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第5話 公園にいる二人

前回のあらすじ


一週間の休みの後に僕はいつもの様に家の外で待ってくれている楓の所まで行き、いつもの様に学校に行こうとしたが「(いつもの様にって・・・どんなだった?)」と思い、楓との距離感が分からなくなった。そして、楓を怒らせてしまった…。

僕は、疲れて、公園のベンチに座り俯いていた。

「・・・や、山田くん?」

僕の名前を小さな声で呼んだのは、一週間前に助けた髪の長い女の花子だった。


 「花子か・・」


僕の正面には花子がいた。


「・・・・」


正面と言っても、少し離れていた。気まずさを感じる位の距離感だった。


「・・・・・」

「・・・・・」


あ~、どうしよ。どんな感じで会話の初めを切り出そうか。


「「あっ」」


「あ、どうぞ」


「い、いえ!、ど、どうぞ」


花子と僕は、お互いに手の平を差し出した。花子は目をキョロキョロとさせて気まずそうにしているのが花子の長い前髪の奥に見えた。

 ベンチに座っている僕の目の高さにほぼ合う位に花子の頭はあったのでよく見えた。


「じゃ、僕から」


花子はあせあせとしながら無言で僕に掌を差し出した。


「花子ってこの辺に住んでるの?」


「あっ、、い、いえ。住んでる家は反対側にあります・・・。」


「へぇ~、じゃ―――!」


僕は反射的に言おうとしている言葉を途中で止めた。

 

 危うく地雷を踏む所だった。


「そうなんだ~」


僕は軽く笑顔を作りそう言葉を返した。


花子は僕の顔を見るなり分かりやすく、ほっと一息つき安心した表情をしていた。


 そうだよな。花子の設定…、人の特徴を設定っていうのはちょっとアレだが、花子を見た時に思った第一印象は「(いじめられてそ~)」だった。

 そして、あの転校生のカナタと確実に関わっていくタイプだ。つまり、クラスの個性が強い女達と一緒でヒロイン枠だろうな。


つまり、今の花子の現状は、゛イジメられる途中゛という事になる。

 花子が家と反対側のこの公園にいるという事は、恐らくだが、いや、確実に学校に行きたくないからだ。

 教室に入りたくないのだろう、教室に入れば花子はいじめっ子にイジリと言う名のイジメを受ける事になるのだろう。

 だから、遅刻ギリギリまでこの公園で時間を潰しているという…事だろうな。


「花子ってさ」


僕は脳内のテンションが下がる様な花子のイメージを消し、自分の顔に笑顔を張り付けた。


「な、なんですか?」


花子はまたもやあせあせとし、僕から目線をチラチラと合わせては逸らすを繰り返してながら、手をもじもじとさせていた。


「部活はなんでしないの?。美術の授業とかもあるから、美術部とかがほっとかない様な気もするけど?」


「い、いえ。私のえ、絵は上手じゃないので・・・」


花子は目を下に向け、「はい」と申し訳ない感じで返事をした。誰に向けての返事だろうか。

 花子の目のクマがちらりと見えた。


僕は、顔を笑顔のままをキープした。


「え~~!!そんな事ないよ~!!絵とか本当に上手だよ!!」


「あ!、い、いえ、そんな。うへへへっ。」


花子は否定の言葉を言ってはいるが、言葉の最後には必ず笑っていてあながち嬉しそうだった。


そりゃ、そうだ。これは全身全霊でしているお膳立てなんだから。

 

 どうせ、主人公のカナタが花子を助けるだろうが、花子の現状は僕が想像するよりも辛いモノだろう。

お世辞くらいはしてもいい筈だ、褒められるという経験は嬉しいはずだ。絵が上手いのは事実だし。


「あ、でもでも、別に自分の絵が、へ、下手だから、入らないとかそういうのじゃ、ないんです」


花子は少しふにゃとした笑みを浮かべながら、指をもじもじとさせていた。

 花子側からの意見は、初めてだな。緊張がほぐれたかな?


