↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒剣の退屈  作者: 虎
PR
7/29

【ATLANZ】へようこそ。

エリックは一度だけ手を打ち鳴らした。鋭く、乾いた音が響く。


「よし、出発しよう!」


太陽が沈み始め、辺りは少しずつ暗くなっていった。


俺たちはさらに数時間旅を続け、ついに目の前に広大な景色が開けた。


遠くに『 ATLANZ 』の街が見える。高い石の壁が街全体を囲み、旗が風に揺れていた。


俺はそれを見て、思わず固まった。


『 外の世界』という本でしか見たことのなかった建物が、今は目の前に現実として存在している。


埃っぽい大通りが、そのまま巨大な門へと真っすぐ伸びていた。


門の両側には兵士が立っていた。


商人の荷車が行き来して、木の車輪がきしみながら荷物を運んでいた。


リンは門の近くの受付に俺を連れて行き、衛兵の前に銀貨を二枚置いた。


入門の身分証(みぶんしょう)をもらう手続きはすぐに終わった。


俺は身分証(みぶんしょう)を持って、リンの近くに立った。


「リン、ありがとう。この恩は忘れない。いつか必ず返す」


「気にすんな。あんたが嘘ついた理由は知らないけど、一つだけわかる。

あんたは悪いやつじゃないってこと。」


「な、なぜ……俺が嘘ついてるって分かったんだ?」


「ひ…み…つ。」リンがうぃんくした。


俺たちは大通りを歩いていた。商人やハンターが行き交い、だんだん道が混んでいった。


キャシーは俺の前を小走りで進み、振り返って両手を広げた。


「ようこそ、『 ATLANZ』であります」


彼女は俺に微笑みながら言った。


通り道の両側には建物がぎっしりと立ち並び、建物と建物の間から暖かい灯りが漏れていた。思わず見入ってしまった。


【 MANA VISION 】


馬車を引くおじいさんが見えた。頭の上に400って数字があった。


近くを歩いてる武器を持ったハンターたちは、1200から2000くらいの数字だった。


しばらく歩いて、目立つ建物の前に着いた。外に大きな木の看板が掛かってた。


外に掛けられた大きな木製の看板には、丁寧に彫られた二本の剣と盾の紋章(もんしょう)がある。

その下に書かれていた文字は──『 ATLANZ EAST』。


扉は最初から開いていた。まるで、足を踏み入れる者なら誰でも歓迎するかのように。


中から漏れる光が部屋を照らし、何かしらの作業に追われる人影(ひとかげ)を浮かび上がらせる。


俺たちはためらうことなく中へ踏み込んだ。


部屋はとても広かった。


ハンターたちがあちこちに散らばっている。


喋っている人もいれば、クエストの掲示板を見ている人もいた。


右側には、いろんな依頼書が貼ってあるパーティ募集掲示板があった。


待ってるのか、だらっと座ってるハンターもいれば、飯や酒を楽しみながら喋ってる奴もいた。


俺たちは受付に歩いていった。きちんと服を着た女が立っていて、温かい笑顔で迎えてくれた。


リンは布の袋を出して、中身を受付の台に広げた。


旅の間に集めた魔石が、台の上に散らばった。


「フィナ、これも頼む。」 とエリックが言った。


エリックはクエスト用紙を女性に渡した。


彼女はマナクリスタルを数え、品質を評価(ひょうか)していく。

両目がうっすらと青く光っていた。


「間違いありません。これはロックホーンのものです」


そう言って、机の上に布袋に入った銀貨を置いた。


「合計で銀貨50枚です。他にご用はありますか?」


エリックは俺の背中を叩いた。さあ、言え、というように。


俺はフィナを見た。


「ハンターになりたい」


「それなら、この書類に記入してください」


俺は書き始めたが、あるところで手が止まった。


「ジョブクラス…これ、何?」


「ここで言う仲間たちの役割のようなものです。


エリックは【タンク】。魔物の攻撃を受け止める役目です。


リンは【アサシン】で、死角(しかく)から素早く攻撃します。


キャシーとロナンは魔法使いで、マナエッセンスを呪文に変えて戦います。


そして【ファイター】は、前衛にも後衛にも回れる、柔軟(じゅうなん)に戦えるクラスのことです。」

フィナは親切に説明した。


(前でも後ろでも自由に戦えるということは……

……どこでも、弱そうに見せるのも自由ってこと!)


