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黒剣の退屈  作者: 虎
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THE LOST WING

エリックたちは冷たい視線で俺を見つめ続けた。


状況はますます気まずくなり、俺は決断を下すために汗をかいていた。


トン……トン……トン……


キャシーは指先で机を軽く叩き、頬を手に預けていた。


その目は冷たく俺を見ていた。まるで俺の答えを待っているかのように、顔には退屈そうな色が浮かんでいる。


魔道士の帽子を被っていないが、彼女の美しさは相変わらずだ。


『そのお金を受け取りなさい。そしていつか、私を退屈させないための……楽しめる従者になりなさい』


エリックは両手の指を組み合わせて顔の近くに構え、俺を鋭く見据えた。


『さっさとその金を受け取れ!その後、飢えた獅子のごとく、すべての糸をこの手で、俺が支配してやる』


ロナンは真剣な顔で俺を見た。


『早く僕の「芸術」の鑑賞者になれ』


他のテーブルのハンターたちが、こそこそ俺たちの噂をしてた。


「見ろよ、あれエリックのパーティー、【THE LOST WING】だ」


「新しいメンバーでも勧誘してるのか?」


「Cランクパーティーのくせに、任務成功率は100パーセントだ。あのガキ、運がいいな」


「俺、昔あのパーティーにいたんだ。依頼が終わるたびに魔物に囲まれて、毎回死にかけてた。もうやめた。」


「あのガキ、追い詰められたネズミみたいで可哀そうだな。」


「賄賂でももらってるんじゃねえのか?」


彼らの声が小さく遠のいていく。俺は、自分の思考に沈む。


振り返らない。


視線、目の前の銀貨に落ちる。


冷たい輝きが鈍い光を反射して、ただでさえ息苦しい空気を押しつぶす。


俺は目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。


《適当流… 》


ゆっくり目を開けた。


(新ルール !)


口元にほのかな笑みが浮かんだ。彼らの方を向いた。


「みんな、とても親切だな…」


声は静かで、どこか穏やかだった。


「どう返してやるべきか、考えちまうな……」


俺の手がゆっくりと動いた。


銀貨が掌の中でわずかに浮き上がる。


それを顔の前、俺たちの間に掲げた。


(この笑顔は、嬉しいからじゃない。諦めの笑顔だ。)


やがて、指の力が抜ける。


カラン……カラン……カラン……


銀貨が一枚ずつ袋の中へ落ちていく。


その光はあまりにも鋭く澄んでいて、向かいにいる連中の輪郭がぼやけて見えた。


◆新ルール……◆


◆汝...迷う道に出会ったら、一番楽な方を選べ。どうせ最後には、どの道を選んでも後悔するだけだ◆


エリックは狡猾な笑みを浮かべ、獅子がウサギの尻尾を踏みつけ、ウサギが跳ねるだけで逃げられなくなった光景を思い描いた。

同時に彼はつぶやいた。


『やっと……俺の新しい“観客席”の特等席は……もう決まった。』


そして、その獅子は崖の上に立ち、下にいる動物たちの群れを見下ろしていた。


『邪魔なやつは、すべて俺が支配してやるだけだ。』


◆◆◆


「ノイトラマ。Cランクに上がったら、俺たちのパーティーに入らないか?【THE LOST WING】だ」

エリックが言った。


(【 THE LOST WING 】? 弱そうな名前だな。)


(なるほど……それが狙いか。面白い。)


「俺は構わないが……お前のパーティーメンバーも俺を受け入れるのか?」


「誰も反対していません。先ほど川辺で寝ていた間に、すでに話し合っていました」

とキャシーが答えた。


「ギルドのルールがなかったら、お前がEランクでもすぐに誘うんだけどな…」

とエリックが言った。


ギルドの規則では、パーティーの編成は同じランクの者同士に限られている。


メイドが二人来て、次々に料理が運ばれてきた。


湯気の立つ美味しそうな皿が並び、温かい香りが広がっていく。


木のカップに入った泡立つエールも一緒に置かれた。


みんなで食べ始め、俺は夢中でほとんど止まらずに食べた。


ロナンはエリックを見つめた。


「エリック、明日依頼を取りに行くのか?」ロナン


「見ての通り、俺の鎧は壊れている。三日間の依頼を受けるのはどうだ、みんな?」エリック


みんなも同意した


食事中、キャシーが食べ物を噛んでる俺を見た。


「ノイトラマ、助けてくれたお礼をまだしてませんでしたね。

よかったらこの後、ハンター装備を買いに行きませんか? もちろん、私のお金です。」


ドクンッ!


それを聞いた瞬間、心臓が大きく脈打った。


(この感覚……REAPER BUNNY!)


