第12話 A級の免許に、零が書かれる
上級の審査では、個人の技能と、組での戦い方を確かめられた。
測定板へ手を置くと、攻撃力は零。
防御力と魔力も、前と同じ数字が出た。
係員は零の欄を見たが、そこで試験を終えなかった。
俺へ盾を持たせ、返せる攻撃の重さを何段階か変える。
返せないものを出された時は、避けるか、助けを頼めるかも見た。
広い熱風を受けた時、俺は手を下ろした。
「これは一撃として載せられません。氷の遮蔽を頼みます」
リディアが、後ろの確認区画で頷いた。
別の試験では、ノノが罠の見えない道を調べる。
足を止めた理由を、自分の言葉で説明した。
俺たちは、A級の探索許可を得た。
免許には、攻撃力零の文字が、そのまま残った。
都市の最高難度、王冠の迷宮。
五十層の守護者を倒し、最下層の宝庫へ入った者は、まだいない。
別の上級隊が四十八層まで下りたという記録はある。
その人たちの苦労も、報告には詳しく残っていた。
俺たちはギルドの資料室で、最下層の目的を話し合った。
宝庫には〈灯種〉と呼ばれる術具がある。
迷宮の外へ出しても、周囲の魔力を一定の強さへ整えるものだという。
都市の灯りや、工房の術炉へ使える可能性がある。
どれだけ使えるかは、実物を調べなければわからない。
それでも、ギルドは回収の依頼に、高い報酬を付けていた。
俺が一年働いても、普通には貯められない額だった。
「これを取ったら、何に使う?」
ノノが、俺を見た。
俺は少し考えて、答えた。
「家を借りたい。長く住める所。盾と靴を、落ち着いて置ける所がいい」
笑われるかと思った。
ノノは頷いた。
「私は、地図の仕事用の部屋。写しを広げると、今の宿は寝る所がなくなる」
リディアは、窓の外へ目を向けた。
「私は、魔術を試せる工房。隊の許可を待たずに、自分の術を調べられる場所がほしいです」
三人とも、世界を救うとは言わなかった。
俺たちの暮らしを、少し先へ進めるための金だった。
ドランへ話すと、彼は新しい盾の見積もりを出した。
古い盾の芯は、三十層で限界に近づいていた。
木と金属を重ね、縁へ魔力の通る銀を入れる。
反射の威力を増やす盾ではない。
受ける場所を広くし、腕へ掛かる力を分けるための道具だ。
今までの稼ぎから、経費として買った。
三人の署名が並ぶ。
使うのは俺だが、三人で先へ進むための道具だった。
「隊の名前も、決めておく?」
ノノが言った。
個人名を三つ書くだけでも登録はできるが、報告が増えると名がある方が探しやすい。
リディアが新しい盾を見て、口を開いた。
「銀の盾、はどうでしょう」
俺は彼女を見た。
「俺の持ち物の名前になるぞ」
「守る場所は、三人で作っていますから」
ノノも頷いた。
「覚えやすい。銀は、分けやすいし」
彼女の理由を聞いて、俺は笑った。
登録票へ〈銀の盾〉と書いた。
攻撃力零の俺が、前へ立つ隊だ。
ノノが地図を広げ、リディアが次の術を用意する。
俺は新しい盾を持ち上げた。
古いものより重い。
三人の名前が、持ち手の内側へ小さく刻まれていた。




