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第6話 戻る条件は、そこにはありません

翌朝、ドランが俺の盾を持ち上げた。

縁の一部が、僅かに曲がっている。


「でかいものを返したな」

「斧を二本」

「次は、この角へまともに乗せるな。強い防御の加護でも、板の形は持ち手まで守らん」


俺は頷いた。

〈返盾〉は、持つ盾へ働く。

触れた場所を間違えれば、膜が出るより先に物が傷むこともある。

持ち主の防御力と、道具の寿命は、同じ数字ではない。


ギルドへ報酬を取りに行くと、マーヤが金額を読み上げた。

売った鉱石、騎士の核、調査の報告。

そこから道具と薬代を引き、残りを三つへ分ける。


ノノは紙を確かめ、その場で署名した。

リディアも同じように受け取る。

俺だけが金を数えるのを待ってくれた。


「次の宿代、足りる?」


ノノに聞かれ、俺は頷いた。


「もう、しばらく足りる」

「よかった。荷物が軽くなりそうな顔した」


俺たちは、昼の予定を別々にした。

ノノは弓の店へ、リディアは魔術書の貸し出し所へ。

俺は盾を取りに、もう一度鍛冶場へ向かった。


その途中、ガルドが待っていた。

後ろに、エルメと治療役のセラがいる。


「レン。十層を、三人で通ったらしいな」

「通った」

「戻ってこい。さすがに長く勤めた者へ、言いすぎた」


俺は足を止めた。

ガルドは、いつもの上等な剣を持っていた。

鎧も、磨かれている。

ただ、エルメの袖には新しい包帯が巻かれていた。


彼らは二十層で、以前より魔力と薬を使ったという。

俺の代わりに入れた攻撃術師は、自分を守る役は引き受けていなかった。

もちろん、最初からそういう契約だったのだろう。


「戻れば、取り分は増やす。六枚を、八枚へ」


ガルドが言った。

俺は首を振った。


「元の取り分へ二枚足す話は、していない。誰のために壊れた道具か、そういう話をした」

「細かいことを言うな。俺が勝たせてきたのも事実だ」


その言葉で、返事が決まった。

今の二人とは、戦う前に仕事を分けている。

誰かが守る時には、誰かがその間を作る。

終わったら、帰れるか確かめる。


「新しい仲間と、続ける」


ガルドの顔が固くなった。


「あの女の魔術が強いだけだろう。お前は昔から、誰かの後ろへ付いていた」


俺は頷いた。


「リディアは強い。ノノも、俺の知らない道を見つける。二人がいるから、先へ行ける」


言い訳には、聞こえなかったらしい。

ガルドは一度口を開け、それから閉じた。


エルメが、俺の袖を引きかけた。

俺が振り返ると、彼は自分で手を下ろした。


「この前は、何も言えなかった」


それだけ言った。

俺は、彼の顔を見た。

許せと言われたわけではない。

俺から大きな返事を用意する必要もなかった。


「覚えてる」


エルメが頷いた。

俺は鍛冶場へ向かった。


ドランは、盾を卓へ置いていた。

端の曲がりは直り、持ち手が少し広くなっている。


「身体の向きが変わった。今の歩き方なら、こっちで持て」


俺は新しい位置を握った。

腕を動かしても、革が同じ場所だけへ食い込まない。


鍛冶場を出ると、リディアが近くの店で昼食を選んでいた。

彼女は俺に気づき、袋を持ち上げた。


「盾は?」

「まだ、働ける」

「持ち主も?」


俺は笑った。


「少しずつ、いい働き方を覚えている」


彼女が、温かい包みを一つ渡した。

その中身は、昼飯代として、あとで俺が払った。

奢るかどうかも、自分たちで決められた。

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