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夫が隣国の聖女と「運命の恋」に落ちました~離縁され激怒した青炎の聖女は何をするかわからない!厄災を振りまき自首しました~  作者: カンテラ澪


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1 青炎の聖女、離縁され静かにキレる

おかげさまで、日間異世界〔恋愛〕・完結済ランキング19位をいただきました。

応援してくださった皆様、ありがとうございます。


「スカーレット、お前とは離婚する」


今、神殿の廊下で、私は、公爵である夫アルバート・フォゼットに離婚を突きつけられている。


そして夫と手を繋いで俯いているのは、ピンクブロンドの隣国ヴァルカン王国から、聖女研修に来ているマリーヌ・カート男爵令嬢。


「どういうことでしょうか。神殿の廊下でするお話ではありませんが」

「聖女マリーヌを愛してしまった」

「……あなたには私という妻がおりますが」


何が愛?

五年前に、結婚を渋る私に愛していると跪き求婚してきたのはどこの誰かしら。


「君はマリーヌを虐めただろう」

「研修中の聖女を、何故私が?指導中ですのよ」

「指導のふりをして虐めていると、マリーヌは毎日泣いている」


押し問答が続き、だんだんと呆れてきた。


私は、聖女大国ロベリア王国の(なりたくもない)筆頭聖女。

日々の祈りに結界維持。

多くの女性の悩みを聞いて、必要とあれば保護や社会復帰の手助けをする。

更に、国外から研修に来る聖女たちの指導もしている。


この五年間、夫が国王陛下の政務補佐で多忙、仕方ないので公爵領の領地経営もしてきた。


「あなた、細かいことはもういいので確認させてください。愛と結婚は一致するとは限りません。そして私に求婚したのは、他でもないあなたの方です」


「そうだよ。だから僕から離縁を申し出ている」

そう自己完結型なのね。


「ごめんなさい、スカーレット様。私、アルバート様を愛してしまったのです」

「黙りなさい、マリーヌ。あなたヴァルカンに婚約者がいるはずでしょう」

「それは、婚約破棄のお手紙をもう実家に送りました。実家も公爵様の妻になっていいと」

「妻はわたくしですが」

「でも離婚してくれますよね?」


この女は馬鹿なの。


「スカーレット、君はそうやってマリーヌを虐めてはいけないよ。妻の座を譲るべきだ」


この男も馬鹿だった。



「……わかりました」

「ありがとう、やっぱり君は聖女だね」


そして神殿の廊下を奥へ進み、神殿長の部屋で離婚手続きを済ませた。

神殿長も、さすがに「待たれよ」と夫を説得したが、王族の男は得てして身勝手が多い。

ましてやフォゼット公爵の権力は国王陛下に次いで二番目。いくら神殿の力があろうとも、抗えない。

神殿長は気の毒そうに私を見たけれど、私はどこ吹く風だった。


「神殿長、長くお世話になりました。離婚となれば、公爵家の人間ではなくなりますので、筆頭聖女の役職は返納いたします」


首から下げていた、神殿の紋章が入る金色の紋章を返す。

そして神殿長室を出るときに、元夫は言った。


「ねえスカーレット、今日からマリーヌが住むから、君は出て行ってくれる?夕食までに猶予をあげるから」

「かしこまりました」

「あ、それと、僕が贈った宝石やドレスは置いて行って」

「承知いたしました」

「あ、スカーレット」

「まだ!何か!」


「い、いや、その、必ず夕食までに出て行ってね」


「わたくし、一度聞いたら覚えております。それともう公爵邸には戻りません」

「え、本当に?じゃあ、マリーヌ、すぐに邸へ帰れるよ」

「アルバート様、嬉しい。で、結婚の誓いは」

「もちろん、今するよ。神殿長、すぐに婚姻書類を」


私は、戯言を聴きながら、後ろ手にドアを閉め、神殿内にある自室へ急いだ。


復讐?

そんな事、知らないわ。


怨み?

元から愛してないのだから。


怒り?あるわ。

私の五年間を返して。

公爵家の力で実家のブルーレ伯爵家に圧力をかけ、私を娶った上に白い結婚。


ふふっ、ふふふ。聖女だって、怒るのよ。


私を誰だと?

青炎の聖女。青の炎で浄化し尽くす聖女。

急ぎ足で廊下をどんどん進む。


神殿長室に控えていた私の侍女が、足音を立てずに追いかけてくる。


「聖女さま、これから」

「大丈夫よ、あなたの身の振り方を……」

「ご一緒します。この命、助けていただいたのですから」

「でも、ここからは」

「きっとお役に立てますから、ご一緒させてください」


私は侍女アンの目を見て言った。

「ありがとう」

アンは嬉しそうにはにかんだ。


アンに緊急連絡を三件頼んで、簡単に荷物をまとめ始める。


その最中にアンが戻ってくる。仕事が早い。


「聖女様、先ほど、カラバリ伯爵がお祈りに来られ、ご事情をお話ししました。すぐに馬車を準備してくださるそうです。まずカラバリ伯爵邸へ。そこから目立たない馬車で」

「ありがとうアン」


カラバリ伯爵は、女伯爵だ。夫の前伯爵が女好きで領地を滅ぼしかけた。苦労に苦労を重ねて、神殿に駆け込んできた一人。

共に励ましながら、立ち向かって夫を追い出し、女伯爵になった豪傑。

ご厚意に甘えよう、と思った。

いくら聖女に力があっても、一人で踏ん張っても、生き延びることは難しい。


カラバリ女伯爵の馬車に乗るまでにまだ時間があった。


私は、最後に結界室へ急ぐ。


そして、フォゼット公爵領の『小作人が耕さずとも、聖女の祈りだけで豊かに実る土地』の結界を外した。

そこには公爵家の夏の邸もある。

収穫期の穀物が全て枯れるまで三日。


領民にはすぐに影響は無いでしょう。

その間に領民への対応はすればいい。


もう一つ、王都の公爵邸の結界も消した。ここの結界はアルバートでは張れない。せいぜいマリーヌに頼むことね。


公爵領に天変地異が起きるまで、あと七日。

七日以内にロベリア王国を出国しましょう。


そして、アンとお揃いの侍女服を着、青色の髪を纏めてメイドキャップで隠す。

小さなカバンだけを持って、カラバリ女伯爵の馬車に乗り込んだ。



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