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黒剣の退屈  作者: Leopardz
隠す影
15/18

眠れる死神

ズ…… ズ......ズ……


俺は木の枝の上にあおむけに寝そべり、手足の半分をだらりと垂らしていた。


夜風がそっと吹き、周りの葉を揺らす。


「がっ…」


はっと目を覚ます。息が切れていた。


(月)


その光が木々の隙間から差し込み、俺の顔を照らす。


やっとの思いで体を横に向ける。枝がきしむ。

ドンッ。


俺の体は地面に叩きつけられた。


木の枝からわざと落ちたんだ。ミスじゃない。ただ、じわじわ襲ってくる眠気を追い払うためだ。


「確か、夜に寝たよな……で、今も夜。何日寝てたんだ?」


「…………」


(返事はない……か…)


遠くで夜の虫の声だけが響いていた。


俺は目的を思い出した。


「ゴ、ゴブリン……」


大きく息を吸い、無理やり体を起こす。足が重い。


どうにか立ち上がるが、まだ眠気がまとわりついている。


歩き出す。背中はだらりと曲がり、足取りは重く、だるい。


まるで見えない何かを引きずるように、ずるずると歩いた。


ザッ……ザッ…… ザッ……


足元で枯れ葉がかすかに鳴った。


(俺はただのアリ… ただ…ただのアリ…)


俺はマナオーラを深く隠し、その存在感を限りなく薄くした。ほとんど無に等しい。


【 SILENT 】


今の戦闘力は、たったの1だ。


まるで、地面を這う蟻みたいなものだ


俺は腰の小さな袋に手を入れた。指が一枚の古びた紙に触れ、それを引き抜いた。


そこに描かれていたのは——間抜けな顔をしたゴブリンが、木の棒を手にしている姿だ。


(俺の獲物…)


腹の膨れた大柄なオークの魔物が、俺の前を横切った。


その重い足音が地面をわずかに揺らし、周囲の枯れ葉を震わせる。


俺はそのまま歩き続けた。


すれ違いざま、足がそいつの脚にかすった。


少しよろけたが、そのまま歩き続ける……何もなかったかのように。


オークは足を止めた。首をかしげ、困ったように自分の足を掻いている。


まるで足元をアリでも這っているかのように。


そして俺は、そのままそいつの横を通り過ぎていった。


(違う…)


ザッ……ザッ…… ザッ……


俺の足音は、地面を擦るように引きずられていく。


時折あくびが漏れる。眠気がどんどん重くなる。


それでも俺は、無理やり歩き続けた。


一匹の大きな狼が木の根元に寝そべっていた。


分厚い毛並みは赤色をしている。


そいつが俺を見る。俺も見返す。


「…………」


俺はあくびをした……


……奴も大きくあくびをし、長い牙を見せつけてから、再び目を閉じた。


俺はそいつの横を通り過ぎた。足取りは変わらず重く、足を地面に引きずるように進む。


後ろの方で、あの狼の小さないびきが聞こえた。


数分前と同じように、もう眠っているらしい。


(違う…)


俺は依頼用紙を見ながら歩いていた。


ゆっくりと目を閉じる。それでも足は止まらない。


意識は、夢と現実の境目を漂っていた。


体はまるで本能だけで動いているみたいだ。


「ゴブリン……ゴブリン……ゴブリン……」


無意識のうちに、俺は赤狼の巣の真ん中まで足を運んでいた。


何十匹もの大きな赤い毛の獣が、周りで寝ている。


黒い雲がゆっくりと月から離れていく。


月光が徐々に差し込み、奴らの毛並みを照らした。


それはまるで、眠る炎の海のように揺らめいていた。


俺はまだそいつらの真ん中を歩いていた。


足が、不意にぐっすり眠っている狼の足に触れた。


ドン!


