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16.わたしたち、幸せです

 ジャンは伸び放題の前髪を上げて整えていた。

 そうすると黒い髪に翡翠色の瞳が映えて、とても格好よく見える。

 並んで教会の外へ出ると、祝福のために集まっている人々の間から驚きの声が上がった。


 わたしはジャンの手に支えられてゆっくりと階段を下りる。

 いつものジャンも好きだけれど、礼装をしたジャンはいつにも増して素敵だ。


 みんな、精一杯着飾ったわたしよりもジャンの豹変ぶりに気を取られているみたいだけれど、わたしは大満足だった。


 わたしの自慢の旦那さまなのよ。

 外見だけじゃなくて、中身だってすごく素敵なのよ。


 隣を歩くジャンの顔からは、相変わらず何を考えているのかわからないけれど、そんな彼への気持ちは溢れるばかりで留まることを知らない。


 わたしの指にはジャンが一生懸命考えて作ってくれたリング。


 お父さまお母さまお兄さま、それにジャンのおばあさま――今日からわたしのおばあさまでもあるわ――、それに集まってくれたみんなに見守られて、わたしは幸せを噛み締める。


 見上げるとそこには晴れわたった空が広がっている。


 ジャンのお母さま、お父さま、見てくださっていますか?


 そのとき、森から狼に似た遠吠えが聞こえた。

 一度だけ、でも長く大きく響くその声は、確かにわたしたちのもとまで届いた。


 わたしとジャンは目を見合わせた。

 ジャンの瞳に映る花嫁は、これ以上なく幸せそうな表情をしている。


 わたしはジャンの手をぎゅっとつかんだ。


「何?」


「ずっと一緒にいようね」

「ああ」


「大好きよ、ジャン」


 わたしの告白に、ジャンは何かを覚悟したかのようにひとつうなずいた。

 そしてわたしの耳に顔を近づける。


「おれもだよ、サラ」


 耳もとで囁かれたその声にどきどきして思わずうつむいてしまうわたしを、ジャンの腕がしっかりと支えてくれる。


 ありがとう、ジャン。

 とても大事な人。これからもよろしくね。

 そしてみんな、素敵な結婚式をどうもありがとう。


 わたしたち、幸せです。


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