月光 偽装婚約のエピソード
「お邪魔します!」
元気よく月光の扉を開けたのは、金烏の蘭香だった。
今日は、ルナと蘭香が遊ぶ約束があったからだ。
「いらっしゃーい!」
「あっ、そうそう。ソラキと香ちゃんのこと、オルディナツィオ内で既に広まってるよ。カイキが変な顔してた」
「マジか…………」
(え、偽装婚約の話されたの昨日なんだけど)
オルディナツィオの構成員は100人程度。何かあれば、翌日のうちには50人以上に広まっている。
他にも、今回の話が広まった要因は、ルナが親しい者にも話したからだが。
「というか、2人とも、偽装とはいえ婚約者なんだからデートしてきたら?」
「そうそう!アザリアガーデンに行ってきたらいいよ!」
ルナと蘭香は、日菜に少しだけ化粧をすると、日菜とソラキの2人を無理やり月光の外に出した。
2人は顔を見合わせて、しょうがないと思いながらも笑って、アザリアガーデンへと向かっていった。
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「そういえば、香の普段の服、それにするのか?」
「はい。仕事がある日はこの服にしようかなと」
「いいと思うぞ。で、どこに行く?」
2人が今いるのはアザリアガーデンの中央。アザリアガーデンの中央は大きな庭になっていて、様々な草木が植えられていてベンチに座って休憩することができる。
行くところが決まっていない2人は、とりあえずとここに来た。
「何かお揃いものでも買うか?」
「あっ、いいですね。何にします?」
「ピアスとかどうだ?俺も香も開けてるし」
ソラキと香はまだ未成年だが、オルディナツィオに入る際にピアス穴を開けている。開けるという規則ではないのだが、ピアス型の発信機や連絡装置をつける場合があるからだ。
「どうせなら、私とソラキさんの互いの色のピアスをつけます?」
「いいよ。じゃあ行こうか」
買いたいものがまとまると、2人はアクセサリー屋へ向かった。
アクセサリー屋ではそれぞれの色、ソラキだったら日菜の赤色、日菜だったらソラキの黄色のピアスを買ってつけた。
細かくいうと、ソラキの色はレモンイエロー、日菜の色はローズだ。ソラキのレモンイエローは瞳の色。日菜のローズは瞳の色もなんでもないが、誰もが直感的に日菜には薔薇の色が似合うと感じる。
「私、子供の頃から薔薇が似合うと言われるんです」
「あぁ。確かにね。俺も直感的に香には薔薇が似合いそうだなって思ったよ」
日菜は髪も瞳も黒色で、光輝装も黒色。肌はあまり日焼けしておらず白に近い。だとしても、黒がほとんどで、黒に赤は映えるのだろうが、日菜はずっと疑問に思っている。
「あれ?お二人さん、久しぶりやな」
「信楽さん。それと………」
「日菜がアザリアガーデンにくるのは珍しいな」
「最近はしょっちゅう来てます」
2人の後ろから声をかけたのは、金烏のメンバーである信楽。そして、信楽の隣にはユヅキと同じぐらいの身長はありそうな、虎の獣人の男性がいた。
日菜とその男性は顔見知りなのか、親しく話している。
「おや、チャンと香ちゃんは知り合いやったんか!」
「はい。私が住んでるところが登竜山なので………」
「なるほどなぁ」
男性の名前は『チャン』と言って、日菜と同じく登竜山に住んでいる。そして、信楽とは長い間柄で、オルディナツィオ内では有名な人物だ。
「2人はデートか?」
「そんなものだよ」
(偽装だけど………)
2人が偽装婚約者ということは月光とカイキしか知らない。なので、今回はルナが偽装婚約の手伝い、蘭香は婚約の手伝いでアザリアガーデンに2人を向かわせた。
「それじゃ、わいらはここら辺でお暇するわ。楽しんでな!」
「あぁ」
信楽とチャンがどこかに行き、ソラキと日菜は互いに顔を見合わせて笑った。
信楽とチャンが偽装婚約を本当の婚約と思っているからか、知り合いに会えたからかはわからないが、2人はそのあと、月光への菓子を買って、帰って行った。




