7 青炎の聖女、尋問されます
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ヴァルカン王城の一室。
すぐさま立ち上がってカーテシーをする。
「大変失礼いたしました。ロベリア王国スカーレット・ブルーレでございます」
「そしてロベリア王国筆頭聖女であり、最上級浄化聖魔法の持ち主。青炎の聖女殿、楽にしてくれ」
「レイヴァン殿下、もうわたくしは聖女ではございません」
「貴方は、まだ聖女だ。私は、青炎がカート領一面を焼き尽くし、朝焼けの太陽へ吸い込まれていくのを見た」
「……カート領におられたのですか」
「ああ。この国でも、少々厄介な事があってカート領に調査で滞在していた。しかも私の愛馬はあの青い炎を飲んでいた」
「まあ、きっと清らかな馬なのでしょう。青炎は焼くものを選びますから」
「スカーレット殿、髪を切ったのだな」
「いずれ裁かれる身ですから」
「美しい髪なのに」
「忌々しい青い髪ですわ、どこへ行っても目立つだけ」
「いや、あの青炎を見たからこそ、全てが洗われる色だとわかる」
何を淡々と話しているのかわからなくなってきたわ。
この方と話していると、なんだか巻き込まれていく。
「レイヴァン殿下、取り調べをお願いいたします。わたくしは、審問官の方にお会いしたいと」
「私では不足か」
不足も何も、何を言っているの、この方は。
「そうではございません。罪人の取り調べは審問官のはずです」
「あいにく、この件は、国王から一任されていてね」
困ったわ。王族相手に何を話せと。
「では尋問しよう。スカーレット、カートから乗合馬車で?」
「はい」
「公爵夫人であった貴方が、離婚され、女の身で、十五日間、小さな馬車と荷車と騎乗の旅、最後は庶民に混じって乗合馬車。疲れているだろう。少し休むといい」
尋問中でしょう?休めって何?
「殿下、早く裁いて頂きたいのです」
「何を裁けと」
「ですから、カート男爵領を荒れ地にしました」
「それの何が問題なのだ」
「え?」
「事の発端は、カート男爵家が王命を反故にしたことだ。あろうことか、我が国の聖女マリーヌが、研修先の隣国ロベリアで公爵夫妻に関わって醜聞を撒き散らした。しかも王命による伯爵家との婚約を勝手に破棄し、他国で勝手に婚姻。これは罪だ」
全部知ってるの?詳しすぎる。
「そうですわね」
「そして貴方は、ヴァルカンまでやって来て、カート男爵家に天罰を下した」
「……天罰ですか?」
「そうだ、そして、この件を責任者である王弟に報告をした」
「……報告ですか?」
「そうだ、他に何か問題があるだろうか」
いやいや、ちょっと待って、話がおかしいわ。
「お言葉を返すようですが、話が捻じ曲がっております」
「納得できない顔をしているな」
え?顔に出ていた?
「納得も何も、私は復讐をしたのです。聖女なのに、民を救うべき聖女なのに、怒りに任せて復讐をしました。自国の公爵領も」
「魔獣だらけにしたのだろう?そして太陽の光さえ届かない土地になり、カートは草木がなくなった。あんなに美しい天罰を見たのは初めてだった。しかも誰一人怪我すらしていない。これ以上何を尋問しろと?」
「違います、わたくしがしました。あの者たちが許せなかった」
「スカーレット。許せない、復讐したい。口ではそう言っているが、そこに醜く激しい感情はみえない。かなり冷静だ」
「……怒りはございます、わたくし自身は、激怒、と思っています」
「……そうか、では、公爵とは白い結婚だった」
「なっ」
「白い結婚に激怒を?愛されなかったから怒ったのか」
「殿下、白昼堂々と破廉恥なお話は、おやめください」
そんな閨事の話まで、ひどい。
「尋問をしろと言うから、尋ねている。白い結婚は間違いないのか」
「……間違いなく、私は清廉潔白です」
「深く愛していたのか」
心の中まで、まる裸にされていくみたい、もうどうでもいい。
私の誇りなんて。
「民だけを。民は愛していました」
「アルバート殿の事は」
まだ聞くの?しつこい。
「あんな男、愛するはずがないでしょう。断れない婚姻を迫り、公爵家の妻なのだからと。努力はした、でも愛されなかったし、愛せなかった。それが罪なのですか!」
やっぱり、なんか話がおかしい、叫んだら、頭がふらふらする。
「殿下、わたくしは、わたくしは」
拳を握りしめて立ち上がったけれど、身体に力が入らない。
後ろに引っ張られるように体勢が崩れる。
殿下が立ち上がって、こっちへ一歩踏み出すのが見えた。
「スカーレット嬢、もうここで旅を終えていいんだ」
涙が溢れる。最近、涙脆くなったわ。
「……もう、終わりにして」
がっしりした腕で受け止められた気がする。
私って、誰かの腕に支えられることなんてあったかしら?
そう思いながら意識を失った。
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