11 青炎の聖女、断罪の場で青炎を放ちます
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ヴァルカン王国での日々。
殿下に一任するとお約束して、体力が全て戻るまでに、しばらくかかった。
一日の半分は、レイヴァン殿下の執務のお手伝いで福祉予算の補佐をし、王妃様のお手伝いで修道院や孤児院の視察や炊き出し、ヴァルカンの神殿では、聖女達への治癒魔法や浄化魔法の指導もした。
少しでも役目を果たしていると気が紛れた気がする。
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そして完全に復調したと侍医から告げられたのは、あと四日ほどでロベリアの結界が消える頃だった。
同時に、ヴァルカン国王立ち合いの元で、今回の一連の裁きが言い渡される日でもあった。
「スカーレット嬢、裁きには身元確認のために、立ち会ってほしいが、辛ければ」
殿下は気遣ってくださるけれど、ケリをつけなくては。
「いいえ、大丈夫です。わたくしも当事者ですから」
「わかった、では」
殿下のエスコートで裁きの間に入る。
中央には国王陛下と王妃陛下。
そして裁きの間の傍聴席にはヴァルカンの主たる貴族たち。この国の神殿長、これまでに指導してきた聖女たちもいた。
そして罪人の席にいた四人の中に、元夫アルバートと、聖女マリーヌがいた。
なぜ、ヴァルカンにいるの?
顔を見た途端にめまいがしたけれど、隣にいたレイヴァン殿下が背中をそっと支えてくれた。
法務官が罪状を並べていく。
カート男爵家の陰謀、実行したのは王家を裏切った影ブラック。
ブラックは孤児で、男爵家の孤児院で影になったらしい。
情報操作と、ロベリアで研修中のマリーヌとの連絡役。
そしてアルバートとマリーヌは、既に裁きを受けてロベリアから追放されていたところを、国境で捕まったらしい。
申し開きで、皆が口々に声高に主張する。
「私はお父様に言われただけよ」
「お前が馬鹿な娘だから、失敗したんだ」
「アルバート様が何も買ってくれなかったからよ、ケチな男」
「お前が馬鹿だからだ、スカーレットは何でもできた」
「可愛げのない青炎の聖女なんて、浄化ばっかりで、愛されなかったくせに、私は愛されたわよーだ」
「スカーレット、僕と一緒に国へ帰ろう、お前が一緒なら、兄上も許してくださる。もう馬鹿なマリーヌとは別れる」
「何よ、アルバート、あんな枯れ木は抱く気にならないって言ってたくせに。白い結婚だったんでしょ!今更」
傍聴席もざわつき始める。
「っ」
この二人、もう許さない。私は手を挙げた。
「異議がございます」
「スカーレット・ブルーレ、申してみよ」
「聞くに耐えません。僭越ながら、わたくしは青炎の聖女でございます。わたくしも当事者ではございますが、青炎の浄化でまずは選別をお願いしたく。心清き者には、全く害がございません」
法務官が国王を見上げる。
「ロベリアの筆頭聖女であり、我が国の聖女の指導者でもあったな。青炎の聖女よ。試してみるがよい。傍聴席に邪なものがいたらどうなるのだ」
「青炎からは逃れられません」
「それはよい、後ろめたいものは退席せよ。そのくらいは許してやろう」
懐の深い陛下だわ。
二人ほどがこっそりと出ていくのが見えたけれど、きっと後で捕まるわね。私には関係ない事だけれど。
「始めよ、青炎の聖女よ」
私はその場で跪く。
~穢れた心を持つ者全てをこの青なる炎で焼き払え。
何も残さず、ただ愛しきものだけがその姿をとどめよ~
目に見えてわかるように。
青い炎は、床を這うように部屋中に広がっていく。
陛下と王妃さまにも炎は走る。そしてお二人を包んだ炎は光り輝く青になる。
そばで私を支えるレイヴァン殿下も青く光り輝く。
ああ、この方々は。
この国は安泰ね。
そして傍聴席にも。皆、青の炎で包まれる。神殿関係者の席の周辺も少し光っている。
そして騒ぎ出したのは罪人の席の四人。
「いやーー、何これ、あっちいけっ」
「痛い、痛いぞ。やめてくれっ」
青い炎が消えた時、罪人たちは、頭も眉も、全ての毛髪が消えて、両の耳たぶにはくっきりと、青い×印がついていた。
レイヴァン殿下が私の手を取って、立たせてくれる。
「スカーレット嬢、瞳が一瞬、金色になっていたぞ」
嘘。またやっちゃった。
「それに、あの耳の印は×か」
「はい、罰の×です」
殿下が私の手をぎゅうぎゅうっと握る。
そんなに笑わなくても、わざとじゃないわ。
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断罪。
罪は重かった。
カート男爵家は爵位剥奪、領地没収の上、男爵は処刑。
その他の一族は辺境での労役に。
アルバートとマリーヌは、ロベリア王国での処分が決まっていたので、ヴァルカン国からも追放。
ブラックは処刑。
「ちょっと待ってよ、私は聖女よ、スカーレット、何とか言いなさいよ、聖女仲間でしょ」
この期に及んでみっともない。声が震えそうになる。
でも言わなくては、私の決意、終わらせる。
「マリーヌ、あなたはもう聖女ではないわ」
「そんなことはないわ、ヒール、ヒール、ヒール!あれ」
マリーヌの手からは何も出なかった。
「スカーレット、僕は騙されただけなんだ、一緒にロベリアへ戻ろう」
「わたくしの名を呼ばないでください。それにわたくしのような枯れ木にしがみついて何になるのですか。あなたは約束を破った!それ以上でも、それ以下でもない、もう生涯、関わらないでっ。終わりです」
私はアルバートから背を向けた。
それを合図に、四人は即刻、その場から退出させられた。
運命の恋人は馬車に乗せられて国境から追い出されたそうだ。
聖女マリーヌの色仕掛けはあまりにも両国に大きな傷を残した。
「スカーレット・ブルーレ。見事な青炎であった。そなたから申し出のあった両国に結界を張ることを許可し、ヴァルカン王国での暮らしを保証しよう。詳細は我が弟レイヴァンに従いなさい」
「陛下のお慈悲に感謝いたします」
「スカーレット嬢、よく乗り越えた。ゆっくりさせてやりたいが、ロベリアの結界が切れるまで時間がない」
「心得ております、殿下、お願いいたします」
そして、レイヴァン殿下の愛馬に同乗し、騎士団護衛の下、両国の結界を張るために、不眠不休でカート領の国境へ向かった。
ロベリアの民を守る結界が切れるまで、もう時間がない。
次回、最終話。
青炎の聖女の次の旅を、見届けていただけたら嬉しいです。
たくさんの評価ありがとうございます。




