考えてみたら毎日が初めて記念日
「知らんのかーいっ!!ああああああっ!!くそっ!!まさかこの私がこれだけツッコミに回ることになろうとは……!くっ……!くそぉぉっ!!メガネがずれてよく前が見えんっ!!」
がりべんはなんとかメガネを元の位置に戻そうと体を回転させる。いつの間にか仰向けになり、頭とつま先だけで体を支えるブリッジの体勢になっていた。そのままの姿勢でがりべんは続ける。
「YAMIKIN様は、チャンネル登録者数一千万人、動画の総再生数は百億回を超えるなろうチューバー界の第一人者だ!なろうチューブ創設以来、第一線で活躍してきた猛者!!その戦闘力は一人で小国を壊滅できるとまで言われる!!」
「へぇー」
「リアクション薄っ!!その活躍はなろうチューブ内だけに留まらず、なろうチューブの広告塔、魔族討伐のシンボルとして幅広くの媒体に出演。大規模な魔族討伐作戦の際は軍略家が意見を聞くために、各国の首相が作戦への参加を打診するためにYAMIKIN様の元へ訪れる。その戦闘力と知恵と経験を讃えられて、世界各国から表彰されるまさに国賓級の魔族討伐のスペシャリスト――ごほっ!ごほっ!……の、喉が……!」
「そういえばご飯どうしてんの?」
「みっきぃ様が食費をくださるので、スーパーで買ってきます」
「――それがYAMIKIN様だっ!……って聞けぇぇぇっ!!そもそもなんで貴様ら、揃いも揃ってなろうチューバーで一番有名なこの御方を知らないんだぁっ!?」
「僕、こう見えてもなろうチューブあまり見ないので!ドンッ!」
「私、こう見えてもなろうチューブはあまり見ないので!ドンッ!」
「言い慣れてるなぁぁぁっ!!??少しはためらいの心を持てぇぇぇっ!!!それでもなろうチューバーなのかぁっ!!??」
「うわぁぁっっ!!!遂にがりべんに言われたぁぁぁっっ……!!!」
「観念なさい……これに関しては言い訳できないわ……」
「えーでも、そんなにすごい人だとは思えないんだけどなぁ……確かにトロルを一撃で倒すほど強くて、天空マンションに住んでるけどさぁ……」
「そうですとも!みっきぃ様はいつも玄関を通る度に、鼻の下を伸ばして『ああ~なんか女の子の良い匂いがするなぁ~』なんて考えてるんですから、そんな人がすごい人だとは思えません!!」
「それお前の妄想ぉぉぉぉっ!!風評被害あるからやめてくれるぅぅぅっ!?!?」
「はっ……!?やっぱりこのなんとなく芳しい匂いは女の子の匂いだったのか!?」
「がりべんが言うと壊滅的にキモいっ!!」
YAMIKINは顎に手を当ててがりべんを見据えた。
「――しかしがりべんの言うことも、もっともだぞ?学校へは行っておいた方がいい」
「ええ……っ!?」
「トップなろうチューバーになればなるほど、ワールドワイドな活躍が期待されるからな……語学はもとより、世界情勢や経済学、世界史、各機関のリーダーと協力できる協調性など学校で学べることは多い」
「へぇぇ……」
「ほぉぉら、見ぃろぉぉっ!?私の言ってたことが正しかっただろぉぉぉうっ!!やぁーいっ!やぁーいっ!馬ぁー○!!馬ぁー○!!ア○んだらぁぁっ!!!」
「途端に知性と品性がゼロになったわね……」
「がりべんには悪いけど、ブリッジ状態のやつに罵られても全然悔しくないってことがわかったよ」
「がりべんはなかなか見応えのあるなろうチューバーだな!先見の明がある!――ってことで、俺部屋で休むわー」
「あっ!相談所の件は――?」
「ん?あー別に構わんぞー?好きに使えー」
YAMIKINは光に包まれると、天空マンションへ飛んでいった。
「よしっ!みっきぃさんからオーケー出たし。……やりますかっ!!!」
リュートは腕まくりすると、自身の頭にバンダナを巻き付けた。そのまま玄関を飛び出すと、なにやら庭先で物音を立て始める。
「YAMIKIN……ヤミキン……ゃみきん……。あっ!……だから、みっきぃ……」
「はぁーん……だから検索に引っかからなかったのねぇ……」
「……そろそろ解いて……」
