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第20話 最下層、漆黒の王

五十層の扉は、広間のどれより大きかった。

中央に王冠の印。

その下に、三つの小さな円が並んでいる。

赤、青、白。


ノノが、扉の端を確かめた。

触れると攻撃される継ぎ目はない。

俺たちは内側を覗き、戻る戸が閉じないことを確認した。


広間の奥に、漆黒の甲冑が立っていた。

人なら十人分を重ねた高さだ。

頭の冠から、細い光が天井へ伸びている。

腕には砲口。

胸の前には、黒い盾が三枚、重なっていた。


漆黒の王。

ギルドの資料にあった、最下層の守護者だった。


俺が一歩、入った。

足の下に、金属の線が光る。

右の腕がゆっくり上がり、砲口が赤くなった。


火の弾が来る。

大きいが、まだ返せる。

俺は盾を斜めに出し、甲冑の胸へ戻した。


炎が、黒い盾へ当たった。

表面に、赤い円が一つ現れる。

だが、盾は割れなかった。


次に、左の砲口が青くなる。

リディアが氷の板を出す。

板が砕けるほどの冷たい光が通り、俺は残る一発を返した。


今度は、青い円。

胸の盾が、僅かに横へ開く。

その後ろに、淡い金の核が見えた。


「属性を、合わせている」


リディアが言った。

敵は返った攻撃を無傷で受け止めるわけではない。

ただ、核を守る盾が、受ける力を別の場所へ流している。

まだ、それ以上はわからなかった。


白い砲口が、肩の上へ開く。

細い光が、天井へ伸びた。


ノノの耳が、伏せられた。


「床、全部鳴ってる!」


俺は上を見た。

白い光が天井で広がり、雨のように落ち始める。

一枚の盾へ、まとまって来ない。


「出る!」


俺が呼び、リディアが広い氷の屋根を出した。

光が屋根へ当たり、白い欠片が散る。

ノノが扉の脇へ矢を打ち、帰る向きを示した。


俺たちは、来た戸へ走った。

盾を頭の上へ置く。

小さい一撃なら受けられるが、全部返そうとはしなかった。

ノノが敷居を越え、リディアが続いた。

俺も外へ出る。


広間の光が、敷居で止まった。

漆黒の王は、扉の外へ出てこなかった。

守る場所が決まっている、遺跡の衛兵なのだろう。


俺は盾を壁へ置いた。

腕が、深く疲れている。

二度の反射と、降ってきた光を受けた分だ。


リディアも杖を置いた。

作った氷の屋根は、もうない。

三人とも戻れたが、同じまま入れば、次は帰れないかもしれない。


ノノが扉の円を指した。

赤い所と青い所が、短く光った跡を残している。

白い所だけは暗い。


俺たちは、見た順番を紙へ描いた。

赤を返す。青を返す。胸の盾が動く。

白い光は、天井へ出る。


「天井へ届く前なら、一つの線です」


リディアが言った。


「上の砲口から、そこへ行く間は」


俺は、扉の内側の高い段を見た。

盾を上へ向ければ、届くかもしれない。

ただし、高い所から、降りる道も要る。


ノノが別の頁へ、段の形を書いた。


「こっちは私が見る。あの線へ近づく時、目を向けられる場所も確かめたい」


俺たちは、その日にもう一度入らなかった。

四十九層の部屋へ戻り、薬と食べ物の残りを数える。

二日休み、準備を試し、それから挑む。

撤退したから、選べる予定だった。


俺は寝床へ座った。

最難関の最下層へ、確かに足を置いた。

まだ、勝ってはいない。


リディアが横へ座り、俺の手を取った。


「次の道を、作りましょう」


俺は頷いた。

あの王が持つ大魔法を、どこへ返すか。

三人で、紙の上へ道を一本ずつ足した。

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