表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒剣の退屈  作者: Leopardz
8/10

立つ者

ロナンは数歩前に出て、キャシーと並ぶ位置に立った。


彼の魔導書は胸の前に浮かび、ページがかすかに震えている。


右手には短い魔法杖を握り、前方へと構えを取っていた。


彼の周囲の空気がわずかに振動し、魔導書と杖の間には淡いマナの光が流れている


。詠唱準備が整っていることを示していた。


キャシーは魔法の杖を構え、真剣な表情で前を見据えていた。


リンは腰の後ろから二本の大きな短剣を抜き、戦闘態勢に入る。


両手の短剣は刃を下に向けて構えられていた。


「NOITRAMA…… 後ろをリンと一緒に守ってくれ」 とエリックが、振り返らずに後ろの俺に目を向けて言った。


「…わかった」


魔物たちは地面へと飛び降り、乾いた葉を四方へと散らした。そしてそのまま、全力でこちらへと突進してくる。


「ハァァァァ!!」


エリックの低く重い戦闘の叫びが響き、彼は重い足取りで前へ走り出した。


盾を前衛の守りとして使いながら。


その動きは、敵を他の者たちから引き離そうとしているようだった。


ガキン! ガキン!


二匹の魔物が鉄の拳をエリックの盾に叩きつけた。


でも、盾にはほとんどダメージがなかった。


逆に、彼らは盾に押されて挟まれてしまった。


エリックはそのまま押し続け、魔物を木に叩きつけた。


ドスッ!


上から葉っぱがどさっと降ってきた。


二匹とも、強い衝撃を受けて、ぼんやりしていた。その隙に、エリックはすぐに盾を下げ、剣を高く振りかざし、そのまま振り下ろした。


ザシュッ!


二匹の血が吹き出し、エリックの腕に飛び散った。


反対側… 襲いかかる魔物の中から、一匹の鉄猿が素早く飛び出してロナンに飛びかかった。


でも、近づくよりも先に、リンの右の短剣が先に動き、その首を切り裂いた。


ザシュッ!


傷口から血が噴き出した。魔物の体はバランスを崩し、リンの近くの空中から落ち始めた。


地面に触れるより先に、リンは攻撃を続けた。


左手の短剣を素早く回転させ、しっかりと握りしめると、彼女は前に突進し、それを魔物の胸深くに突き立てた。


一瞬で、鉄猿の体が地面から浮き上がり、リンの左手に吊り下げられた。あっという間の出来事だった。


彼女たちが戦っている間、一匹の魔物が後ろから走ってきた。


俺は後衛で魔法使いを守っていた。


振り返らずに左をチラッと見た。そしたら魔物が両拳を上げて飛びかかり、鉄の拳を俺に向かって振り下ろそうとしてた。


(俺のマナオーラはロナンと同じくらいに抑えている。今できるのは……)


俺の体がバランスを崩したみたいにちょっと揺れて、ゆっくり後ろに倒れた。


隙間。わざと作った隙間だ。


魔物が近づいてくる。


その拳が俺の間合いに入ろうとした瞬間……俺の体は素早く回転した。


俺の左手は水の流れのように滑らかに動き、鉄の拳の軌道を一瞬で逸らした。


その一撃は突然コースを外れ、空を切る。


空中で体勢が崩れた。


俺は一歩踏み込む。それだけで距離は一気に詰まった。


魔物の足が地面に触れるよりも早く――


俺の左手が前へと素早く伸びた、その喉元を荒々しく掴み上げた。


ガシッ!


俺が押し下げた。


膝を無理やり地面に叩きつけられ、俺の掴みのせいで顔は空を向いていた。


鉄猿の両手が必死に俺の腕に爪を立てて、逃れようとしてる。


( 遅い。)


握りを強めて、ぐいっと上に引き上げた。


ザシュッ!


喉が裂けて、血が吹き出した。


体がぐったりとして……そのまま倒れた。


指先は血で赤く染まっていた。


俺はパーティに背を向けたまま、動かずに立っていた。


表情が、わずかに引き締まる。


体は背を向けたまま、俺はキャシーへと視線を向けた。


視界の端で、左後方から彼女へ飛びかかる魔物を捉えた。


《適当流》


「危ない!!」 叫んで飛び込み、横からキャシーを襲おうとしていた鉄猿にぶつかった。そのはずみで二人とも転がった。


「あっ!」うっかり俺の体が彼女の肩に当たって、彼女はうつ伏せに倒れた。


魔物の両腕を押さえ込んで、地面に伏せてた。鉄猿は俺の上で暴れながら逃げようとしてた。


ロナンのすぐ後ろで、リンが見えた。リンはまるで練習台みたいに、軽々と魔物を斬ってた。


突然、一つのアイデアが頭に浮かんだ。


( この魔物をリンに向かって投げて、斬ってもらおう。……決めた!)


俺の手のひらは魔物の腕をしっかりと掴み、固定した。


両足を曲げてその背中に押し当て、鋭い爆発的な蹴り一つで、その体を空中へと打ち上げた。


シュッ――!


(くそっ!投げすぎた。)


「リン!」 俺は必死に叫んだ。'


彼女が振り返った。


「はっ?!」 驚いた顔をした。


日差しが魔物の影をリンの体の上にゆっくりと落とし、近づくにつれて大きく膨らんでいった。


ドスッ!


