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第14話 通常、常識的な17歳

3行あらすじ


朝の体育館で不良生徒を片手で失神させた、龍雲。そいつが水野の腕を掴んだ。僕は龍雲の手を引きはがし、龍雲に怒った!!。

今!勝負が始まる!!!

 空だ。青い空、気持ちのいい雲がぷかぷかと浮かんでいる。


 なんでだ?、なんで、僕は空にいるんだ?。


違う、空にいるんじゃない。そんな事は分かってる。


 僕は、宙に浮いているんだ。


一瞬だった。勝負は一瞬で終わった。

 あんなに、啖呵を切ったのに・・・。いや?、あれは啖呵を切ったって言うのか?。


「ブチ殺すぞ。テメェ」


 今思えば、怒りも多少あったんだと思う。

友達の水野が「いたい」と痛そうに言った時に、龍雲に多少の怒りが出来たのかもしれない。水野は、女だし、その痛みを訴える声が女の声だった分、余計に僕の正義心に火をつけた。のだろう。


龍雲の鋭い冷たい冷徹な目と目が合った時に、僕は全身の鳥肌が立った。

分かっていた事だが、僕が龍雲にそもそも勝てるわけがない。

現実的に考えて、龍雲の背丈は僕の172CMを軽々と超えている。

目安で恐らく、約250CM。ジャックハンマーといい勝負だ。

そして、その身長に分厚い胸筋を初めとした確固たる筋肉を身に着けている。

 しかも、その筋肉が偽物じゃないって事も証明済みだ。朝の体育館での不良生徒を軽々と投げ飛ばした事が僕の脳裏に焼き付いている。

その筋肉量から、考えられる。龍雲の体重、恐らく200㎏。僕の体重を倍にしても、僕よりも圧倒的に重い。

 動物だ、人間じゃない。怖い、単純に恐怖だ。

目の前に、野生の熊が突然現れる。ヒグマじゃない、海外とかにいるグリズリーだ。

 グリズリーが目の前に現れて、「さぁ、勝負して下さい」と言われる。

冷や汗だらだら、小便じょろじょろ、息が荒荒と乱れる。そして、奥歯をガタガタと言わせながら、背を向けて逃げる。大抵の人はこうするだろう。当たり前に「勝てるわけがない」んだから。

 

 でもな?、そのグリズリー級に僕から喧嘩を売っちゃったんだよ。

しかも、逃げれない目と鼻の先での距離で。


全身の鳥肌が立った瞬間。僕は無意識に両手で顎を守る様にファイティングポーズをとる。

 格闘技をやっていた時の癖が染みついているのだ。


だが、構えはとったは良いが僕の内心は人生で過去一焦っていた。


 龍雲はなにで来る!?「投げ」か!?、「拳打」か!?。「蹴り」か!?。

 もしも投げだったら、掴まれた瞬間終わりだ!。

万力の握力で胸ぐらを掴まれたりでもしたら、朝の体育館の不良の二の舞になっちまう!!。

しかも、ここは廊下だ!。硬いタイルに受け身でもしたら肋骨が何本か折れてしまうし、受け身なんかそもそもとれる助走があるのか!?。

 打撃で来たらどうだ!?、どう受け流す!?、どう防ぐ!?。

というか!!、受け流せるのか!?、相手は体重超超ヘビー級だぞ!!。


頭で色んな思考探後をしている。どれもこれもが僕が一瞬で負ける。圧倒的な想像力、その鮮明さ。そして考える、――だったら!どうすれば!!?――という答えを求める。


その時、現実世界で動きがあった。

目の前で、龍雲が横に腕をゆっくりと広げた。

 

ただのその行為に、僕はビクっと肩を震わせる。


そして、龍雲は顔色も変えずにそれをゆっくりと僕の方へと放つ。


 これは、平手打ち・・・・のつもり(・・・)なのか?。


僕は横目で、龍雲の迫ってくる手を見ながら、そんな事を考えていた。


 遅い、本当に遅い。眠くなるような平手打ちだ。・・・・もしかして、罠か?。僕がこの遅い平手打ちを避けた所に膝を僕の顔めがけて打つつもりか?。


僕は、カウンターを入れられると思ったが、裏があったら怖いと思い、カウンターではなく防御する事を選んだ。


腕を顔の横に上げる、その簡単な行動をする。


ここで、ある異常に気づいた。


 !!、腕が上がらない!!、顎の位置から横に移動させるだけだぞ!?、なんで、腕が動かねーんだ!!


