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盲目の魔女  作者: いなリ
15/18

いつものいのりに

「いのり‥‥!」


保健室のドアを開けて、先生より先に入りいのりを刺激しないようにベッドに近づく。


「君は、そこで座って待っててくれ」


いのりの近くにいるとやはり邪魔になってしまうようだ、冷静さを失っていたため、そんな事もわからなかった。


「あ‥‥はい、すいません」


大きな怪我や、あとの残るような怪我は避けたい。

けれど避けたいとか、やだ、だとかでは結果は変わらない。


「ちょっといいかい、君?」


ベッドを覆っていたカーテンから出てきた保健室の先生は俺に何か言いたいことがあるようだ。


「はい、何でしょう‥‥」


「彼女の頭部に大きな怪我は見当たらない、少し頭をぶつけて切ってしまった怪我はあるけど、これくらいなら(あと)も残らないと思う」


今回は不幸中の幸いとでも言うべきだろうか。

奇跡よ、ありがとう。

と言いたい。


「そうですか‥‥!でも念のために早退させてもいいですか?彼女ちょっと訳アリで俺が家まで送っていってもいいですか?」


一応、病院で診てもらった方が俺としては安心できる、そして今日はいのりとずっといたいと思う、俺の希望で早退だ。


「まあ、わかったわ、私から担任に伝えておくわね」


「ありがとうございます!」


だが、いのりの家には誰もいない。

だから今日くらいは俺がいのりの家で面倒をみてあげたい。


「私が車を出すからあなたは助手席で道案内と付き添いをお願いするわ」


いのりの家は知っているし、付き添いもするつもりだ。


「はい、わかりました」


「私はね、さっきあなたを連れていくのはやっぱり反対にしようと思ったのよ。」


「あなたの担任がね、あの二人なら大丈夫だ、ああ見えてお互いがダメな所を補助しあってるし、それに両方ともしっかりしてるから」


「って、言ったのよ、確かにしっかりしてる、とは思ったのよ」


こんなにいのりの事を含めてだが、誉められると少し恥ずかしい。


「けれどね、あなたはこの彼女に何かあると判断力が落ちるからそこは気を付けないとね」


車に乗って10分ほど、ずっと先生といのりの事を話していた。


「ここです、いのりの家は」


車だとやはり早く、すぐについた。


「送ってくださりありがとうございました」


いのりは車が止まると目を覚ました。

やはり怪我は大したものではなかったのか、頭には包帯を巻いているがしっかりと歩けるようだ。


「迷惑をかけてしまい、すいませんでした先生」


いのりも保健室の先生に一礼をして、家に戻っていった。


「ねぇ、ちょっと来て?」


保健室の先生はいのりには聞こえないように俺だけを呼んだ。


「はい?どうしたんですか先生?」


先生の元へと駆け寄った。


「本当にあなたは彼女が好きなのね、青春は一度きり、大事よ?今を精一杯、もう無理だ!ってくらい楽しみなさい?」


とこっぱずかしいことを言い残して、車を出してしまった。


「まったく‥‥そんな事言われたら、今まで通りが難しくなるだろうって‥‥」


保健室の先生は意地悪だった。

いや、俺がただ単にいのりの事を考えないようにしていただけだったのだろうか。


「いのり、夕飯とか俺やるから座ってて‥‥いや、安静にしていてくれ」


いのりの家ってかまあ、独り暮らしのいのりなので

昼飯を作ろうとしていた。


「うん、わかったよ」


素直に自分の部屋に消えていったいのりだったが、すぐに部屋から顔だけ出して


「今から着替えるからいいって言うまで部屋覗かないでね‥‥?」


まあ、覗くなと言われても‥‥。

そこまで悪趣味じゃない。


「怪我人を焦らすようなことはしないよ」


と言うと


「うちが怪我してなかったら覗くんだぁーへぇー」


などと冗談を言うので


「しねーよ!」


といつものつっこみを入れてしまった。

だが、冗談を言えるほどの余裕があるのだろう、よかった。


「それじゃあ、何作るか‥‥」


などと独り言を言っていると、部屋から


「オムライスが食べたいなぁ」


とわざとらしい大きな独り言が聞こえた。

ならば俺も大きな独り言で事を済まそう。


「うーん、今日はオムライスを作るか~」


そんな事を大声で誰に語りかけるわけでもなく言うと

いのりの部屋から「ふふっ」と笑う声が聞こえた。




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