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第10話 元仲間の怪我と、支払われなかった仕事

二十層の報告を出した日、ギルドの診療所から俺へ連絡が来た。

エルメが、俺に話したいと言っている。


腕の魔術疲労で、しばらく術を控えるよう言われたらしい。

骨が折れたわけではなかった。

ただ、手を伸ばす時に指が震え、彼はそれを隠そうと袖を引いた。


「来てくれて、ありがとう」


俺はベッド脇へ座った。

セラが、廊下から水を運んでくる。

暁の剣の治療役は、以前と同じ鞄を提げていた。

中の薬が、随分減っている。


「二十層は通った。でも、その後で、炎を使いすぎた」


エルメは言った。

俺が盾を出していた時、彼は術を用意するために止まれた。

今は攻撃をしながら、自分の前へ防壁も作る。

一度出すたび、次の威力が落ちる。


「ガルドには、練習すればできると言われた。できる人はいると思う。でも、今の僕には、続けられなかった」


俺は頷いた。

この部屋へ来てから、ガルドの悪口はまだ出ていない。

本人の身体で起きたことを、彼は話していた。


セラが、卓へ薬代の紙を置いた。


「私たちも、それぞれ自分の道具と薬を払っていたの。レンの盾代だけ、気にしていなかった」


彼女は俺を見た。


「盾を受けてくれた後なら、怪我の薬を買わなくて済んでいた。それを、私たちの分に数えたことがなかった」


俺は、紙へ目を落とした。

今の高い薬代から、過去の盾代が見えたのだろう。

それは、俺が追放される前に気づいてほしかったことだった。


「話してくれて、ありがとう。だが、戻るつもりはない」


二人が、同時に頷いた。

エルメは枕元から、古い配分表を出した。


「ガルドが、払うと言っていた危険手当の欄。僕も見ていた。まだ清算されていない分があると思う」


俺は紙を受け取った。

通常の取り分とは別に、大きな盾の損傷が出た時の補填が、隊の規約にはあった。

毎回「帰還してまとめて」と言われ、そのまま次へ行っていた。

俺の領収書と照らせば、どの分が残るか確かめられる。


今の仲間と分ける金ではない。

俺が、過去にした仕事の話だった。


ギルドへ、配分の確認を申し込んだ。

マーヤは俺の領収書と規約を受け取り、双方へ説明を求める手続きを始めた。

ガルドが嫌いだから、多く取り返せるわけではない。

規約に書かれた分だけを、確認する。


宿へ戻ると、ノノが新しい地図を折っていた。

俺が診療所へ行ったことを話すと、彼女は紙を置いた。


「話せた?」

「話せた。戻らないことも」

「よかった」


リディアは、俺の横へ椅子を寄せた。


「次の探索は、予定どおりで大丈夫ですか」


俺は考えてから、頷いた。

古い隊へ向かって戦うために、迷宮へ入るつもりはない。

三人で、その先へ進みたい。


「大丈夫。明日は、君の氷を一緒に試したい」


彼女が頷いた。


「なら、練習場で。攻撃を小さくする方の実験です」


ノノが、弓へ新しい糸を通した。


「私は、大きい音の中で使う合図を増やす。指で一つ、引く。二つ、止まる」


俺は、その指を覚えた。

誰かの怪我を、すぐには治せない。

けれど明日の怪我を減らす準備は、今、できた。

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