「でぇっきたーっ!」
「おおーっ!」
パチパチパチ――
小一時間かかってリュートが拵えたのは、「YAMIKIN相談所」と書かれた大きな看板だった。それを道行く人の誰しもが拝めるように、玄関の壁に取り付ける。
「〝リュート相談所〟じゃなくてよかったの??」
「どうせなら、みっきぃさんのネームバリューに乗っかっちゃおうよ♪その方がお互い宣伝になるし!」
「ホント、ちゃっかりしてるんだから……」
「チャンネル開設の方はどう?」
「それはバッチリよ!ここの地図も載せてある」
「流石ティンク!よし!それじゃあ相談者が来るまで、気長に待ちますか……」
ワイワイ、ガヤガヤ……
「リュート……これ、マジ……?」
「う、うん……流石にこれは僕も想定外……」
「いくらなんでも、ネームバリューの効果が効き過ぎではないでしょうか……?」
一同が眺める窓の外には驚きの光景が広がっていた。庭一面――いや道いっぱいに人だかりができている。誰も彼も玄関のドアホンを押してはこないものの、YAMIKIN相談所目当てに集まった野次馬のようである。第一号の相談者の出現をリュート達以上に待ちわびている様子だ。
「やはりYAMIKIN様の人気は本物だ。子供から老人まで、あらゆる層に人気があるからな……。それよか、どうする気だ!彼らの期待を裏切ることになるぞ!?」
「がりべんは弱気だなぁ……!バッチリ僕らで相談事を解決しようよ!そうすれば期待通りだよ!!」
「わかってないなリュート……彼らはYAMIKIN様のネームバリューによって引き寄せられた、YAMIKIN様のファン達。いわばYAMIKIN様の追っかけだ……」
「それが何だって言うのさ?」
「彼らが待ち望んでいるのは何だ……?YAMIKIN様を見たい。YAMIKIN様の声が聞きたい。YAMIKIN様が話を聞いてくれた。YAMIKIN様が自分達の相談に乗ってくれた。その体験だ。彼らはYAMIKIN様による相談事の解決を一縷に望んでいるのだ……。そんな中にリュート達のような、どこの馬の骨とも知れない弱小なろうチューバーや迷惑なろうチューバーが現れてみろ……っ」
リュートはみるみる青ざめた。
「大ブーイングだよ……!!!」
「そうだ。……くそぉっ!こんなことならクローゼットの中を漁るんじゃなかった……!!」
「そこまで遡るのなぁぁっ!?一応反省してるようで安心したわっ!!」
ピンポーン――
リュート達はその音に凍りついた。そのなんとも暢気なドアホンの音がこれほどまでに耳に突き刺さるのをかつて感じたことはない。リュートは半ば泣きっ面でがりべんを見た。
「リュート、落ち着け!まだ相談事と決まったわけじゃない……!」
「……う……ん。そうだね……。えっと……ど、どなたですかぁ~??」
そのリュートの声に、ドアの向こう側の人物はすぐさま反応した。
「相談事に来ました~!」
「――がりべんっ!どうしよう!!相談事きちゃったよぉ~っ!!」
「もう腹をくくるしかないな……っ!!」
がりべんは勇ましくリュートの前に出て、ドアノブに手をかけた。
「……リュート。俺がドアを開けたら、背中を押してくれ!」
「……がりべんっ!お前……っ」
「いくぞっ!」
がりべんの手が勢いよく向こうに押し込まれた。部屋の中に外の明かりが入る。人々からどよめきが上がった。
「ほいっ!」
「えっ――!?」
バタンっ――
ドアは一瞬全開にされた後、すぐに閉じられた。玄関の前には、ポツンとリュートのみが立たされている。ドアを開けたがりべんが、リュートの手を引いて外へ放り出した。そしてすぐにドアを閉じたのだ。
「リュート、悪いなっ!」
「てめぇぇっ!!!きたねぇぇぇっっ!!!!」
ドアの中から微かに聞こえる籠もった声に、リュートは抗議の声を上げた。
「幸運を祈るっ!!」
ガチャという、ドアの鍵を締める音が無情にも響いた。
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