11.大親友の登場
わたしは唖然としてその様子を見ていた。
ジャンは何事もなかったかのように剣を鞘にしまうと、それを腰に吊るした。
「ジャン……」
「剣を使うほどのことはなかったな。鞘で充分だった」
男たちを見下ろしながら、ジャンはぼそりと呟くように言った。
言葉どおり、ジャンは誰も斬っておらず、男たちの怪我はせいぜい打ち身、運が悪くて骨折程度だろう。
「大丈夫なの?」
ジャンに駆け寄り、問いかける。
「おれが、いつ大丈夫じゃなさそうに見えた?」
「見えなかったけれど……。いつの間にそんなに剣が使えるようになったの?」
盗賊を相手に立ち回るジャンは猛烈に格好よかった。
惚れ直してしまった。
でも、その事実を今まで知らなかったのは少し悔しい。
「いつって、ずっと前からだけど?」
「だって……稽古をしてるところなんて見たことがないわ」
「剣の稽古なんて面白くないだろ。人に見せるようなものでもないし。ただおれの仕事はお客さんの金を預かるわけだから、その金をほいほい奪われたら商売にならない。盗人を追い払うくらいはできないと困る」
それはそうかもしれないけれど……。
「でも、熊に会ったときにはめちゃくちゃ及び腰だったじゃない」
「あれは……おまえが森の動物たちは友だちだとか言ってたから、無闇に斬りつけるわけにはいかないと思ったんだよ。友だちならおまえがなんとかするだろうと思って、任せただけだ」
ジャンが面白くなさそうに言う。
「そっか……」
熊に怯えていたわけじゃなくて、思案していたのか。
ジャンがわたしを信じてくれていたのだとわかって嬉しくなる。
やっぱりジャンは最高だわ。
そのとき、どこからともなく拍手の音が響いた。
「誰だっ!?」
ジャンが誰何する。
「さすが『ラルナートの凍てつく剣』ジャン・エールソンだ」
手を叩きながら現れたのは、幻獣が姿を変えた、銀髪の小柄な少年――ラティだった。