突如、起こった体の異常。だがこれが、異常ではない事が分かった。


 いや、動いてはいる!、だが、そのスピードが遅い!、僕の体だぞ!?、なんでこんなに僕の体が動くのが遅いんんだ!?。これじゃ、まるで、目の前にいる龍雲の遅い平手打ちと一緒じゃないか!!。・・・・・!!、まさか!!。


目だけを横に動かす。龍雲の遅い平手うちが僕の顔に近くになっていた。

だが、それでも、遅い。そして、僕の防御をする行動も遅い。


 嘘だろ・・・・、これって、いわゆる、周りが遅く見えるヤツ(・・・・・・・・・)?、死ぬ前に起こるっていうあの現象?。


 じゃあ、僕は死ぬのか?。


龍雲の平手うちが僕の側頭部にあたる。


 あ、手デカ・・・


その瞬間、世界が揺れる、震える。そして、僕の体は一瞬にして宙に上がる。吹っ飛ぶ途中、廊下にいた知らない生徒共が唖然の表情をしていた。だったら、その前に止めろや!!。そして、水野も見えた。水野は顔を青ざめさせ、両手で鼻と口を覆って息を吞んでいる様だった。あーー・・・・恥ずかしい・・。そう思った瞬間、僕の体は頭から廊下の窓ガラスを突き破って、校舎の外へと飛ばされた。



そして、今が飛ばされて、宙に浮いている所だ。いや、段々と落ちていってはいるな、スローモーションのままで。こんなに、スローモーションって長いんだな、死ぬ一瞬だけだと思ってた。いや違うか、今がその一瞬の中なのか・・・。


 まぁ、分かったけどさ。


まー分かっていたけど、こうも簡単に終わるもんかね?。マジで一瞬だったんだけど?。自分から喧嘩売りました、負けました。って感じだった。嘘だろ?、そんなもんなの僕の強さとか、僕ってそんなものだったのか?、鼻くそ飛ばすみたいな、そんな程度に終わって・・・・・、いや―――

 

――それが、僕の「存在価値」って事なんだろうな。


一瞬で負ける。存在価値。


 そりゃ、そうだ。

朝の体育館でも分かっていたさ。一年の列にも、二年の列にも、三年の列にも、僕以上に個性があって、才能もあって、変わった奴らが何人もいた。

 その時点で、本当は察していたんだよ。この学校で僕は本当に何もない側なんだなって事に。

実の所、龍雲に勝てるんじゃないかって一瞬思ってた。

 デカい体してんのに女の子みたいに痛がる水野を助けて、「あ、今の僕はヒーローぽいっな」って思った、そして、「ヒーローは勝つ」という感じで魔が差した。

 でもそれは、龍雲と目が合った瞬間に消えた。

普通のヤツと同じさ。戦闘系のアニメ見て、重要な場面でどんくさいヤツに「俺に変われよ!」と見ながらイライラしてしまうけど、いざ、変わったら、焦って何も出来ない。

 それが普通さ。それに対応できる方がおかしい、そして、凄いんだ。


 僕は、なんでもない一高校生のただの山田健なんだよ。


周りの時間が早くなった、いや、元に戻ったのだ。


割れた窓ガラスが、キラキラと星の様に見える。割れた窓ガラスの向こうの廊下では、悲鳴が微かに聞こえた。


僕は体が重力で地面に引っ張られる速度を感じながら、地面に落ちて死ぬ未来を想像出来た。


 はぁ~~、恥ずかし。


そんな事を思いながら、目の前に広がる青い空を見ながら落ちていく。空、こんなに綺麗だったんだな、こんな事になるまで分かんなかったな。頭に何が、当たるのを感じた、地面に触れるのが思ったより速かったので、少し驚いた。だが、次々にガサガサという音が周りから聞こえながら、体に何かがまとわりつくのを感じた。体中が痛い。


その時、バキッ!という何かが折れる音がしたと同時に、僕は地面に落ちた。


 「あれ?死んでない」


僕は目を見開く。目の前には、桜の花がひらひらと僕の鼻へと落ちる。あ、そうか、廊下の窓の外って中庭だったのか。腕の下には桜の木の枝が下敷きになっている。中庭の桜の木がクッションになったのか。僕は体を起こそうと足を曲げた。


「痛っッ・・・・スッーー」


 イテぇ・・・、膝の周りが押されて圧迫されてるみたいだ。クソいてぇ、全身がじわじわと痛くなってきやがった。まさかとは思うが、周りがスローモーションになる現象に全部のアドレナリンが持っていかれたのか?。痛みが痛みとして僕に襲ってくる。

痛くて、喋る事も出来ない。呼吸も荒い、もしかしたらアバラを折ったかもしれない。桜の木には感謝だか、こういう時って無傷って流れじゃないの?、いや、そんな無粋な事はいいや。


「桜の木、ありがとうな」


自分の声が震えているのが分かった。


 はぁ~、桜の木の下で大の字で倒れている僕。一瞬で負けた僕。楓と喋るのが怖くて黙っていた僕。楓がカナタとくっつくのを想像して楓にどういう顔をすれば分からない僕。


 こんな時に、楓の事を頭のどっかで考えてしまう。僕は楓が好きだった、んだ。

楓の事が好きで、喋りかけて、髪の毛もカッコよくして、清潔感も考えて、ファッション雑誌も読んで、色んな事をして、色んな努力をして、楓に好かれようして、楓が僕に少し傾いてきて良い感じの関係になったと思った。


