第11話 二つの砲口、一枚の盾
三十層の扉へ着いたのは、探索を始めて二か月目の終わりだった。
途中で一度、盾の芯へひびが入り、地上へ戻った。
リディアも魔力を使いすぎた日があり、三人で予定を延ばした。
近道だけを続けて下りたわけではない。
三十層の番人は、二つの砲口を持つ石の機関だった。
左右へ長い腕があり、どちらも、同じ時刻に白くなる。
俺は、扉の隙間から一度だけ、光の間隔を数えた。
二発が、同時に来る。
一枚の盾では、返せない。
「一つを、氷で止めます」
リディアが言った。
俺は砲口の大きさを見て、首を振った。
「止め続けると、君の魔力が先になくなる」
彼女は頷いた。
受ける量を分ければいいと思ったが、消せる量も有限だ。
練習場ではできても、本番の重さは違う。
ノノが、左右の腕の根元を指した。
床に円い溝があり、機関はその上をゆっくり回っている。
反対側の壁に、古い砲撃の跡があった。
「向こうへ回れる所、ある。片側が私を追ったら、同じ方を向かなくなる」
「避けるだけの広さは?」
「二回なら、ある。その先は、無理」
俺は頷いた。
二回まで。それを三回に増やす話は、しなかった。
広間へ入る。
リディアが、床へ小さな炎を三つ走らせた。
機関の片側が彼女を向き、もう片側がノノを追う。
ノノの矢が、右の腕へ当たった。
二つの砲口が光る。
左の一発は、俺へ。
右の一発は、回廊の柱へ。
ノノは既に、その陰へ入っていた。
俺は左を返した。
右の砲口、その縁へ。
石が欠け、光の線が斜めに伸びる。
機関が、回転を速めた。
ノノの前の柱が、次の砲撃で砕けた。
彼女は決めた二つ目の陰へ走る。
リディアの氷が、俺の足元へ高い板を作った。
砲口の高さと盾の高さが、近くなる。
返す時に肩を大きく上げずに済む。
二度目の光が来た。
俺は、欠けた砲口の奥へ返した。
片側の腕が、内部から崩れた。
ノノはすぐに指を二本立てた。
止まる。
俺はリディアへ声を掛け、彼女も大きい術を切った。
残る砲口が、俺へ向く。
今は一発ずつしか、出せない。
俺は盾を立て、番人の中央へ向けた。
砲口から出た白い光が、そのまま腹の核へ戻る。
三度目の反射で、機関が止まった。
腕が、落ちた。
ノノは砕けた柱から出てきた。
外套の端が、少し焦げている。
俺は、彼女へ近づいた。
「二回で終わった」
「二回って、約束したからね」
彼女は耳を上げ、俺の盾を軽く叩いた。
リディアも、杖を身体の横へ下ろした。
三十層の刻印が、免許へ付いた。
ここから下は、上級の許可が要る。
リディアは持っているが、俺とノノは審査を受ける。
俺たちは機関の絵を描き、どの攻撃を誰が受け、どこへ避けたか、書いた。
止めると決めた回数も、残した。
地上へ戻ると、マーヤが俺の盾と免許を見比べた。
「三十層の証明ですね。上級審査の日程を取りましょう」
俺は、測定板の零を思い出した。
次の審査でも、攻撃力は変わらないだろう。
それでも、俺がここまで歩いたことは、刻印に残っていた。




