第4話 一週間後…当たり前の日々は・・・
前回のあらすじ
僕はイジメられている髪の長い女〈五十嵐 花子 いがらし はなこ〉をなぜか助けた。
だが、よくよくその女を観察すると、この花子もヒロインだという事に気づいた。
幼馴染の楓を取られない為にもすぐに教室に戻りたかったが、少し体調が悪くなりインフルエンザになった。僕はハーレム系主人公がいる教室に幼馴染をおいて、一週間も休んでしまったのだった…。
「お~い~!、健~~!起きなさ~い!」
僕の名を外で呼ぶ楓の元気な声に僕は体をビクッと震えさせた、痙攣だったかもしれない。
僕は深呼吸をした。体を起こし、ベットの横にあるカーテンを開きいつもの様に手を振った。
「大丈夫だ。…多分」
いつもなら、すぐにベットから出て制服に着替える所だが、今日はベットに座るようにし顔を下に俯かせていた。
どうすれば、いいんだ。…もしもがある。もしも、あのハーレム系が僕の予想通りなろう系だとしたら。この一週間で楓が取られていてもおかしくはない。
「はぁ~~~」
吐いたことのない長いため息を初めて吐いた。こんなため息は演技だと思っていたしコレをするのは僕の親父だけだと思っていた。
でも、このままじゃダメだよなぁ・・・・
「健~??]
楓の声がまた外からしたので、僕は反射的にベットから立ち上がった。
仕方がない、うじうじ言うのは僕らしくない。
僕は薄着を脱ぎ、すぐに制服に着替えた。
そして、一階に下りた。
リビングのテーブルにはいつもの様に食パンとベーコンエッグが一つの大皿に並べられていた。
ここで、いつもの様に母がキッチンで洗い物をしながら「いつまで、楓ちゃんに起こしてもらうのよ」と呆れた感じで言われた。いつもなら「あっちが飽きるまでじゃない?」と舐めた感じに言うが、そんなしっぺ返しが来そうな事は口に出せなかった。
「そうだよなぁ」
と僕は小さな声で呟いていた。
「えっ」と母が驚いたような声を出した、洗い物をする手も止まった。
「悪い、インフル明けだから食欲ないわ。帰ってきたら食べるよ。あっ、食べたかった食べといて」
僕はそう言い、洗面台に向かった。
母のなんとも言えない顔は少し僕の胸を針の様に突いた。女の感と言うヤツか、母には分かっているだろうな、僕と楓の関係が。
僕は洗面台では、いつもは入念に前髪をいじっているのだがそんな気力もない。いや、気力がないわけではない。歯磨きはいつもの様にキッカリ5分出来た訳だから、気力とかそういうのではない。
なんだかんだ、察しているのだ。
インフルで寝込んだ時、あれは寝込んで一日目の日だった。
「健くん、大丈夫ですか?」
一階から楓の声が聞こえたのでお見舞いだろうと「(よっしょ!!!)」というわけも分からない言葉を心の中で発し喜んでいた。
「楓ちゃんにインフルうつっちゃうから、ここでいいわよ。健には私から言っておくわ。この果物も後で健に食べさせるから、ありがとね」
母の楓にする甘々な声を僕はベットから這い出て床に耳をつけて聴いていたので、僕は絶句した。
「こんッ!ババぁ!!ごほっエホッ!!おえっ~~!!」
母に怒りの言葉を叫ぼうとしたが、叫ぶと吐きそうだったので叫べなかった。
そして、楓が来たのは寝込んでからの3日目と5日目だった。
その、どの日も母が楓に「いいのよ~インフルうつっちゃうから」という甘い声で楓を追い払い僕の前に導く事は一回もなかった。
そもそも、恋愛ものでは、主人公が風邪になってヒロインが看病に来るってのはあるけど、
「インフルだから」って事がそもそもないな。その時点で、僕はそういう星の元ではない事が分かる。
「そりゃ帰るよな~、インフルで看病って言葉の響きだけでラブコメにはありえないし。しかも、なんかインフルめっちゃ辛かったし、もう5日間はマジで嘔吐とかヤバかったな。はぁ~インフルって7日を軽いだるいで学校休めるからいいのに、その半分以上ゲロ吐いたってなに?なんかの呪い?」
この時、洗面台の前で歯ブラシを握りながら独り言を言っているのに気づいた。
「はぁ~、・・・・よし!」
僕は洗面台の蛇口を捻り、勢いがある水を流した。
その水を両手ですくい、顔にぶつけた。
ぽたぽたと、顔から水が滴り落ちる。蛇口閉め、洗面台で自分の顔を見た。
「よし」
いつもは綺麗な曲線を描いている髪は若干乱れトゲトゲの様になっている。
「行くか」
僕は顔の水をタオルで流すのではなく、手で顔の水を払った。水を吸い込んだ手を玄関に歩きながら払った。
一階に下りる際にすでに玄関前に置いていた青い学生バックをいつもより、荒く取り、玄関の扉を開いた。もちろん母に「いってきます」は言った。
玄関を開けた際に、楓とすぐに目が合った
「あぁ、ビックリした~」
楓は少し驚いたような声でそう言った。
「あ、遅いからインターホン押そうかなって」
笑みをこぼしながら口を動かす楓に僕は言葉を出せずにいた。少し、見とれていたのだ。こんなに近い距離になったのは小学生以来だ、そっからは僕の思春期で距離を取っていた。
「あ、あ、おはよう」
