自然なほど垂れ下がり、


その目には……何の光もなかった。


怪物がレンを見つけた。


静寂。


そして――


飛びかかってきた。


レンは迷わなかった。


地面に落ちていた金属パイプを掴む。


そして、振り下ろす。


ガキッ!


動きはぎこちなかった。


完璧とは程遠い。


それでも、攻撃の軌道を逸らすには十分だった。


怪物が爪を振るう。


レンは後退した。


(こいつのほうが速い。)


分析する。


(だが……動きは読める。)


怪物が再び襲いかかる。


レンは待った。


一秒。


二秒。


そして、最後の瞬間――


身をかわした。


爪が頬をかすめる。


その隙に、レンは……


金属パイプを怪物の首に突き立てた。


湿った、不快な音。


怪物の体が激しく揺れる。


痙攣する。


そして、倒れた。


死んだ。


静寂。


レンは荒い息をしていた。


それでも、その顔に感情は浮かんでいなかった。


自分の手を見る。


血。


また、血だ。


「……」


そのとき――


声が聞こえた。


頭の中から。


【敵を撃破しました。】


【条件を満たしました。】


【システムを初期化しています……】


レンが顔を上げる。


目の前に……


画面が現れた。


透明で。


現実離れした画面。


【参加者へようこそ。】


【ゲームが始まりました。】


レンは黙ってそれを見つめていた。


「……」


そして……


かすかに笑った。


嬉しかったからではない。


ようやく理解したからだ。


(なるほど……)


(今は、こういう仕組みなのか。)


背後では……


悲鳴が続いていた。


世界は崩壊していく。


だが、レンは……


もはや、その混沌の一部ではなかった。


今や……


彼はゲームの一部だった。

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