(この女……他の三人より強い。)


俺は無理やり食べ物を飲み込んだ。


「ああ……お前がそう言うなら」


「まだ泊まる場所がありませんよね?わたしの隣の部屋が空いています。使いますか?もちろん、費用はわたしが払います」


「ああ……お前がそう言うなら」


エリックたちは、まるでリーパーバニーのような冷たく静かな表情でキャシーを見つめた。


空気がさらに気まずくなった。


(死神兎のグループと同じテーブルで飯を食ってる気分だ。)《 REAPER BUNNY 》


食べ終わった後、キャシーと俺はテーブルに残ったみんなを残して席を立った。


エリックは気にしてないし、リンはビールを飲んでるし、ロナンは食べてる。


「ん?」 リンが俺が座ってた席を見た。


「銀貨をしまったとき、バッグを取り忘れたみたいだな、あいつ…」リンが言った。



ギルドの建物を出たあと、俺たちはレンガの道に並ぶランプの明かりの下を肩を並べて歩き、一つの建物の前で足を止めた。


前には、二本の剣が描かれた木製の看板がぶら下がっており、ランプに照らされていた。


チリーン!チリーン!


「ほう……未来の伝説が来たようだな。うちの店へようこそ」

と、筋肉質な店主がこっちを見ながら言った。


俺は自信ありげにそいつを見返した。


「いい目してるじゃねーか、おじさん」


「俺はおじさんじゃねえ!まだ33歳だ!小僧!」


「ふん…小僧じゃねえ、まだ24歳だ、お…兄…さん」


「いうねえ…」彼は片目をつぶった。


キャシーは値段など気にしていないかのように、次々と装備を俺に試させた。


フルヘルムに鎧まで身に着けた状態で見ても、それが普通の装備じゃないことは明らかだった。

エリックの使っていたものすら上回っている。


「ごめん、キャシー。俺の本能が拒否してる。この服じゃ、夜の闇に溶け込めない。」


「ほお…夜の捕食者か」と店主は言った。


「ふん……」


「……これはどうだ?」

彼が指さしたのは、黒い服と革のズボンの一式。典型的な暗殺者の装備だった。


「この服は防御力は全然ないが、耐水性だけはある。びしょ濡れになっても数分で乾く。」


(完璧だ!)


銀貨の入った袋がテーブルの上に置かれた。


俺たちは店を出て、宿屋へ向かった。


「本当にそれだけでよろしいでしょうか?剣や短剣もお買い求めできますのに」

キャシーは俺の隣を歩きながら言った。


(まあ、俺の剣はヴェドラの森にある。いつでも呼び出せるよ)


「大丈夫。素手で戦うだけで十分だ」俺は満足げに言った。


宿に着き、受付の前で足を止める。


キャシーは俺を自分の部屋の近くに登録するつもりだった。


「申し訳ございません。あなたの隣の部屋はすでに埋まっております」


ドンドンドンドン!


キャシーは迷うことなく、自分の部屋の隣のドアを強く叩いた。


(……俺は石だ。何も見ていない。)


少しして、イライラした表情の男がドアを開けて出てきた。


キャシーは何も言わず、金貨を男の目の前に掲げる。


男の目が一瞬で輝いた。


彼はすぐに中へ戻り、急いで荷物をまとめると、満足そうな顔で部屋を出ていった。


俺は部屋に入り、そのままベッドに倒れ込んだ。


「やわらかい……!」俺は信じられずにつぶやいた。


しばらく、その柔らかさに身を預けていた。


(これは…俺の人生で初めて感じるベッドだ。)


「もしCランクハンターになるための準備で、手伝えることがあれば言ってください」

キャシーはベッドに横たわる俺のそばに立ちながら言った。


「……ああ、ありがとう、キャシー。ここは居心地いいけど、俺は暗い方に慣れてる。その光の球は……」

俺は電球を指差した。


カチッ。キャシーは迷いもなく明かりのスイッチを切った。


(え?それだけか……?)


「おやすみ」キャシーは微笑み、部屋を出てそっとドアを閉めた。


俺はベッドに横たわり、暗くなった天井を見つめていた。


「俺の…マナオーラが半分以上減ってた…今日はマジで疲れた。」


まぶたがゆっくりと重くなり、そのまま眠気に落ちていく。


「明日はクエストを受けて、すぐにランクを上げる。Cランクだ……」


遠く離れた高い建物の上から、誰かが小さな望遠鏡を俺の窓に向けていた。じっと観察している。


月明かりのない闇に完全に溶け込むように、全身黒ずくめの姿。まるで忍びのようだった。


その男は一枚の紙に何かを書きながら、書いている内容を呟いていた。


「アンタの娘、見知らぬ男にハンターの装備を買い与えていた。


その後、その男を自分の部屋の隣の部屋に泊まらせた。


俺は彼女が男と一緒に部屋に入るのを見た。


それから、明かりが消えて、ドアが固く閉ざされた。


暗い……全てが……真っ暗だ。


今、アンタの娘が部屋でその男と何をしているのか……ああ、もう何も見えない!一体中で何を……!?


以上。」


忍びはハトの足に紙を結びつけている。


「これで、私の気持ちは伝わるはずだ」


その男は手紙を鳩の足に結びつけ、空へ飛ばした。


鳩は【ATLANZ】の首都から飛び去っていく。

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