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18:決意のマシンパワー

---

*支給品投入地点


 ピピピピピッ――


 リリス、アオ、ユリアの首輪から同時に電子音が鳴った。


『特別通告』


『特別ルール「No.02楔殺害による首輪解除」の条件達成者、審査完了』


「楔……」


 リリスは先ほどの死亡通知を思い出した。


 楔、スカーレット、ヒナタ――三人同時の死。


(誰が、楔を殺したの……?)


『No.04遮音リリィに、首輪の即時解除権を付与します』


「リリィ……!」


 ヒナタと一緒にいた少女。


 とても戦えるようには見えなかったが――確かに、4人いたと考えるとリリィしか残ってない。


『権利を行使する条件は、参加者一名の殺害です』


『条件達成後、自動的に首輪が解除されます』


「……っ」


 リリスの顔色が変わった。


「殺害……そんな……」


 リリスは愕然とした。


「……ひどい」


「あー、なるほどね」


 アオは楽しそうに言った。


「リリィが、楔が油断したとこを狙って殺したんだ」


「……アオ」


 ユリアが咎めるように言った。


「また、そんな風に……」


「ごめんごめん」


 アオは軽く謝った。


「でも、これで次の状況が見えてきた」


 アオはコンパスを見ながら説明した。


「リリィは、首輪解除のために誰か一人を殺さなきゃいけない。ターゲットは……私たち三人のうち、誰か」


「……そうね」


 ユリアは不安そうに頷いた。


「じゃあ、リリィが狙うのは――」


 アオは――リリスを見た。


「確実に、リリス」


「――っ!」


 リリスは息を呑んだ。


「なぜ……私?」


「だって」


 アオは当然のように答えた。


「君、主催者の手先だと思われてるから」


「……っ」


 リリスは何も言えなかった。


 そう、スカーレットと同じようにリリィにも誤解された。


「リリィは敵だと思ってる君を真っ先に狙うはず」


「そんな……私は、主催者じゃない……!」


「私は知ってるよ」


 アオは微笑んだ。


「でも、リリィは知らない」


「うぅ……っ」


「主催者の……って、どういうことかしら」


 ここまで単独で行動してきたユリアにとっては訳の分からない話である。


「誤解……誤解なの……!」


「落ち着いて、リリス。私が説明するから」


 アオは様々な偶然が重なりリリスが手先扱いされる経緯を話した。


「そんなの……ただの、決めつけじゃない」


「まぁ、向こうも確信してるわけじゃないと思うけど」


 アオは肩を竦めた。


「でも一つ一つは本当だから、一度疑ったらそう見えちゃうだろうね」


 リリスは肩を抱いて座り込み、震えだした。


 ユリアは、こんな儚い少女が、この非道なゲームの主催者の一員だとは到底思えなかった。


「――なら」


 ユリアは――真剣な表情で言った。


「私が、リリィの元へ、行く。あなたが……敵じゃないって、説得するわ」


「え……?」


 リリスは驚いた。


「でも、あなた……怪我してるのに」


「それでも……よ。あなたが直接話すわけにはいかないでしょう。アオには、リリスと一緒にいてあげて欲しい」


 ユリアの目には強い意志が宿っていた。


「だから……行くわ。それに……」


(リリィに謝らなければ。罠で傷つけたことを。そして――)