「え、じゃあなんで?」


僕は興味津々という感じで訊き返した。


「あ、あの。び、美術部の人って、な、なんか、お、オタクぽくって・・・」


それは君もだろう、と思ったがそんな事言ったら可哀そうなので話をそのまま聞いていた。


「わ、私。こ、こういう見た目だけど、あ、あまりアニメとか分からなくて、」


花子は自分の髪を軽く持ち上げながら、小さな声でそう言った。場を壊したくないって事か…。


「へぇ~、そうなんだ~」


僕は感心したように頷いた。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


ヤバい、会話が途切れてしまった。考えてみれば、僕は演技は上手くても会話とかは全然上手くないんだよな…。


「・・・あ、あの」


気まずい沈黙を破ったのは、花子の方だった。


「なに?」


「や、山田くんは、なんでここにいるんです?」


「!!」


聞かれたくない質問をされてしまった。

 どうしようか。いっその事本当の事を言ってしまうか?。

「気になってる幼馴染の女子が、好きな人出来たみたいで悲しいんだよねー」、心の中で言ってみたがバカみたいだな。

 というより、こんな理由でこの公園に来た僕とイジメられてる花子がこの公園に来ている理由は、天秤にかけると絶対に僕の理由の方が投石機の石の様に宙に飛んでいくだろう。

 まぁ、花子に失礼という事だ。


「う~ん。なんとなく?」


「・・・ほ、ほんとです?」


花子は心配そうな声で僕にそう訊き返した。そんな疑うような眼差しを向けられたのは意外だった。僕の顔の演技は自分でも言うが俳優顔負けでめちゃ上手い気がする、筈だ…。


「え!、えぇ、本当にそんな理由なんだけどなぁ~、はは・・・・」


「・・・あ、あの」


「な、な、なに??」


思わず、言葉を二重に口にしてしまう。焦るな、焦るな…。


「あ、あの・・・じゃあ、な、なんで、長い間、俯いていたんです?」


俯いて。そうか、僕が俯いているから花子は心配の声をかけていたんだ。

 変な心配させちゃたな…、本当にくだらない理由なんだけどな。


「い、いや~、インフル明けだから学校に行くのが憂鬱でね~はは・・・」


自分で言うのもアレだが、即座に言い理由を思いついた。少し、花子の地雷を踏んでいる感はあるが、良い理由だろう。


「で、でも、10分ぐらい、う、俯いていましたよ?」


「え!、10分も俯いていたの!僕!?」


花子は僕の驚いた声に体をビクっとさせながらコクコクッと頷いた。


そんなに悲しんでいたのか…。女々しすぎだろ、僕。


「ま、マジか。・・・アレ?、って事は僕たち遅刻じゃね?」


「あ、い、いえ。今日は、学校、でな、なにかがある、らしくて、9時30登校にな、なってます」


「あ~そう?。良かった~」


花子は僕の顔をじっと見ながら口を開いた。


「あ、あの、だ、大丈夫なんです?」


心配そうな声を再度僕にかけてきた。こんな可哀そうな子に可哀そうがられるってなんかヤだな・・・。


 僕は顔をニコッとさせた。


「うん!。もう大丈夫だよ!」


花子は僕の表情を見ると、安心したような顔で「よかった」と胸をなで下した。


「ッ・・・」


優しいな・・・。


「あ、隣座る?。ずっと立ってたらキツイでしょ?」


「え、いえ、いえ!・・・・座ります…」


最初の否定は何だ?。花子は慎重に僕の隣に座った。もしかして、嫌だったかな?、体重も軽そうだから立ちっぱなしでも意外と辛くないのかもな。


「あ、あの、な、なんとなくって言ったじゃないですか?」


「え、うん」


何の事だ?