体が地面に叩きつけられ、何度か転がる。


その音で、周囲にいた狼たちの目が一斉に開き、こちらを向いた。


俺は必死に体を起こそうとする。彼らの視線など気にしない。


(重い…)


(眠い…)


連中は、まるで立ち上がるのに苦労している蟻でも見るような目で俺を見ていた。


狼たちは大きくあくびをすると、また前足の上に頭を乗せて横になった。


俺がようやく立ち上がると、また歩き出した。 やつらの間を、一体ずつ通り過ぎていく。


温かい巨体からは、ゆるやかな吐息が周囲に流れていた。


(こいつらも違う…)


ザッ……ザッ…… ザッ……


俺の足取りが、冷たい石の地面を擦る。


ガキン! ガキン! ガキン!


金属のぶつかる音と、何かの魔物の咆哮が聞こえる。


どこかで戦いが繰り広げられているようだ。


俺はその音を無視し、重い眠気を抱えたまま歩き続けた。


そこでは、パーティー『THE ANGEL WING』がロックホーンと戦っていた。


人数は三人だけ。


ロッカーのような統一された装い。戦闘用ジャケット、荒々しい気配、そして同じ武器――グレートソード。《 GREATSWORD 》


クラスも同じ、ファイター。《 FIGHTER 》


全員男だった。


みんな息が切れて、体中疲れ切ってた。


その頃、ロックホーンも岩の体にヒビが入り始めていた。


ザッ……ザッ…… ザッ……


俺はそのまま歩き続けた。


目は半分閉じかけたまま、戦闘の真ん中を横切ろうとしていた。


「ポコ!一般人がいる!」


ポコは戦闘の合間に、こちらへと素早く振り向いた。


「おい!お前!ここは危険だ!早く逃げろ!」と叫ぶ。


「…………」


返事はない。


「まずい……耳が聞こえないみたいだ」仲間が緊張した声で言った。


ドン! ドン! ドン!


ロックホーンが地面を蹴りつけ、角を突き出したままポコへと一直線に突進する―その進路の中央に、俺が歩いていた。


ポコはすぐに前傾姿勢で駆け出し、片手で大剣の刃を地面に引きずりながら走る。


「クソッ!目の前の一般人に手を出させるかよ!」ポコが叫んだ。


彼は俺を追い抜き、その後ろから二人の仲間が続いた。


魔物が射程に入った瞬間、ポコは一度だけ体をひねり、攻撃の勢いを生み出した。


そのまま跳躍し、両手で大剣を強く握りしめた。


【 HEAVY SLASH!】


ガキン!


ポコの剣がロックホーンの頭部を叩きつけた。


彼はロックホーンの動きを止めようと必死に踏ん張る。


両者は力をぶつけ合い、ポコの両足は地面に引きずられながら後退し—ついには俺のすぐ真横まで来た。


ガキン! ガキン!


二人の仲間が左右から斬りかかり、魔物の動きを抑え込む。


ロックホーンの動きが一瞬鈍った。


「早く……今すぐ……逃げろ…俺はもう……限界だ……」


その声は夜風のように耳に流れ込んでくる。


俺はその横を、ゆっくりと歩き続けた。


「ぐはっ!」


背後から音がした。


「ポコ!!」


ロックホーンは俺を無視し、『THE ANGEL WING』との戦いを続けていた。


(こいつらも違う…)


ザッ……ザッ…… ザッ……


俺はまた歩き出した、どこへ向かっているのかも分からないまま。


依頼用紙に書かれた獲物をもう一度見た。


暗い木の枝の上に、一人の少女がしゃがみ込んでいた。


彼女は青い制服を身にまとい、冷たい目つきで俺を覗き見ている。


俺の足は地面を引きずるように歩き、背中はまるで死にかけているかのように丸まっていた。


彼女の眼下で、ただ死を待つだけの姿で。


巨大な猪 — 頭には雄牛の角、口からは大きな牙が突き出ている — が、静かに俺の後ろを歩いていた。


「あの魔物……狩りをしてるんじゃない 」 少女は心の中で呟いた。



「遊んでいる。獲物に希望を持たせて……最後に殺す、猫とネズミみたいに」


彼女はそう結論づけた。


シャリーン……


彼女はゆっくりと剣を鞘から抜いた。

刃が露わになるにつれて、かすかな音が響き、鋭く冷たい光を反射させた。


「哀れな男。私の剣が、一瞬でその苦しみを終わらせてあげる。」



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