月光 最後
「日菜の……、お別れ会……」
「元気なさすぎ!」
日菜が翌日には異動するので、お別れ会をキウィタス中心部にある店でしているのだが、ルナが最初の言葉を言うはずが、元気がなかった。
いや、元気がないと言うより、日菜と別れることが嫌だからだろう。
「ルナさん。別に、ここで別れても遊びにきますから!」
「でも………」
「はぁ………。香、先に食べ始めちゃいなさい」
マイはそう言って、先に食べ始めた。気づくと、ユヅキとソラキも食べ始めている。しかも、マイとユヅキのそばには大きなジョッキに並々注がれたお酒があった。
「お二人とも、そんなにお酒を飲んで大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。私とユヅキはお酒強いもん」
「この2人、オルディナツィオ内では結構な酒豪だよ」
月光では成人を迎えているのはマイとユヅキだけなので、日菜とソラキとルナはお酒を飲まず、お茶や炭酸飲料を飲んでいる。
ルナはもうやけになったのか、ものすごいスピードで食べていた。
「そういえば、次の異動先って登竜山だよな?」
「はい。地元なので出勤は30分もかかりません」
「良かったね!登竜山のメンバーもいい人ばっかりだし!」
「リーダーのチャンさんとも知り合いみたいだしな」
日菜がこの前信楽と一緒に出会ったチャンは、次の異動先『登竜山』のリーダーで、地元のチームなので知り合いだ。登竜山のメンバーとも顔見知りである。
「絶対遊びにきてね〜!」
「おいおい、ルナいい加減に……って、お前酒飲んだのか!?」
ルナの腕の中には酒の瓶があり、ルナの顔は少し赤くなっている。
ルナはまだ未成年だが、鬼人という種族は体が頑丈なので酒を飲んでも大丈夫だ。
すると、マイも流石に飲みすぎたのか顔を赤くしている。その後、住数分したら2人は寝落ちし、お別れ会はお開きになった。
ユヅキが2人を抱えて月光に戻っていった。ソラキと日菜の2人は、場の雰囲気で酔ってしまったためゆっくり歩きながら月光へと向かう。
「…………日菜とはお別れか………。寂しくなる」
「たまに戻ってきます」
「「…………………………」」
2人の間に沈黙が流れる。日菜は気まずいとしか思ってないが、ソラキの方は酒を飲んだわけでもないのに、なぜか顔を赤くしていた。
このまま2人で帰ると思っていた日菜に、ソラキが口を開く。
「なぁ、俺、日菜に話したいことがあってさ………」
「 ? なんですか?」
ソラキは一度上を向いて大きく息を吸うと、日菜と目を合わせた。
「俺は————————
日菜のことが好きだ」
「………………………………え」
ソラキの突然の告白に、日菜は動揺を隠せず顔が一気に赤くなる。それを見たソラキもさらに顔が赤くなった。
「別に、返事は今じゃなくていい。ただ、気持ちは知っといてもらいたくてさ」
「っ………………」
ソラキのいつもの笑顔に日菜は言葉を失う。
今返事をするべきなのか、返事はしないほうがいいのか、これからどうやって接すればいいのか。
様々な疑問や困惑が頭の中で浮かぶが、ソラキの笑っていても真っ直ぐな瞳でそれが吹っ切れた。
「私を……、好きになってくれてありがとうございます。返事はまだですけど、感謝だけは伝えさせてください」
「………。あぁ」
(今はただ、感謝を………)
日菜の言葉にソラキは納得したかのように軽く笑うと、日菜の手を引いて歩き出した。日菜もソラキの後をついていく。
2人はずっと笑いながら、月光へと戻っていった。