僕はここで挨拶をした。最初の言葉はいつも「おはよう」だからだろう。ロボットの様に僕の体には楓とのやり取りはプログラミングされてる、のを感じた。
「あっ、おはよう」
楓は、少し不思議な顔をしながら挨拶を返してくれた。
「・・・・・」
「・・・・・」
変な沈黙が流れた。いつもなら、沈黙になるタイミングも決まっている関係なのに、そのいつもの行動とは違う事が初めて起こった。僕は少し気まずい。あっちはどうだろうか?。
僕は恐る恐る楓の顔を見た。
「え?」
楓は笑いをこらえていた。
「ど、どうした?」
僕が楓そう訊くと、楓は笑いながら僕の肩に手を置いた。
「いやッ、その髪何?イメチェン?プププッ、案外似合ってるかも、プププッ。」
僕はバカにされているのだろうと分かっていたが、笑いをこらえる笑い顔の楓が可愛いと思っていた。
「なんかアニメキャラにいそう~~~ッぷぷぷッ」
「あ、あぁ!!、そ、そう!?。ああはははは」
僕はハッとし、後頭部に手を回し笑った。
「なんか、今日の健おかしい~」
「ははっそう?。あぁあ!。遅刻しちゃうから学校に行こうか!」
僕はこの胸の高鳴りを消すために話を逸らした。「あ、そうか!」と楓は気づいたように言って「じゃ急がないと!」と言い、僕に背を向けて歩いた。
背を向けた際に視界に入った、楓のポニーテールがやけに印象に残った。
「う、うん」
僕は頷いた。
通学路は僕と楓は無言で歩いていた。
いつもなら、この通学路では、他愛のない会話をしている。だが、その会話の初めをどう切り出していいか、分からずにいた。そもそも、会話の初めってなんて言っていたっけ?、思い出せない…。
いや、本当はそういうのじゃな――
「ねぇ」
その時、楓が振り返った。
「な、なに?」
僕は楓と目が合ったが直ぐに逸らしてしまった。
「・・・・」
「・・・・ど、どうかした?」
「・・・・」
「・・?、あっ、学校に遅れちゃうよ」
楓の目は僕を真っすぐに見つめていた。その目がいやに綺麗に見える。チラチラとしか見ていないのに。
「私、なんかした?」
楓の困ったようにひそめる眉と悲しいそうな目が僕の目に映った。
「え!、いや!なんもしてないよ!」
「じゃあ、なんでいつもみたいにしないの?」
いつも?、なんだ、いつもって?。いつもみたいに学校に向かって歩いているし…。えっ、もしかして楓も気まずいって感じていたのか?。
「あっ、ごめん。会話してなかったね」
「・・・」
楓は下の唇を噛んだ。この癖は、泣きそうな時の癖だ。
何故かこの時、僕は、楓に駆け寄る事もせずに謝った。
「ごめん」
「・・・・・」
楓は何も言わずに僕に背を向けて歩いて行った。
その時の、楓の後ろ姿が印象に残った。
僕は楓の後ろの後に続く様に歩いていたが、楓と僕の距離はどんどんと開いていった。そして、楓の後ろ姿も見えなくなった。
「・・・・・いつも?」
いつもの様に、いつもの様に。僕の口癖を楓が言ったのに僕は少し引っ掛かりを覚えた。
「・・・あれ?、いつもってどんな感じだった?」
楓との会話も、楓との登校も、楓との…なんだったけ…。
楓とのいつもの日々が、記憶の中でどんどんと薄く白くなっているのが分かった。
それは、写真の上部分が白くなっていく様な、その中にある楓の笑顔の写真の目元から上が見えなくなっていく・・・・。
「はぁ~~~~」
ため息を吐いた。この時に、ため息は息を吐くだけではなく、気持ちを落ち着かせるために吐いているのに気が付いた。
僕はこの時に、歩いている道路のすぐ横に公園がある事に気が付いた。
普通の公園だ。滑り台があって、砂場がある感じの普通の公園、どこにでもある様な公園。
「こんなとこあったんだ・・・」
僕はここに公園がある事に気づかずにいた。いつも楓との会話に夢中だったからだろう。
僕は公園内にあるベンチに吸い込まれるように座った。
「毎日歩いている通学路。その通り道にある公園に今初めてその存在に気づく。」
僕は少し、ふっと鼻で笑った。
無理だ。やっていける気がしない。ハーレム系主人公の転校生、いや、一ノ瀬 彼方、そのカナタを見る楓の顔。その顔が僕の脳内にフラシュバックの様に映像になって浮かんできた。
その時は、窓側の薄青いカーテンが楓の前に気持ちがいい春風に流されて、ひらひらと漫画のワンページの様に舞っていて、楓のその時の顔。思い出したくなくても思い出してまう。
その時の、楓の顔は、どんな顔よりも妖艶に見えた。僕に見せない顔だった。それを初対面のカナタに向いていた。
僕に見せない顔、見たことがない顔。
知らない顔。アレを見て僕は。
楓の事が―――
「・・・あっ、あっ、や、山田くん?」
小さい足と髪が僕の足元に見え、聞き覚えがある小さな声が正面から聞こえた。僕は顔を反射的に上げた。
「だ、・・大丈夫ですか?」
「花子か。」
僕がベンチに座っている状態でも目線がほぼ同じの何故かあたふたとしている髪の長い女がそこにはいた。
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この物語はフィクションです、実際のモノとは関係ありません( ^ω^)・・・




