外の世界
「お前は、俺が今まで知っているどの黒竜よりも、でかいかもな。」
ドラゴンは、まるで己の縄張りを侵されたかのように低く唸り声を上げた。
その二本の前脚の爪が地面を強く掴み、翼がゆっくりと持ち上がる。
翼に走る血管と筋肉がはっきりと浮き出るほどの力強さだ。
次の瞬間、黒竜の全身から幾筋もの赤い稲妻が迸り、その威圧的なオーラが辺りを圧倒した。
俺はその赤い稲妻にわずかに驚いた。しかし、退屈はすでに俺を支配していた。
(赤竜が火の元素を使い、青竜が氷の元素を使うように、この竜は……)
俺たちの周囲の地面が揺れ始め、小さな地震が起こった。赤い雷が、歪んだ圧倒的な力を伴って迸る。
「雷属性か」
俺は構えを変えて、素手で戦う準備をした。
俺は地面をじっと見つめていた。まるで、いつでも飛び出せるように縮こまったバネのように。
俺のマナオーラが黒く吹き出し、赤い雷がパチパチと走った。右手は黒いオーラに包まれていた。
空気がものすごく張り詰め、鳥たちが怖がって森から逃げ出すほどの威圧感に包まれた。
ドォォン!!
一度の翼の羽ばたきの音だけで、黒竜の足元の地面が爆発し、土砂と瓦礫が空高く舞い上がった。
黒竜が、真っ直ぐに走る赤い雷のように、恐ろしい速度で俺に向かって突き進んできた。
ドォォン!!
俺自身の一歩の音で、足元の地面が爆発し、土が空へと舞い上がった。
俺は黒竜に向かって、同じ速度で飛び出した。まるで空気を切り裂く赤い雷のように。
【 JET... DESTRUCTION...FIST 】
ドォォンムッ!!
俺たちの打撃が衝突する音は、まさに大災害の中心のようだった。
森の中に巨大なエネルギーの爆発が生まれ、木々は根こそぎ引き抜かれ、震源地の周囲で激しく回転した。
稲妻が閃いた。
土煙が巨大な竜巻のように渦を巻いた。
俺の拳は、竜の手のひらと力比べで拮抗していた。
俺は拳を握りに変え、竜の指の一本を掴んだ。
すると、竜の押し込みで肘がわずかに曲がった。
そして片手で、竜の指を左にひねった。
(バランスと力が崩れかけてきた。)
次に、俺は渾身の力でその指を右へ押し込みながら捻り上げた。
ゴォッ――
黒竜のそれまで集中していたエネルギーが、突然あらゆる方向へと散っていった。
奴はバランスを崩し、地面で何度も何度も転がりながら倒れた。
少し疲れた感じで、俺はフラフラになった竜が転がっていくのを見ていた。
「やっぱり、湖で覚えたカニみたいな技は、うまく使えば力も防御も壊せる。
……遊びはもう終わりだ。」
俺は背を向け、黒竜から歩き出した。
「さようなら」
数歩歩いたら、背後から怒りのエネルギーが湧き上がるのを感じた。
反応するのが面倒で、俺は大きくため息をついた。
「グォォオオ!!」
黒竜の怒りの咆哮が響き渡った。その周囲に雷が落ち、地面を壊滅させた。
俺は振り返って、竜に向き直った。
しかし、奴はすでに《JET DRAGON FIST》の構えをとっており、いつでも突進できる態勢に入っていた。
(ん?……前より強い…)
目を下に向けた。
(退屈はまだ俺にまとわりついている……)
ドォォン!!
黒竜の翼の羽ばたきの音が、奴を目にも止まらぬ速さで俺に向かって飛ばした。
その攻撃の音は、今や俺の耳ではくぐもって聞こえた。
時間がゆっくりと流れ始めたかのようだった。
竜の爪は、明るい赤い雷をバチバチと鳴らしながら、俺の前でゆっくりと鈍く動いていた。
(避けることもできる。防ぐこともできる。反撃して殺すこともできる。止めることだってできる。)
(この退屈は……)
黒竜の爪がついに俺の体に触れ、まるでスローモーションのような圧で押し込んでくる。
俺は目を閉じた。
(……本気で俺を殺したい)
ドグォーン!
黒竜の攻撃のすごいエネルギーで、俺は夕方の空に赤い尾を引く彗星みたいに斜め上へ飛ばされた。
「……」
黒竜は空を見上げ、視界から消えるまで遠くへ飛んでいく俺を見送っていた。
やがて背を向け、そのまま巣へと歩き出した。
「あの人間……」
黒竜は苛立った様子で洞窟の中へ入っていった。
「……まだ自分の使命に気づいていない……」
黒竜はゆっくりと自分の巣に伏せ、目を閉じた。
「その日がついに来るとき……」
完全に目を閉じた。
「……この世界は血に染まるだろう。」
◆◆◆
俺はゆっくり目を開けた。
最初に見えたのは、夕方の広いオレンジがかった黄色の空だった。
俺はかなりの速度で空中を漂っていた。
黒竜の攻撃による赤い雷の残効がまだ体にまとわりつき、まるで彗星のような見た目になっていた。
(どうやらまだ竜の攻撃で吹き飛ばされ続けているらしい、ん……体はそれほど痛くない。
……もう着地しようか?)
「……」
「あの本に書いてある外の世界に行きたかったけど、どっちに行けばいいかわからなくて…だから…
……今着地しようが後で着地しようが…結果は同じだ。」
俺は目を閉じて、自信たっぷりに笑った。
(迷子…)
突然あることに気づいた。
「この辺りのマナエッセンスはかなり軽く感じる。もうヴェドラの森を出たのか?」
(そういえば、黒竜がこんな風に斜め上に攻撃してくるのは見たことがなかった。
今まで見てきた限り、奴は縦か横に攻撃するのが普通だった。)
「もしかして…あいつ、俺を外の世界に向かって飛ばしたのか?」
俺は赤い彗星みたいに空を飛び、だんだんスピードが落ちて降り始めた。
でも気にせず、自分の考えに没頭した。
(…もしそうなら、絶対に恩を返す。)
バキッ!
俺の体は斜めに木にぶつかった。高速で突っ切ると、中くらいの木が何本も折れて倒れた。
「うっ…!」
ようやく地面に当たり、何度か転がった。
バキッ!
大きな木に背中がぶつかり、背骨が激しくしなった。
「ああぁ…くそ…ああぁ!」
俺はすぐにうつ伏せになって、片手で背中を押さえた。
「今の…なんだったんだ?!」
立ち上がって、もうボロボロの服についた土や枝を払い落とした。
深呼吸をして、両腕を広げて空を見上げた。
「おお、神よ!道を示してくれ!ここはどこだ?!」
それが俺の必死な叫びだった。
静まり返った中、俺は全部のマナオーラをあらゆる方向に広げた。
「ん?!…この感じ…」
すぐに、俺は気がついた。
戦っている五つの命から、変なマナオーラを感じた。
俺は耳を澄ませて、めちゃくちゃなマナオーラの流れを感じ取った。
「ERICK、危ない!」
ドォン!! ドォン!!
「今だ!氷魔法を放て!」
カチン…
「ああぁ…めっちゃ寒い、なんかおしっこしたくなってきた…」
バキッ!
「ああっ…足が!早く治してくれ!」
俺は目を開け、顔を上げて、声のした方へ視線を向けた。
両目が赤く光り、まるで獲物を狙う獣のようだった。
「俺と同じ言葉だ……間違いない。」
次の瞬間、俺のマナオーラが爆発し、午後の空が夜のように暗転する。
「外の世界……!」




