番外編1 王弟レイヴァン、運命の恋に落ちました
「本編7 青炎の聖女、尋問されます」の王弟レイヴァン視点です。
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レイヴァンの独白。
スカーレット・ブルーレを見た時の衝撃を何と表現すればいいのだろうか。
騎士団の詰め所から連絡を受けた。
隣国の青炎の聖女と名乗る女が「自首」しに来ている。
町の薬売りの格好だが、髪色は青く、女神のように美しい女性。
詰め所の騎士が、不審者を「女神のように美しい」という事は滅多にない。後で叱責ものだ。
だが私には確信があった。
カート領で、金の瞳の女が落とした髪留めについていた青い髪。
そして、あの熱を持たずに燃える青炎をこの目で見たからだ。
青炎の聖女で間違いない。
すぐさま、私の私室の隣にある応接室へ案内するように命じた。
そして、はやる気持ちを隠せずに、扉を開けた。
私には見えたのだ。
青い炎に包まれた清廉な乙女が座っているように。
透明感のある陶器のような肌。
肩口で適当に切ってしまった青い髪。
それでも清い滝のように揺れる髪。
目の前の女神に、思わず跪きそうになったのを堪えた自分を褒めたい。
私が名乗ると、間髪を入れずに美しいカーテシーをする。
高位貴族らしい所作。
私の名を知ってくれていたのか。
相手は、周辺国で名を知らぬ者はいない有名な青炎の聖女。
五年前、隣国ロベリアの王弟のアルバート殿の妻になった事は知っていた。
人の奥方に見えない、どこか少女のような可憐さが見え隠れしている。
視線が外せない。
いや、見惚れている場合ではない。
その青炎の聖女に、我が国の末端の聖女が、大いにやらかした。
しかも男爵家の娘。
王である兄上から命じられ、調査でモンベル伯に会って事情を聞き取り、密かにカート男爵領に滞在し調査をしてきた。
カート男爵家は王命を反故にした。
あろうことか、娘は国家間レベルの前代未聞の醜聞をまきちらす。
彼女が少し気色ばみ、取り調べをしてほしいと強く言ってくる。
淡い水色の瞳から金の瞳に変わっていく。
カート領の祭りの夜にすれ違った金の瞳で間違いない。
しかし、その後から淡々と話す姿はまさに公爵夫人。
感情を見せない。
この女性が、どれだけ多くの人を救って来たか知っている。
我が国からでも、救いを求めて巡礼団が出るほどの聖女。
特に立場が弱い女子供には、分け隔てなく慈悲の手を差し伸べる。
カート領で偶然にも再会できた私の影、アンジェからは仔細を聞いていた。
死罪になるところを青炎の聖女に助けられたと言う。
二重の影を助けるなど、慈悲深さにも程がある。
現にアンジェは、死を覚悟した上で、私にスカーレットを助けてほしいと、地面に頭を付け懇願してきた。
気がついたら、白い結婚だったのかと、口走っていた。
スカーレットの瞳がまた金になった。
図星か。
しかしながら、何故か安堵していた。
いや待て。私は何を言っているのだ。
そうして押し問答をしている間に、彼女の心が少し見えてきた。
怒りで厄災を落としたから罰してほしい。
激怒したから、許されないと。
そうではないだろう、私は厄災を天罰と言ったが聞かない。
彼女が拳を握りしめて立ち上がった。
倒れる。
瞬間、身体が動き、倒れるスカーレットを抱き止めていた。
溢れる涙で瞳をいっぱいにして、彼女はこう言った。
「……もう、終わりにして」
聖女が、いや、女神が、いや、苦悩を抱え続けた可憐な乙女が、私の腕の中に落ちてきた。
神から授かったのではないか。
私は天を仰いだ。
もうとっくに、恋に落ちていた。
人は、これを「運命の恋」というのだろうか。