「ダメだよ、ユリアさん」


 アオは鋭い目つきでユリアを覗き込んだ。


「死ぬ気でしょ?」


「――っ!」


 図星だった。リリスの代わりに殺される――リリィを傷つけたことの、ユリアなりの贖罪。


「何があったか、知らないけどさ。そんなつもりな人を行かせるわけにいかないよ」


「ユリアさん……そうなの? どうして……」


 ユリアは何も言えなかった。気まずそうに目を逸らす。


「大体さ。リリィの居場所、わからないよね?」


「……見当は、つくわ。ここから南の方の……恐らく、楔たちと戦った場所。そこからあまり動いていないはず」


「正確な位置が分からないなら、同じだよ。ユリアさん、あんまり動き回ったり大声で呼びかけたり出来ないでしょ」


 ユリアは歯噛みした。アオの言う通り、この体で積極的に探し回るのは難しい。


「それでも……!」


「……待って」


 リリスが口を開いた。


「もしかしたら、わかるかもしれない」


「え?」


 アオとユリアはリリスを見た。


「ゼロツーで管制室にアクセスできる。リリィの位置情報を、取得できるかもしれない」


『可能』


 ゼロツーが答えた。


『管制室のシステムにアクセスし、首輪の位置情報を取得する』


「安全性と所要時間の推定は?」


『推定――不可。リリス・ゼロワンの補助次第』


「そ、そう……。でも良かった……」


 リリスは一瞬喜んだものの、恐る恐るユリアを見た。位置情報を教えてしまったら彼女はすぐに出発してしまうだろう。


「あ、えっと、……今のは……」


 リリスが言葉に迷う間にアオが割って入る。


「ユリアさん。リリィの位置が分かるまで、結構かかるみたい。その間に考えて、本当に行くかどうか。現在位置と移動方向が分かれば隠れてやり過ごせる。無理に説得に行く必要ないかもしれない」


「……そうね、待つわ」


 ユリアは少し考え、溜息をついた。


「確実にリリィの場所が分かるなら……その方がいい」


「あの……」


「分かったら、ちゃんと教えなさい。でないと……怒るわよ」


 リリスは助けを求めるようにアオを見た。しかしアオは真剣な顔で頷いて答えた。


「……はい」


 リリスは、ゼロツーに髪を接続し、手を置いた。


「ゼロツー、管制室のシステムにアクセスして」


『了解』


 ゼロツーの胴体がわずかに駆動音を上げる。


『通信機能、起動』


『管制室システムへのアクセス――開始』


 リリスは自分のハッキング能力を使い、ゼロツーを補助した。


 髪が青白く光る。


 データが――脳内を駆け巡る。


(管制室……見えた……! セキュリティに引っかからないように――)


【18:00】


 リリスは無事に管制室のシステムに侵入した。


 膨大なデータ。


 参加者の位置情報。


 首輪の状態。


 このゲームの全てが――目の前に広がった。


(リリィ……どこ……?)