鉄猿がリンの上に落ちてきて、その拍子に両足が彼女の体に絡まり、地面に倒れ込んだ。

一瞬で、リンの手から短剣が二本とも飛んで、左右に落ちた。


ボゴボゴボゴ!


鉄猿は容赦ない鉄拳の連打をリンに浴びせた。リンはまだ仰向けに倒れたままだった。

リンは素早く両腕を交差させ、拳をぎゅっと握りしめ、次々とくる攻撃を防いで身を守った。

俺はまだ地面に伏せたままだった。


(なぜこうなる!)


俺は驚いて見てた。リンがボコボコに殴られてる。全然想像してたのと違う。

ロナンはパニックになって、杖をリンに向けた。


【 FI-FIRE……BA―】


「やめてください、ロン。あなたもリンを傷つけます」キャシーが、まだうつ伏せに倒れたまま言った。


キャシーは素早く魔法の杖を、まだ鉄猿に殴られているリンへ向ける。リンの周囲に一瞬、青い魔法の光がまとった。


【 DEFEND UP ! 】


俺は半身になって、普通の速さでリンに向かって走った。


(まだ間に合う!助ける!……自分が鍛えた中で一番弱い技で!)


《適当流》


「危ない!」叫んで、体を横にしてリンに飛びかかった。


カキン!


盾に剣が当たる音。


【 DECOY 】 エリックの盾が光った。


リンの上にいた鉄猿は、俺がぶつかる前に飛び退いて、エリックに向かって突進した。

同時に、襲ってきていた魔物が全部エリックの方へ殺到した。


「うぐっ…」リンと俺が一緒にうめいた。俺の腹がリンの腹の上に斜めに倒れ込んだ。


リンの息は荒かった。黒い服の下で、お腹の白い肌が丸見えだった。


俺の下で、彼女の温かい呼吸の上下を感じた。


彼女の顔を見た。青白くて汗で光ってる。まだ防御の姿勢のままだった。


右手で目を覆い、左手は地面に伸ばしてた。


彼女の黒い髪は地面に広がっていた。


(まさか今日だけで、適当流を三回も使うことになるとは)


「ごめん……」と俺は彼女を見た。


「だ、大丈夫……むしろありが……いや、ごめんなさい」彼女は息を整えながら言った。


「なぜだ?」


「あたし、まだ弱いから」


(何か重要なことを見落としていたようだ……)


鉄猿の鉄拳がエリックの盾を次々と叩きつけ、そのたびに火花が散る。

エリックは一歩ずつ後退しながらも体勢を崩さず、攻撃を巧みに横へ受け流し、その反動すら利用していた。


「キャシー!今だ!」エリックが叫んだ。


キャシーは背筋を伸ばし、魔法の杖を掲げる。


【 ICE BIND!】


ピキ…ピキ――


地面から氷が一気に広がり、魔物の足を一体ずつ凍らせていく。


やがてその動きは、霜の層の中に完全に封じ込められた。


エリックは即座に後方へ飛び退き、魔物の群れとの距離を取った。


ロナンの魔導書がパラパラとページをめくり始めた。杖を魔物たちに向けて。


【 HELL FIRE! 】


凍りついていた地面が一気に溶け、燃えるような橙色へと変わった。


ドオオオン!


地面が下から爆ぜ上がり、巨大な火柱が立ち上る。その炎は周囲を焼き尽くし続けていた。


「うぐっ……」ロナンは膝をつき、全身汗だくで荒い呼吸を繰り返す。


「ぼ、僕のマナ…もうほとんどない。」


「私…もです。」


隣にいたキャシーも同じように消耗しきっていた。


両手で魔法の杖を握り、まるで杖に体を預けて倒れないようにしている。


俺はまだ燃え盛る大火を見つめながら、無表情のままでいた。


リンがちらりと俺を見た。


「ところで……いつまで私の上に乗っているつもり?」 鋭い視線でそう言う。


「ご、ごめん……」


俺はリンの体に押し付けていた自分の体を素早く離し、そのまま座って炎を見つめた。


リンも隣で同じように腰を下ろし、同じ光景を見ている。


炎は激しく燃え上がったあと、まるで燃料が尽きたかのようにゆっくりと勢いを失っていく。


そのとき、消えかけた炎の向こうにエリックの姿が現れた。


ガキン! 


大人の男性ほどの大きさの鉄猿が、その鉄の拳をエリックの兜の顔面に直接叩き込んだ。


時間がゆっくりと流れるように感じられた。


枯れ葉が朝の風に舞い落ち、彼らの間を回りながら漂った。


エリックはよろめいた。彼の手から盾が滑り落ちた。


剣は鉄猿の後ろの木の幹に刺さったままだった。


ガキン! ガキン! ガキン! 


鉄の拳が容赦なくエリックの体に叩き込まれた。


一撃ごとに火花が散り、鋭い音が響き、彼の体は大きく揺れた。


エリックは一歩も下がらず、打たれ続けた。


攻撃は全部腹と頭を狙っていて、鎧はボコボコに凹んだ。


金属がギシギシと悲鳴をあげながら曲がった。


彼の体は連打でふらふらだった。


盾も剣もない。


完全に無力だった。反撃も防御も全然できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