番外編2 王弟レイヴァン、眠り姫を待ちます
番外編
「本編12 最終話 聖女じゃないけど幸せになります」の王弟レイヴァン視点です。
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国境の小さな神殿。
両国の結界を張る前に、スカーレットに求婚した。
考えたくないが、聖女が巨大な結界を張る時、命を落とす事がある。せめて思いを伝えたかった。
万が一の時は、生涯、独り身を貫く覚悟で。
聖女だから欲しいのか、と彼女は聞いた。
五年間、聖女の力も、公爵家の采配も、ただ搾取され続けてきた人だ。
だからこそ、幸せにしたいと思った。
そして、スカーレットは、私を選んでくれた。
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ロベリア王国とヴァルカン王国に、青い炎が流れるように行き渡っていく。
荒れ地となったカート領にも草木が芽吹き、美しい緑の地になる。遠くに見えるロベリア公爵領の真っ暗な空も、輝く日差しに照らされた青空になっていく。
その様を見た領民達は、次々に跪いて、祈ったと言う。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
スカーレットの身体から出る青炎が消えた時、彼女は私を見て微笑んだ。
「ありがとう、レイヴァン様。あなたと共に生きたかった」
水色の瞳から涙が一筋流れる。
静かに倒れていくスカーレットを抱きとめ、愕然とした。
聖魔力の流れが、全て消えていることに気がついたのだ。
「あなたは、自分が生きる分まで、民のために放出したのか」
魔力回復の聖水を口に含んで飲ませるが、スカーレットの喉は動かず、口から流れてしまう。
少しでも、少しでも、と一滴ずつ口に含ませていく。
どうか生きてくれ。
私の最愛。
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カート男爵を捕らえた時点で、カート領は没収され、王家の直轄地になっていた。
すでに兄上から旧カート領の復興を命じられ、公爵領として与えられていた。
男爵家の邸を改築し、スカーレットとの新居にするつもりで、王都にいた時から整備を始めていた。
新居になるはずの私達の部屋に、スカーレットを寝かせた。
片時も離れたくなかったが、重臣達に叱咤され、昼間は領地改革に励んだ。
その間は、アンジェと、青炎会から侍女になってくれた者達がスカーレットの世話をする。
スカーレットは、息はしているが、目覚めない。
身体も動かさない。
まるで美しい女神像が横たわっているようだった。
十日目。
痩せていた土地に領民がまいた種籾が、あっという間に育ち、豊かに実ったと報告が来た。
妻は、まだ目覚めない。
十五日目。
ロベリアとの国境では、青炎会の面々が力を貸してくれている。
特にサウスマウント辺境伯は尽力を惜しまず、力仕事には辺境騎士団まで出してくれた。
妻は、まだ目覚めない。
二十日目。
野菜や果物、羊や山羊まで元気になっていると、我が公爵領のあちこちから喜びの声が上がってくる。
眠り姫のまま、何も変わらない。
私は愛おしい妻に、毎夜、愛を囁き続けた。
「スカーレット、目を覚ましてくれ。どんな望みでも叶えよう」
「我が妻よ、愛している。その淡い水色の瞳に私を映してくれ」
「愛しい妻よ、我が公爵領の穀物畑は豊作だぞ」
「頼む、共に生きると約束しただろう」
「目を覚ましたら片時も離れないからな」
毎夜、執務が終わって、寝所に戻る。
美しい眠り姫に聖水を含ませ、口付ける。
そしてそっと抱きしめて眠る日々。
二十八日目。
私は自分が変質者ではないかと不安になってきた。
目覚めない妻を抱きしめて眠る夫。
いや、愛しているのだ。
何もおかしくはない、はず。
二十九日目。
妻が笑っている気がする。
アンジェが、私を気の毒そうに見る。
いや、微笑んでいるぞ。
妻の表情は何でも知っている、はず。
そして、三十日目の朝。
私は妻の寝言で目が覚めた。
「ふふ」
スカーレット?
とうとう幻聴まで聴こえるようになってしまった。
腕の中の妻を見る。
「ふふふ」
本当に笑っている。
「スカーレット、そろそろ目覚めてくれ」
額に口付ける。
愛しの妻の瞼がパチリと開く。
そして水色の瞳に、私が映っていた。
何て美しく可憐な微笑み。
思い切り抱きしめる。
スカーレット、スカーレット。
そしてこれから全力で、妻を甘やかし、深く長く愛していくことになる。
〜Fin〜
これで本当に完結です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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(10月16日に、19位もいただきました)
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新連載中!『継母が公爵様との縁談まで欲しがる』連載中です。作者名からどうぞ。




