15.迎えたその日
「おめでとう、サラ」
「ありがとう、お兄さま」
わたしはこの日のために用意したとっておきのドレスを着ている。
指にはジャンからもらったリング。
仕上げをしなくても充分に素敵だからと、ラティに返してもらったあの日からずっとはめたままだ。
「時間だよ」
礼服に身を包んだお兄さまは、我が兄ながら完璧だった。
そんな兄だけれど剣ではジャンに敵わないのだという話を聞いたのは、森から帰ってきたときだ。
お兄さまとジャンとでは少し年が離れているけれど、親しくしているらしい。
「わかったわ」
「ジャンと仲良くな」
「もちろんよ」
わたしはしっかりと頷いて控え室の外へと向かう。
お兄さまが開けてくれたドアを出て、廊下をゆっくりと歩く。
「なんでジャンがおまえの求婚になかなか応えなかったか知ってるか?」
背後から投げかけられた問いに、わたしは足を止めて振り返った。
そういえば、なんでだったんだろう?
ジャンが昔からわたしのことを想っていてくれたらしいということはあの日わかったけれど。
わたしが首をかしげていると、お兄さまがくすりと笑った。
「おまえに贈るそのリングのデザインをずっと悩んでいたんだそうだ。結婚指輪を贈るのは一生に一度だけ。だからこそおまえが喜んでくれる最高の物を贈りたかったんだって聞いたよ。
あいつはわかりにくい奴だけれど、おまえが思っている以上におまえのことを愛してるみたいだ。幸せにな」
わたしは目を瞠った。
ここのところジャンには驚かされてばかりだ。
「教えてくれてありがとう、お兄さま」
「どういたしまして。さあ、ジャンが待っているよ」
頷いて、わたしは大好きなジャンのもとへと歩き出した。




