14.森の中の婚礼
胸に飛び込んだわたしを、ジャンがしっかりと受け止めてくれる。
ジャンがわたしを想って作ってくれたというのが、とてもよく伝わってくる素敵なリングだった。
間違いない。これはわたしにとってとても大事なものだ。
世界にひとつしかない結婚指輪。
「さあ、この森の主が立会人だ。ふたりで絶対に幸せになると誓えるかい? ジャン」
ラティの声に顔を上げる。森の主が金の瞳をきらりと光らせて問いかける。
「誓う」
「サラは?」
「もちろんよ」
「じゃあ、誓いのキスを」
神妙な顔をしたラティが促す。
わたしはすぐそばにあるジャンの顔を見上げた。
翡翠色の瞳に、わたしが映っているのがわかる。
心臓が早鐘を打つ。顔が熱い。
「ジャン……」
ゆっくりとジャンの顔が近づいてくる。
ジャンの瞳に映るわたしの姿も近くなる。
鼻先が触れそうになったそのとき、ジャンの顔がぴたりと止まった。
「ジャン?」
「目を閉じて」
言われてあっ、と気づく。
いけない。ついジャンの瞳に魅入ってしまった。
慌てて瞳を閉じると、唇に温かいものがほんの一瞬だけ触れた。
それがすごくジャンらしい。
「おめでとう!」
ラティの声が聞こえるのと同時に、誓約の間静まり返っていた鳥たちが競い合うように鳴き始める。
動物たちもそれぞれに鳴き声を上げ、すごくにぎやかだ。
「ありがとう、みんな」
嬉しくて泣いてしまいそうだ。
ジャンに身を委ねたまま目を伏せると、突然体が宙に浮いた。
「きゃっ!」
咄嗟に、ジャンにしがみつく。
わたしを抱くジャンの腕にも力が入る。
ふたりそろってどさりと落ちたのは、なんと幻獣の姿に変化したラティの背中の上だった。
ふさふさの銀色の長毛に埋もれそうだ。
「ラティ!?」
「眺めはどう?」
訊かれて辺りを見渡す。
ラティの背の上は森の木々よりも高く、どこまでも広がる樹木の絨毯が見えた。
そして遠くには輝く湖と、高くそびえる山脈が見える。
山頂は解けることのない雪のため白く染まっている。
わたしはほうと息を吐いた。
「きれい……」
「ああ、すごいな」
「それはよかった。これがぼくからのお祝いだよ。しっかりつかまっていてね、少し走るから」
言うなりラティが走り出した。
どうやって走っているのか、ほとんど揺れない。
風をきって走るラティの背で、わたしたちは絶景をたっぷりと堪能した。
ラティの背中から下りるとき、足を滑らせたわたしを、下で待っていたジャンが受け止めてくれた。
予想以上にたくましい腕にしっかりと抱きとめられて、わたしはまたしてもジャンに惚れ直すことになった。
ラティの背に乗っている間、リングを落としてしまわないようにとずっと手を握りしめていたことは、わたしだけの秘密だ。