【18:05】


 リリスは――じっと、ゼロツーに手を置いたまま。


 目を閉じて集中している。


 アオは静かに、その様子を見ていた。


 ユリアは痛む肋骨を押さえながら、待っていた。


「……疲れる」


 リリスが呟いた。ハッキングはCPUとバッテリーに負荷がかかる。


【18:10】


「……っ、見つけた!」


 リリスは目を開けた。


「リリィの位置――わかった!」


「どこ!?」


「中央森林地帯、東南東」


 リリスは地図を呼び出し、該当する地点を指さした。


「ここから――約1キロ。ゆっくりだけど、こっちの方に移動してる」


「1キロ……」


 ユリアは自分の体を見た。


 肋骨骨折。呼吸するだけで痛い。


「……どれくらい、かかるかしら」


「普通に歩けば15分」


 アオが答えた。


「でも、ユリアさんは怪我してる。けどリリィもこっちに向かって来てるから……30分くらい?」


「……そうね」


 ユリアは立ち上がろうとした。


「つっ……!」


 痛みが走る。


「大丈夫?」


 リリスが心配そうに尋ねた。


「……大丈夫」


 ユリアは歯を食いしばった。


「これくらい……耐えられる」


「やっぱり、行くの?」


 アオの口調は諦めたようだった。


「行くわ」


「……気をつけて。どうか、死なないで」


 リリスは――震えながら言った。


「ありがとう」


 ユリアは微笑み、そして――


 ゆっくりと、リリィへ向かって歩き出した。


 アオとリリスは、ユリアの背中を見送った。


 痛みに耐えながら――それでも、前に進むユリアの姿。


「……止められなかった」


 リリスが呟いた。


「うん」


 アオも珍しく、一際真剣な表情で頷いた。


「それが、あの人の選択。止められないよ」


 アオはコンパスを見た。


「リリスも、ちょっと分かったんじゃない? 観測者の気持ち」


「……分からない。楽しく、ない」


「それが普通だよ」


 アオは軽く笑った。リリスは、その笑顔がライブラリの何に該当するのか分からなかった。


「……続き、やらなきゃ」


 ユリアが危険なら、余計に悩む暇はない。再びゼロツーに手を置く。


「これ以上管制室にアクセスし続けるのは危険。次は、首輪の解除」


 管制室のシステムは予想以上に複雑だった。位置情報を取得するだけでもそこそこの時間がかかってしまった。


 ゲームそのものを止めるまで掌握するには、位置情報の取得程度より格段に時間がかかる。


 時間がかかればその分逆探知の危険も高まる。今回セキュリティに引っかからなかったのも不思議なくらいだ。


 ならば首輪を解除しなければ、爆死してしまう。


『了解』


 ゼロツーが答えた。


『首輪解除プログラム、起――』


「待って」


 アオが口を挟んだ。


「首輪には、翻訳機能があるって言ったよね」


「……そういえば」


「ってことは完全に解除したら、お互い言葉が通じなくなるよね?」


「――っ!」


「だから、一部だけ機能停止させなきゃいけない。爆弾と監視機能は止めて……翻訳機能は残す」


「……難しい」


 リリスは困ったような表情をした。


「下手に弄ったら……分解行為を検知して、爆発するかも」


「それでも、やるんでしょ?」


 リリスは――頷いた。


「……やるわ」


「なら」


 アオは、自分の首輪を指さした。


「私の首輪で、試して」


「えっ……!?」


 リリスは驚いた。


「でも……もし失敗したら……」


「爆死する?」


 アオは――軽く笑った。


「まあ、そうだろうね」


「なのに、なぜ……?」


「だって」


 アオは楽しそうに言った。


「私も、そろそろ体張らないとね。ずっと観測してるだけじゃ、つまんないし」


 一転して真剣な表情になる。


「それに……私、君のこと信じてるから」


「……っ」


 リリスの髪が、一瞬だけ発光する。


「ありが……」


 リリスはそう呟きかけ、誤魔化すように頭を振った。


「じゃあ……やらせてもらう」


 リリスは再度髪をゼロツーに接続する。


 ゼロツーも、アオの首輪にアクセスする。位置情報や通告の送受信システムを利用したハッキング。


『首輪解除プログラム、起動』


『対象: No.03夜凪アオ』


『リリス・ゼロワンによる補助――待機中』


「……始める」


 リリスの髪が――青白く光った。


 首輪の内部構造が――見える。


 複雑な回路。


 爆弾。位置情報発信機。翻訳装置。


 それらのセキュリティが相互に絡み合っている。


 首輪の解除プログラムを作ったゼロは、やはり天才だったのだろう。


 その解除プログラムを、一部の機能だけに誘導するのは、至難の業である。


 リリスは慎重に、システムに介入した。


 アオは静かに、目を閉じた。


「……頑張ってね、リリス」


「……任せて」


---


【初日 18:20】

【生存者: 4名】


---


【状態表】


【夜凪アオ(夜に溶ける観測者)】

 健康状態:良好

 所持品:コンパス

 現在位置:支給品投入地点(リリスと共に)

 第一行動方針:リリスに首輪解除を任せる

 第二行動方針:ユリアの無事を祈る

 最終行動方針:ゲームを盛り上げる

 備考:リリスを信じている。首輪解除の成否は不明


【ユリア・フェルナ(帰る場所の番人)】

 健康状態:肋骨骨折、背中強打、中度の疲労

 所持品:無し

 現在位置:支給品投入地点(森林地帯・東南東側へ移動中)

 第一行動方針:リリィの説得

 第二行動方針:償う

 最終行動方針:誰も殺さない

 備考:殆ど死ぬ気で向かっている


【リリス・ゼロワン(廃棄された光)】

 健康状態:軽傷(打撲)、バッテリー40%

 所持品:小型工具セット、ゼロツー(修復50%)

 現在位置:支給品投入地点(アオと共に)

 第一行動方針:アオの首輪解除を試みる

 第二行動方針:成功すれば他の参加者の首輪も解除

 最終行動方針:誰も殺さずにゲームを終わらせる

 備考:ユリアを止められなかったのを後悔しているが、意志の強さに感銘を受けた。首輪解除の成否は不明


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