2 青炎会できました
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カラバリ女伯爵邸にて。
「スカーレット様、フォゼット公爵はあんまりですわ」
「仕方ないわ、運命の恋だそうよ、好きなら一緒になればいい」
そう、一緒になって、貧しきときも病めるときも自領苦難のときも。運命の愛なのだから、手に手を取って歩んでちょうだい。
「でもヴァルカンから来たあの聖女。婚約者がいるにも関わらず公爵様に乗り換えるなんて」
「伯爵、怒っても仕方ないわ。それに引っかかった元夫に一番の責任があるのですから」
「そうは言っても。悔しくて」
「こうやって匿っていただくだけでも感謝しているのです、どうかもう、怒りは水に流しましょう」
「スカーレット様は、お優しいですわ、ちっとも変わらない」
「そうでもないわ、怒ってはいるのですから。それでね」
私はカラバリ伯爵に、神殿でしでかしてきた事を話す。
「まあ、素敵!」
素敵と言うものではないけれど、男に煮え湯を飲まされた女性なら、皆そう言うとは思うわ。
「でしょう?でも領民が心配なの。あの二人が手に手を取って、愛の力で苦難を乗り越えるのは自由よ、でも領民は違うわ」
「そうですわね、では領民はこちらで受け入れますわ」
「ありがとう伯爵。でももし全員が逃げ出してきたら、伯爵領でも多すぎないかしら」
「確かに。半分くらいはうちの領土でも大丈夫ですが、他に領地が広く、移民で農業や工芸が続けられるところねえ。公爵領から遠くない場所……」
横に控えていたアンが手をあげる。
「アン、何か案があって?」
「お話中ですが、辺境伯領はいかがでしょうか」
カラバリ伯爵が、ポンと手を打つ。
「確かに、サウスマウント辺境伯領なら」
「スカーレット様が、辺境伯の妹様をお助けした事がございました」
そうだったわ。サウスマウント辺境伯の妹のマーガレット様が、嫁ぎ先の子爵家で夫の暴力が酷く、でも監禁されて助け出せなかった。
聖女訪問で乗り込んで、神のお告げが下ったと言って、助け出したっけ。
カラバリ伯爵が立ち上がる。
「では、今から早馬で辺境伯様宛に文を」
アンが手をあげる。
「神殿を出る時に、辺境伯へ公文書便を出しました」
これはこれは!神殿から出る公文書便は、早馬を乗り継いで届けられる。
「アン、ありがとう。あなたは判断が相変わらず早いわね」
「いいえ、私にできることは、こんな事しか」
そう、アンは王家の元影だった。でも男に騙されて任務失敗、極刑になるところを私が引き取って侍女にした。自由にしてあげたかったけれど、影の立場上、自由にはできないと言われ、私と契約魔法を結ぶことで、事なきを得たのだった。
「とても助かっているわ。ねえ、アン。もしかしてあなた」
アンが、満面の笑みを浮かべた。
「はい!今までにスカーレット様がお助けになった皆様へ」
「だって、そんな時間なかったでしょう?」
「昔の仲間に、スカーレット様が大変だと、送り先リストを送ったのです。一人に送れば、仲間二十人に届きます。そこから各地域で手分けすれば」
確かに影の仲間なら、情報網は強い。
「リストって」
「スカーレット様がお悩みを聞き、励まし、生きる道を共に見つけた方々は、お元気になった後で、必ずお手紙をくださいました。それをリストにしていただけなので」
カラバリ伯爵が立ち上がる。
「アン、あなた素晴らしいわ。ではスカーレット様をお助けする会を立ち上げましょう」
いやいや、ちょっと待って。
お助け会はちょっと無理があると言って待ってもらった。
しかし、三日後には、カラバリ伯爵家に近い地域から駆けつけてくれた女性達が三十人は集まってきた。遠方の皆様は後日、別の場所で集会が行われるらしい。
そして決まった会は《青炎会》
なんか、ちょっと怖い闇の会みたいだけど。
スカーレット様を崇める会、よりはマシだった。
そして青炎会が発足した日は、私が離婚した三日後。
公爵領の例の『小作人が耕さずとも、聖女の祈りだけで豊かに実る土地』の穀物畑が、全滅した日だった。
結界を外した事で、魔獣がなだれ込んで食い尽くし瘴気で全て枯れた。
その一報が届き、みんなで拍手をして、お祝い会をした。
そして私達は次の天変地異に備えて、打ち合わせをし、皆は色々な役割を持って、いつもの生活へ戻って行った。
私はカラバリ伯爵領の土地に祈りを捧げる。
この領地が実り多き土地に。
領民が飢えることのないように。
次に目指すはサウスマウント辺境伯領。
公爵領の天変地異が起きるまであと四日。
急いでロベリア王国を出なくては。
国内にいれば、連れ戻される可能性が高い。
伯爵が出してくれた目立たない馬車で出立した。




