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第15話 勇者が壊した、閉じた道

三十七層の分岐へ着いた時、俺は鉄の焦げる匂いを嗅いだ。

ノノが耳を上げ、足を止める。


「奥の壁の音、変わってる」


閉じた旧通路の前に、暁の剣がいた。

ガルドが剣を下げ、斥候バーンが、割れた台座を見ている。

エルメの代わりに入った攻撃術師もいた。

エルメは、まだ地上で療養中のはずだ。


格子の中央を通っていた、光の線が切れていた。

台座の端には、ガルドの剣でついたばかりの傷がある。


「何をした」


俺が聞くと、ガルドは俺たちを見た。


「鉱脈への道を開けた。塞がれたまま、百年も誰かの許可を待つ必要はない」


俺は割れた台座を見た。

旧通路へ通じる設備だが、格子だけを動かすものかは、まだ解けていないと報告にあった。

触る前に、専門の調査が要る場所だ。


「後ろの道は、確認したのか」


答えが来る前に、床へ赤い線が走った。

分岐の天井から、厚い戸が落ちる。


俺はノノの腕を引き、二人で戸の手前へ滑り込んだ。

リディアは、反対側に残った。

ガルドたちも、向こうにいる。


石の戸が、通路を断った。


その奥で、低い音がする。

赤い鎧の番人が、次々に目覚めた。

旧通路を守るための機関が、切れた台座から別の働きへ移ったらしい。


「リディア!」


俺が呼ぶと、戸の向こうから声が来た。


「怪我はありません。ほかに、先へ入っていた隊がいます!」


石の隙間から、青い炎が見えた。

彼女が最初の番人を止めたのだろう。

その後ろで、別の人の叫びが重なる。


ノノはすぐに、壁の端を調べ始めた。

閉じた戸の下には、通風の穴がある。

人が通るには小さい。

ただ、横へ伸びた古い溝が、旧道の地図と重なっていた。


「横の保守路。こっちから回れそう。でも、途中の板が落ちてるかもしれない」


彼女は自信のない部分も、声にした。

俺は頷き、ギルドから借りた合図灯を割った。

休憩区画へ異常を知らせる灯りだ。

何が起きたかまでは、伝わらない。


後ろから来た別の隊へ、状況を話した。

二人が三十五層へ戻り、救助と専門家を呼んでくれる。

俺とノノは、今入れる保守路を探す。


石戸の向こうで、ガルドの剣が鳴った。

彼は敵を斬れる。

だが、入っていた人たちまで守りながら、増え続ける番人へ剣を回すのは難しい。


俺は、戸へ声を掛けた。


「外へ回る。人を、今の入口側へ集めてくれ!」


ガルドの声が返った。


「そんな細い道へ、何人通すつもりだ!」

「一人ずつだ。誰を通すかは、こっちで確かめる」


ノノが、小さい戸を開けた。

暗い通路に、冷たい風が流れる。

俺は盾を身体へ寄せ、先へ入った。


怒りはあった。

割れた台座を見た瞬間から、腹の底へ残っている。

それは、向こうの人を残して帰る理由にはならなかった。


ノノが、俺の肩へ触れた。


「足元、先に見る。速く歩かないで」


俺は止まった。

彼女の灯りが、欠けた床を照らす。

一人では、最初の穴へ落ちていた。

俺たちは、音のする部屋へ、少しずつ近づいた。

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