「分かります。わ、私もこの公園に初めて来たときはなんとなくだったんです。」


「へぇ~」


花子は隣に座ると、まるで妹の様に見える。まぁ、妹はいないが。

 僕と同じ学校の制服を着ていなければ、親子にだって見えるかもしれないな。


「こ、この公園っていいですよね、ひ、人がいなくて」


わ~陰キャな理由だな~。


でも、そう言った花子の顔は微笑んでいた。花子は僕の方を向いた、見上げたと言った方が正しいだろう。

 その時、花子の長い前髪が鼻で分かれ顔の輪郭が見えた。 

やっぱり、可愛いな。と思うと同時に目のクマがすごいと思った。

 クマがチャームポイントのキャラはアニメや創作物にいるが、花子の目のクマは心配になる。


「花子っていつも何時に寝てるの?」


この質問を平然にした後に、花子は目をあからさまに下に向け僕から見えないようにした。


「あ!いや、そういう事じゃなくて!。目にクマがあるから寝てないのかな~ってそういうなんの変哲もない質問だよ!」


変なとこに地雷があったか・・・。


「・・・・あ、11時には寝てるんですけど、寝付けないんですよ・・・」


「そ、そうなんだ」


そこからは沈黙がしばらく続いた。


だが、気まずいとかはならなかった。


花子が言った「この公園は人がいなくていいですよね」の意味が分かった。


なるほど、絵になっている。


朝の時間なのに、車通りも少なく、マラソンをしている人や公園内に入る人もいない。

 春のこの季節に咲く桜の葉が、ベンチの横にから流れているのに気づいた。

こんなに綺麗な桜があったのか・・・。見えてなかったな…。


 まるで、この公園は世界と区切られている様なそんな気さえした。


「・・・・・」


風も気持ちがいいな。


「あ、あの・・・」


「うん?」


花子が僕の横から僕の顔を伺うように顔を出した。


「あのこれ、良かったら・・・」


花子の手を見ると、おしるこの缶が握られていた。


「あ、や、山田くんが俯いたから、自販機で、買っておいたんです・・」


「・・・ありがとう!。じゃあ」


僕は花子の小さい手からおしるこの缶の上部分を掴んだ、そして、花子は手を離した。


この、おしるこの缶はあったか~いだったんだろうけど、時間が経ちすぎて生ぬるくなっていた。


僕はすぐに缶の口をあけ、一飲みした。


「あ~上手いね~」


僕は笑顔で花子に向かってそう言った。花子は照れくそうにしながら目をキョロキョロとさせていた。


「あ、あの…も、もう時間です」


「え、なんの?」


「あ、もう公園を出て歩かないと遅れちゃいます…」


花子はベンチから立ち、横に置いていたスクールバックを手にとった。サイズが合っていないな。


「あ、そうか。もうそんな時間か」


「じゃあ、これで」


「え、学校に行くんでしょ?」


「あ、はい・・」


「こっちからの方が近いよ」


僕はいつも楓と歩いている通学路に指を指した。


僕もベンチから立ち上がり、地面に置いていたスクールバックを手に取った。


「一緒に行こうよ、学校まで。」


花子は髪をぶわっとさせ、その場であたふたとしていた。しまった、困らせる事を言ってしまったか・・・。


「あ、い、いえ・・・」


「あ、そう?」


「!!・・・い、いえ。や、山田くんが良いなら、い、一緒に、い、行きます・・・」


花子は顔を下に向けながらそう言った。髪が長すぎて花子の顔が見えない、もしかして、無理な事言ってしまったか・・・。


僕はやってしまったと思って、少し空を向いた。


その際に、ベンチの隣の桜の木が目に入った。


「あ、あの絵って、この桜の木か」


僕は中庭で見た、花子のスケッチブックに描かれていた桜の絵が中庭にある大きな桜だと思っていたが、空を見上げた際に桜も見上げる形になったので、そのおかげで気づいた。


「え!、え、あ、あ。わ、分かるんですか?」


花子は少し僕に距離を詰めて聞いてきた。


「あ、なんとなくね」


「す、すごいですね・・・」


花子の目が少しキラッとしたのが長い前髪の奥から見えた。


「花子は凄いね。中庭の桜とは、比べ物にならないほどに細い桜の木なのに、あんなに迫力がある様にかけるなんて」


その時、瞬きしてしまう様な強い風が吹いた。


「わっ」


「・・・・いえ、この桜は細くなんてありません。一番強いんですよ。」


強い風が舞った時に、花子の長い髪も風で上へ舞い上がったのが見えた。


僕が瞬きを止め目を開けた時には、花子は真っすぐな綺麗な姿勢で立っていて桜を見ていた。


花子はクマが目立つ目でにこっと笑っていた。


「」


「・・・・・」


僕は呆然としてしまった。花子は僕が思うより、僕よりも―――


「あっ、髪が!」


花子はハッとしたように風でなびいた髪を下に手で落としていた。


「や、山田くん・・・み、見ました?」


「え、いや、桜の木見てたから花子の顔は見えなかったよ」


「よ、良かったです・・・」


花子は風が止んだ後に、髪を自分の手で下に落とし直していた。こだわりがあるのだろうな・・・。


それにしても、唐突に変な事を思ってしまった。


僕は顎に手を添え、首を傾げた。


「や、山田くん?、ど、どうかしました?」


僕と同じく首を傾げる花子を見ながら、僕はどうでもいい事を気になっていた。


山田くんっていうのに、タメ口ではないのだな・・・。本当にどうでもいいことだ。

 なんか、不良マンガとかで先輩の事を「OOくん」と言うのは見たことあるが、そういう事だろうか?

いや、マジでどうでもいいから、もうこの事を考えることは止めよう。


僕は花子の隣に付いた。


「じゃあ、行くか」


「う、うん」


花子は顔を隠すように下に向けた。え、もしかして嫌だったかな?。

 まぁ、僕は気まずくないから別にいいか・・・。


公園の外に出て、僕は道路のそばをいつもの様に歩いていた。


「あ、あの、や、山田くんは、部活とかしてないんですか?」


「してないよ。あ~、考えてみたら小中もしたことないな~」


「え、い、いがい(意外)。や、山田くん、強いから空手とかやってる、かと」


「あ、学校の外ではしてたよ。でもなぁ~、親父の友達とやっていたから習い事って訳ではない気がするな~、胴着も持ってないしね~。40代の中で一人だけ10代でもないガキがいたから、僕は楽しかったけど、あっちはどうだったかなぁ~」


「ふふっ、かわいい、ですね。や、山田くん」


なにが?


僕の方を見るように顔を上げながら笑う花子を僕は不思議だった。


「あ、そうか」


花子の言動で引っ掛かってる所が分かった。


僕は足を止め、腕を組み空を見上げた。頭の中で記憶を掘り起こしていたのだ。


あ、本当だ。


どんなに考えも、どんなに思い出そうとしても、



僕は花子に自分の名前を教えた記憶がない。


「山田くん。ど、どうかしました?」


。。。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。

感想!!!アドバイスお願いします!!

この物語はフィクションです、実際のモノとは関係ありません( ^ω^)・・・




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