迷わず、俺はファイターと書いた。《 FIGHTER 》


エリックとその一行は身を乗り出し、興味深そうに俺の回答を覗き込んでいた。


フィナは記入済みの申請書を手に取り、すべての記入にミスがないか確認している


そして滑らかな球状の水晶を取り出し、机の上に置いた。


「この水晶は、あなたの最も強力なスキルを二つ映し出します。

こちらに手を置いてください」


俺は唾を飲み込み、緊張に押されながらクリスタルに手を当てた。


しばらくして、クリスタルが青く光り、スキルステータスウィンドウが現れた。


フィナとエリックたちは一瞬で驚いた。


「Sランクスキル……」フィナは驚いたように言った。


彼女の声を聞いて、ハンターたちは一斉にこちらへ鋭い視線を向けた。


(やばい……)


そしてフィナの表情は完全に崩れ落ちた。


「Sランクのめまい耐性(たいせい)と、Sランクの吐き気耐性(たいせい)…マナオーラ3700…です」

彼女はがっかりしたような声で言った。


「えっ!?」


俺は、黒竜と青竜にボールみたいに転がされて、目が回るまで弄ばれた時のことを思い出した。


(あああ~.....ざんざんボールのように転がされ、まさか……この耐性(たいせい)が目覚めるとはな……)


「ハハハハ!」


背後のハンターたちから笑いが爆発した。


エリックの左手が俺の肩をポンと叩いた。俺は彼の方を向いた。


彼は感情的になっていて、目が少し潤み、指で涙を拭いていた。


「笑わねえよ、俺は」


エリックのパーティーの連中は、リン以外、みんな、かわいそうそうに俺を見ていた。


リンは視線をそらし、片手で口元を隠した。まるで見ていられないと言いたげに。


「ぷっ……くくくっ……」リンは吹き出しそうになるのをこらえ、肩を震わせた。


「迷子になってる間に、いろいろ大変なことがあったみたいですね」

キャシーは心配そうに言った。


ハンターたちが俺たちの後ろで大声で話していた。


「なんだよあのゴミみたいなスキルは」


「これまで見た中で最悪のランクSスキルだ」


「任務中でも酔わないのか?ずるいよ、兄ちゃん!」


別のハンターがそう言い、笑い声はさらに大きくなった。


◆外の世界』という本には、こう書かれていた。

人は、共に泣き、共に笑うとき、相手を温かく迎え入れているのだと。 ◆


俺は一歩前に出て、感動しながらハンターたちに言った。


「温かく迎えてくれてありがとう。迷惑かけるかもしれないけど、よろしく。」


なぜか、みんなもっと笑った。


俺はまだハンターカードを見つめていた。ランクはE。クラスはファイター。ステータスは未確認。


「Sランクのスキルを持っていながらEランクというのは、さすがに初めてです」

フィナが言った。


(びっくりした……ランクSになると思ってたのに。)


「ノイトラマ、お前のライセンスを祝うために、一緒に飯を食いに行こう。」


俺たちはギルドの一階へ続く階段を上った。


そこには整然とテーブルが並んでいた。


ハンターたちは食事や酒を楽しみながら、会話に花を咲かせている。


笑い声、グラスのぶつかる音、荒っぽい話し声が空気を満たしていた。


温かい料理の匂いと、ほのかな酒の香りが混ざり合い、場は活気(かっき)に満ちていた。


向かい合う四つの席にはエリックたちのパーティーが座り、俺はテーブルの端に一人で座っていた。


テーブルの上はまだ何もなく、注文を待っている。


エリックはお金を平等に分けて、銀貨十枚をそれぞれの前に置いた。


「エリック、俺はお前のパーティーの仲間じゃない。なのに俺にもくれるのか?」


エリックはテーブルに肘をついた。指を顔の前で合わせ、俺を観察する。


「キャシーだけじゃない。お前は俺も助けた。受け取る権利がある」

と彼は淡々と言った。


エリックと仲間たちは、冷たい目で俺を見ていた。

まるで品定めするように、じっと俺を見ている。


「 …… 」


(この感じ…なんか…覚えがある….REAPER…BUNNYだ!)


(…そうだ、死神兎が獲物を決めながら鎌を研いでる時の感じに似てる。)


「わ、わかった…そう言うなら、もらっておく」 と俺は気まずそうに言った。


テーブルの上の銀貨に手を伸ばした。触る直前…


ガシッ!


隣に座ってたリンが急に俺の手をぎゅっと掴んで、びっくりした。

少し経って、彼女は手を離した。


「私にはまだ恩返しが足りない気がする」

とリンが俺をじっと見ながら言った。


リンは銀貨を滑らせ、机の上で俺の銀貨の上に重ねた。


俺は苛立ちを抑えながらリンを横目で見た。


(お前を助けたのはエリックだとキャシーが言っただろが!)


すぐに、キャシーも同じことをした。


「私のも、受け取ってください」


続いて、理由も分からないままロナンとエリックもそれに続いた。


リンはエリックたちの方に視線を向けた。


『なぜみんなが私と同じことをしているのかは分からないが、まあいい……』


リンは視線をそらし、迷っている俺を見た。


『…運が良ければ、私の新たな玩具(おもちゃ)の誕生だ』


銀貨は俺の前に積み上げられる。


彼らの視線は冷たく、じっと俺を見つめていた。


空気がどんどん重くなっていった。


体中から冷や汗が出た。


彼らの視線は、拒否を許さない。


(どうする……試されてるのか?受け取るべきか?)


(重い…すごく重い。)


(間違えたら、この緊張がもっと悪くなりそうで怖い。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。