表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【自信作】心に「オジサマ」を飼うお嬢様のマナー~とんでもない名家のお嬢様なのに、気づけばクソボケ扱いされていました~【毎日投稿】  作者: ながつき おつ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/47

13話 連れ去られる 5/6

気に入っていただけたら、★やブックマークで応援してもらえると嬉しいです。



 私には、全てがスローモーションに見えていた。頭の中は熱いのに、頭の芯は冷静だ。


 今の私は完璧なコンディションなのではないだろうか。心の中のオジサマと私が、何も言わずとも完全に息ぴったりだからかな。


 そんな風に考える余裕すらある。


 いつになく視野が広い。周りの様子が手に取るように分かる。


 お姉様は私の指示通り、撮影に専念してくれている。

 

 よーこは私の盾となり、そこまで運動が得意でない有象無象を惹きつけてくれている。


 ただ、一人。


 彼女だけは、よーこに釣られない。射殺すような目で私を捉え続けている。


 柔道の天才。えりちゃん。

 

 えりちゃんだけは、どうあっても私の力だけで超えなければいけないようだ。

 

 でも、今の私は、誰にも負ける気がしない。

 

――この戦いは、私のものだ。



 えりちゃんが私を捕まえようと構えている。彼女はイグアナみたいに可愛い顔をしているのに、とんでもなく度胸がある。


 でも、構うもんか。一秒たりとも私は無駄にしない。


 真正面から全速力でツッコんでいく。


『ダメだと思った時、意外と一歩なら前に進めるやつもいるんだ。だから、私は二歩進む』


 思い出すのは、三女様の言葉。


 そう、二歩だ。相手の想定を超えて、二歩前に進んだ時、相手は怯むのだ。


 相手の射程圏内に入ろうが、スピードは緩めない。


 ……もう、ダメだ!捕まる――!


 心に弱音がかすめても、スピードは緩めない。


 一歩、ぐんと前へ。


 えりちゃんがかすかに息を飲んだ。


 それでも一瞬で立て直し、私のドレスを、小指で引っ掛けた。そこを起点に力を入れ、しっかり私を捕まえようとした、その寸前。


 もう一歩、ぐんと前へ。


 頭突きをしてしまうくらい、前へ前へ。


 流石の彼女も怯んだのだろう。ほんの僅かに後ろへ身体を引き、回避行動をとった。


 その僅かな隙。そこに付け入り、私は急にぐんと身体を小さくして小指を振り払い、えりちゃんの股下をスライディングしてくぐり抜ける。


 激しい動きのせいか、ドレスのどこかから、ビリっと、嫌な音がした。裸足でスライディングしたことにより、足に、痛み未満のヒリヒリが襲ってくる。


 でも、気にしない。


 後は、もう彼女を置き去りにするだけだ。単純に、私の方がちょっとだけ足が速い。


 全速力で走りながら、


「えりちゃん!後、他のみんなも!この後、絶対に私のダンスパーティーに来てね!みんな、私の大好きな人なんだからね!絶対だよ!」


 そう言い残し、どんどん進んでいった。


 走り、走る――!


 さあ、もう会場は目の前だ。


 会場の重い扉はすでに開かれていた。優しい誰かが私に協力してくれたのだろう。


 ありがたい。美少女ドロップキックで扉を開くつもりだったが、その必要がなくなった。



 会場に入ると、人の熱気と共に、大量の視線が私に集まる。


「タイムは……残り約20秒!ギリギリセーフ!」


 開口一番のこんなセリフに、少し笑いが巻き起こった。会場が温かい空気に包まれていて、幸いだ。


「……コホン。では、白佐藤かな主催、ダンスパーティーの第二部。“和風仮面舞踏会”の開催だ――!ウェルカム・トゥー・かなちゃんワールド!」



❀❀❀❀❀❀



 強めの和風テイストに、仮面舞踏会らしいヨーロッパの雰囲気を調和させたこの空間。私が作り上げた、私の世界。


 この会場には、私の好きなものばかり詰め込んだ。


 まず、和風と夜。この二つの相性って最高だと思うんだよね。


 他にも、さくらの奏でるゲームBGMや、小さく置いてある塊根(かいこん)植物のパキポディウムとか。白佐藤家流の華道ではあまり使わないけど、塊根(かいこん)植物ってすごく好き。あのずんぐりむっくりさがすっごくツボ。


 そして、会場には私の大好きな人たちが、私と遊んでくれる。


 こんなの、テンションが上がらないわけがない!


「さあ!さくらの奏でる音に合わせて、自由に踊れ!どんどん私も乱入するから、覚悟しておけよ!」




 突然嘘みたいなことを言うが、私は人を見ると、その人の胸の内から打ち鳴らす鼓動で、どんな人なのかが何となく分かる。


 いくら私の聴覚が優れているからといって、実際に人の鼓動が聞こえているわけではないはずだ。これはきっと、ただの直感に、私なりのイメージを結びつけただけのものなのだろう。


 でも、この特技が私は妙に気に入っているし、私は本気で鼓動が聞こえていると信じている。


「あなたは……うん、すぐ分かった。ゆうき君でしょ? ほら、正解。雀みたいに可愛い顔してるから、君にはこの雀お面を与えよう」


「君は、簡単簡単。ひなたちゃんでしょ? はい、正解。ナマケモノみたいな可愛い君には、ナマケモノお面を授けよう」


 踊りながら、ダンスパートナーの仮面の下が誰なのか、次々当てていく。


 みんな制服を着用し、仮面で顔の上半分を隠している。人も本当にたくさん来ている。


 普通なら、全員が誰かを当てるなんて、不可能だろう。


 ただし、私なら絶対にできる。鼓動を聞けば誰が誰なのか一目瞭然だ。


 そう、私はこの会場にいる人、全員の名前を当てるつもりなのだ。


「うん。来鈴木(らいすずき)先生でしょ? せいかーい!先生はサメみたいなかっこいい雰囲気をまとっているから、このホオジロザメお面を与えましょう」


「んだよ。三馬鹿は簡単すぎる。三馬鹿はみんな、自分がさも特別だっていう雰囲気をまとっているからな。三馬鹿の長男は、この魔王仮面でも身につけてろ。なんてね」


 くるくる踊りながら、どんどん当てて、私のイメージとぴったりな仮面を配っていく。人数が多いので、踊りは優雅さより、勢い優先だ。


 ……ああ、楽しいなあ。みんなの弾むようなドキドキが、私にも伝わってくる。みんなと踊っているだけで、自然と口角が上がってしまう。



 鼓動を感じるという特技があるからか、私は人の「らしさ」を見抜くことが得意だ。


 誰一人同じビートではないし、音色も違う。どんな音も私は大好きだ。一人ひとり、それぞれ素敵な魅力がある。


 このダンスパーティーを通じて、私は否定したい。みんなは、決してありふれた存在じゃないってことを。


 私の世界に「普通」は存在しない。だって、全員が普通だったら、見分けられるわけがないでしょ?


 私にとって、みんな特別で、大好きだってこと。この当てっ子ゲームを通じて、みんなに伝わるといいな。


感想、ツッコミ等、じゃんじゃんお待ちしています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