だけど、カナタが一瞬で楓の心を奪った。


 何回も思うけど、あんな楓の顔は見た事がなかった。あんな、あんな――可愛い顔。


「人は恋してる時が一番可愛いらしい」


自分の声が震えているのが分かる。目の前の桜の木のピンクがじわっと膨れて桜の原型が見えない。頬に水が通る。


 分かったさ、一瞬で分かったさ。龍雲に勝てない事も、カナタにも勝てないって事も。

カナタが教室の扉を開けて入って来た瞬間、中学校の頃に誰もいない教室で放課後に楓と勉強しながら話していた事を思い出した。


「私の白馬の王子様はいつくるのかなー?」


「!?・・・さ、さぁ」


「はぁ~。絵本の王子様みたいな感じで、落ち着いていて、イケメンで私よりも身長が高い。そんな白馬の王子さま現れてくれないかな~?」


楓は机に突っ伏しながら、上目づかいでこちらをみながら、懇願する様にいう。


「!!、さ、さぁ、そんなヤツいるわけないだろ。(あとで、図書館に言って楓が言ってる絵本探そう)」


僕はノートに何かをかいている風をしながら、楓に訊いた。


「ちなみに、その王子様の本ってなに?」


「私の頭の中にしかないのーー」


楓は机に突っ伏しながら自分の頭に指をあてる。かわいい。


「ふ~~ん」


「・・・・なにが、゛ふ~~ん゛よ。分かりなさいよ」


僕はよく分からなかったが、100冊くらい読んで絵本の王子さまは、大体マッシュと直毛の中間ぐらいの髪型をしていたので、その日の夜から髪型をそんな感じにした。僕は見た目から入るタイプなのでしす。ワックス代の為に僕のおこずかいはどんどんと減っていった。


 だけど、今日からはそんな出費を気にする必要も、髪の毛をトイレの鏡でいじる理由もない。

楓はもう、誰のモノでもない、僕のモノでもない。


カナタのモノだ。


 三時間目の体育も、四時間目の国語も、カナタと楓と他女子二名はいなかった。カナタはこの学校の主人公だから、恐らく重要な事に巻き込まれていたんだろう。

 そして、その過程で、どんどんとカナタの事を楓は好きになっていく筈だ。


 楓が言った、「王子様みたいな人」、それはカナタに凄い位当てはまっていた。僕が入る隙なんてない。

心が折れた。いや、あきらめが一瞬できた。好きな人の幸せが一番なんだから、そこに、ちゃちゃを入れるほどの頭の悪さも度胸も僕にはない。


「無理なんだよ・・・バカ」


手で目の周りの涙をふき取りながら震えた声を出す。


自分で思う。恥ずかしくて哀れな姿だ。こんな可哀想な姿を、カナタは絶対にしないだろう。あんなにカッコイイんだ、するわけがない・・・・。もしも、可哀想な姿でもそれは゛王子様が流す涙姿゛と一緒で、絵になるカッコイイものだろう。

 こんなに、嘔(えず)きながら泣いたりもしないだろうし、僕は、楓がカナタに取られて泣いているのもあるけど。それよりも全身が痛い、落下の衝撃の痛みで泣いているんだ。


 本当に痛い。17にもなって痛くて泣く羽目になるとか、思わなかった。


「えぐっ!えぐっ!」


 なんで、なんで誰も助けに来ないんだよ!、一階には生徒も教師も、誰もいないのかよ!!。


本当に痛い!。全身打撲だよ!!。


 なんで僕だけがこんな目に遭わないといけないんだ!!。

一瞬間前には、好きだった女を転校生にとられて!、そのあとすぐにインフルになって!一瞬間休んで!その間に転校生は好きだった女と仲良くなって!、インフル明けの初日で、可愛い女の前で、変なでかいヤツに一瞬でボコられて!校舎の二階から落下して!!全身打撲になって!!!痛い!!。


 なんで、なんで!こんなに体が痛いんだよ!!。

龍雲だ!。龍雲のせいで僕は体中が痛いんだ!!。


 許せない・・・、龍雲が憎い、龍雲をぐちゃぐちゃにしたい。


この時、僕の体は痛みがどんどんと引いていき、痛みを感じなくなっていった。おそらく、怒りによる脳内麻薬が脳内で分泌されたのだろう。


僕は無意識に、校舎の壁に沿っている排水管(雨樋)を握っていた。


そこに足をかける。


ここからは、無意識だった。いや、感情はあった、強大な、感じたことのない様な、心臓の音と共にどんどんと湧いてくる火山の様な―――怒り。


僕は二階にいた。いや、二階の外にいた。


分かってる。コレは、八つ当たりだ。今からする事はただの八つ当たり、それ以上でもそれ以下でもない。だがそれでも――怒りだ。

色んな事があって、その「鬱憤」の最後がたまたま龍雲だっただけだ。


 だけど、この怒りは、もう止められない。


 龍雲を―――


挿絵(By みてみん)



――ブチ殺す。



。。。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。

感想!!!アドバイスお願いします!!

この物語はフィクションです、実際のモノとは関係ありません( ^ω^)・・・




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