6 青炎の聖女、自首します
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アン、カート領で元上司との再会。
「アンジェ、お前の身に何かあったかと、生死も不明、周辺国からの照会もなく、助けようがなかった、許せ」
「レイヴァン殿下、それは影の運命、覚悟はできておりましたが」
「何かあったのだな」
「はい、ブラックが裏切り、二重の影に」
「何?カート領から採用したあのブラックか」
「はい。ですから本国の網は使えず、ご連絡もできませんでした」
アンジェはこれまで起きたことをかいつまんで元上司に話した。
「それで、ロベリアで処刑前に、公爵夫人に救われたら、それが青炎の聖女だったのか」
「はい、契約魔法で裏切れぬように誓っていましたが、この書き置きをおいて姿を消されました」
スカーレットの書き置きを見せるとレイヴァンが難しい表情になった。
「アン、というのはアンジェのことで間違いないな」
「はい」
「つまり、アンジェを自由にし、スカーレット嬢は決着をつけに行く、どこへ向かったかわかるか」
「全く。まさかロベリアへ戻られたということは」
「公爵領とカート領に厄災を落としておいて、わざわざロベリアへ戻るとは思えぬが」
「ずっと、領民を心配しておられました」
「まさに聖女の鑑だな。公爵夫人としての手腕はどうだった」
「領地経営を一手に引き受け、大変良い状況でした。使用人からも領民からも慕われておられて。殿下、私はどんな罰でも受けます。スカーレット様をお助けください、お願いいたします」
「あれほどの聖女を失うわけにはいかないだろう。まずは王城へ戻って情報収集をやり直すべきだな、私についてこい、今後の話はスカーレット嬢を保護してからだ、いいな」
「はっ!」
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ヴァルカン王国、王都への道。
その頃、私はヴァルカンの王都に向かっていた。
馬を手放し、そのお金で乗合馬車を乗り継いで安い宿に泊まる。
少しずつ王都に近づいていく。
馬車の中でカート男爵領の話に耳を傾ける。
「カートの領主様が大変なことになったらしいよ」
「聞いた聞いた、王様の決めたご縁を勝手に壊したらしい」
「お隣の国にも迷惑をかけたってね」
よく喋っているわね。
「木も生えない土地になったってさ」
「青い炎が土地を焼き尽くして、きっと神様のお怒りだよ」
「そうらしいね、住人はみんな他の領へ逃げちまったそうだよ」
逃げられたのね。
「あの辺りで薬草はもう採れないってよ、あんた薬草売りだろう」
おばあさんから声をかけられた。
「は、はい、そうです」
「あっちの方へ行っちゃだめだよ」
「あ、ありがとう」
「まあ死人は出てないってさ」
噂話を聞いて、ほっとする。
領民が無事で良かった。これで思い残すことはないわ。
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ヴァルカン王国、王城。
ああ、やっと着いたわ。
目の前に聳え立つヴァルカンの王城。
離婚してからすでに十五日が過ぎた。
大きな門はもちろん閉ざされている。
王族の馬車が通る時、貴賓の訪問がある時以外は開かない。
その横に騎士団の詰所がある。
そこで声をかけた。
「あの、騎士様、よろしいでしょうか」
「薬売りか」
「いえ違います」
「王城に用があるのか」
「はい、わたくし、カート男爵領を焼き尽くした者です」
「……お嬢さん、騎士団の詰所で、そんな冗談はいけない」
「いえ本当です。わたくし、ロベリア王国のスカーレット・ブルーレと申します。審問官の方に会わせてください」
そう言って、ローブのフードを外す。
薬草の染めは、あの湖ですっかり落ちていた。短くなった青い髪があらわになる。
「……まさか、青い髪……。君、ここで待つように」
そう言って門番の騎士は奥に引っ込んだ。
すぐ別の騎士が出て来て、馬車に乗せられた。
王城の奥へと移動し、一つの落ち着いた部屋へと通される。
どう見ても高位貴族向けの重厚なしつらえの部屋だ。
ここで尋問されるのかしら。
しばらく待っていると、ドアの外が騒がしくなって、突然扉が開いて一人の男性が入ってきた。
「スカーレットか」
「はい、自首をしに参りました」
その男性は席を勧め、私の前に座る。
騎士服を着ているけれど所作が洗練されている。
かなりの高位貴族だわ。
「お初にお目にかかる。レイヴァン・ヴァルカンだ」
これは、まさかのヴァルカン王国・王弟殿下。
どうしよう。




