月光 マイの技
「………………………………」
ある日の月光の拠点。
そこでは、珍しくはないが朝からずっとマイがソファで寝ていた。
マイがソファで寝ているのはいつものことだが、朝からずっとというのは、日菜は見たことがなく、困惑と心配が心の中にあった。
「あの、ルナさん。マイさん、どうされたんですか?」
「あ〜、マイはね〜………。ちょっと技の関係で……」
「マイさんの技?」
日菜はマイと何度か任務に出たことはあるが、マイが技を使っている素振りは見たことない。そして、マイの技について教えられたこともない。
「別に教えていい」
「あ、そう?なら教えるけど、マイの技は『満月変身』って言って、毎月、満月の日には力が数倍になるの。けど、マイはそれをコントロールできないから、満月の日は任務にも外にも出ずにソファで寝てる」
「そんな理由が………」
マイは体型はまだ少女だが、武器は『大槌』という、成人でも持てないほど大きなハンマーを扱う。体に対して力が強い。その力が数倍になりコントロールできないとなると、任務に赴くと一般人や建物に被害を及ぼしてしまうかもしれない。
マイはそれを考慮して、満月の日は月光の拠点で寝るだけだ。
「でも、マイさんって、住んでるところここから離れてますよね?来る間は大丈夫だったんですか?」
「マイは毎月満月の前日になると月光に泊まるんだよ。何かあっても私たちがマイを抑えられるようにね」
「なるほど………」
マイの超人的な力がコントロールできないにしても、月光のメンバー、中でも力の強いユヅキがいたら大丈夫だろう。という考えで、マイは前日からずっと月光の拠点にいる。
「………子供の頃はこの力で迷惑をかけたから……」
「子供の頃………」
(マイさんって何歳なんだろう……)
「あんた、私の年齢気になってるでしょ」
「 !? いえ、そんなことありません!」
日菜の考えていることが、今では月光のメンバー達はわかるようになっている。
「マイは25だよ。私と7歳違い!」
「ルナさんは18歳でしたよね」
「そうそう!ソラキと同い年!」
ムンドゥスでの成人は20歳。だが、それもまた種族によって違う。鬼人の中ではルナはまだ小学一年生ぐらいだ。
日菜は現在15歳だが、オルディナツィオにいる人の大半が18歳以上。むしろ、15歳でオルディナツィオに務めているものは現時点では日菜しかいない。
その理由は、試験が関係する。試験は一度受けて合格するのは稀な話で、大体は二度三度落ちて合格する。
しかし、日菜は一度の試験で合格した。
「日菜はすごいよね〜!15歳で一発で合格しちゃうんだもん」
「結果を見たら実技はあんまりでしたが……」
「それでも合格できたんだから!」
ルナとソラキは15歳から試験を受けて一度落ちた。合格したのは次の年の16歳だ。
「オルディナツィオはいつ命を落とすかわかんないから、ソラキは大事な同期なんだよ!」
「他のチームにも同期はいるだろ?」
「同じチームで!」
命懸けの任務に、毎年十数人程度しか合格しない試験。同期というのはオルディナツィオ内では大切な存在だ。
そして、チームはマイのように自身の技をコントロールできない者でも安心していられる場所だ。




