行列のできるなんとか相談所は不吉 後編
「動画を作る上で、まず相談者の相談事を聞くところから撮影しようよ」
「ああそうだな……なるべくドキュメンタリー番組っぽく、視聴者が感情移入できるようにしないとな」
「インタビュー形式で相談者に悩みを話してもらう。そのあとの画面で相談のポイントを箇条書きで表示してわかりやすくする!」
「動画の最後に相談事募集の告知もしないとな。相談者にも協力してもらって一緒に告知すると、尚良いかもしれん!」
「イケるよ!がりべん!!リュートお悩み相談所、絶対成功させよう!」
「無論だ!がりべん学習相談所の名を、なろうチューブで轟かせるぞ!!」
「……ってか、どこ向かってんのよ?」
三人は乗合馬車を降りてしばらく歩いていた。
「ここだよ!!」
「ここは……みっきぃさんの家じゃない――というか、玄関だけど……」
「みっきぃ?誰だそれは……?」
ピンポーン
玄関に備えられたドアホンをためらいなくリュートが押す。
「みっきぃさん、留守かな……?」
ガチャ。ドアホンのスピーカーを震わすことなく、その家のドアは三人の前に道を開いた。
「はーい。どなたですか~?」
「やあ、ショーコ!元気?」
「突然ごめんね~。なんかこの二人が用があるらしくてさ……」
「リュートさん、ティンクさん、ごきげんよう……あら、がりべんさんも?」
「……」
「あんた、なにか言いなさいよ……」
「……い、いや……」
「あんた――まさか女の子の家に来るの初めて?だからアガってんの?」
「なっ……!そそそそんなわけないだろっ!」
「くししし……顔真っ赤よ……?」
「ま、まぁ……立ち話もなんですから、どうぞ中へ――」
「女子の家に上がるのは、はは初めてだが!断じてアガってなどいないっ!!」
「あーはいはい、そうですかー」
「お邪魔しまーす……ってがりべん大丈夫?鼻息でメガネ真っ白だけど……?」
「はぁぁっ!!?なななにを言ってるんだリュート殿ぉっ!?鼻息ぃ??なんのことだか――」
バタンッ!
「ズッコケたぁぁぁっ……!!」
がりべんは足がもつれてその場に倒れてしまった。
「大丈夫かっ!がりべん!?」
「な、なんのことだ?私は寝転がりたかっただけだ!あー疲れたなー」
「ここ玄関だけどなぁっ!!流石に無理があるぅぅっ!!」
「さて、足も休めたし。次の行程に移るか……」
「次の行程……?」
がりべんは立ち上がると、おもむろに壁際のクローゼットに近付いた。そしてクローゼットのノブに手をかけると、一気に扉を開く。
「ぎゃああああぁぁぁぁぁっ!!!なにやってんですかぁぁぁぁっっ!!!??」
ショーコは赤面しながら問い質した。クローゼットを全開にしたがりべんが、ガサガサと中を物色し始めたからだ。
「ん?何って、何かアイテムがないかな?と」
「それ昔のゲームの主人公がやるやつぅぅぅっ!!!!」
「リアルにやるやつがあるかぁぁぁぁっっ!!」
「……ん?なにやら、すべすべした柔らかいものがっ!!これはお宝の匂いがっ!!!」
「やめさらせせせえぇぇぇぇぃぃぃっ!!!!」
「ずず……それで、本日はどういったご用件でしょうか?」
「私の分のお茶は……?」
「うん!実はリュート相談所を開こうと思って!ここを使わせてもらえないか、話しに来たんだっ!いただきます!ずず……」
「えっ!?まさかリュート、ここを事務所みたいにするってこと??いただきます。ずず……」
「私の分の……」
「うん。だって寮で相談者を受け入れて、インタビューやら何やらしちゃうと迷惑がかかっちゃうでしょ?いつもそこらの野っ原でやるわけにもいかないだろうし、どうせなら借りちゃおうかなって……ずず……」
「はぁ……ホントそういうところ、ちゃっかりしてるわよね……ずず……でもまあ適度に広いし、事務所には丁度いいスペースよね」
「私も……何か飲みた……」
「あの……?最初から教えていただけませんか?事務所?また私は出ていかなければならないのでしょうか……?」
「喉が……渇いた……」
顔中コブだらけのがりべんを他所に、リュートは顛末を説明した。がりべんは後ろ手に縛られ、テーブルの前に一人正座をさせられている。
「なるほど……っ!相談所のチャンネルを開設するのですね。それで再生数を稼ぐと……」
「そう!……実はショーコにも手伝ってもらいたくて、その相談にも来たんだ」
「ぶっ……!……リュート!ちょっと……!」
ティンクはショーコに背を向けると、ソファの背もたれの上から声を潜めた。リュートもティンクに顔を寄せる。
「どういうこと!?ショーコも相談所のメンバーにするってこと!?」
「そうだよ。面目ないけど僕とがりべんより、ショーコの方が格段に強い。もし格上の魔族相手の相談事が寄せられたら対応できないからね」
「でももし魔族を倒してっていう相談が寄せられた場合、この子は魔族を保護しようとするわよ?それでもいいっていうの……?」
ここでリュートは体を捻って、再びショーコの方に向き直った。
「人畜無害な魔族ならいざしらず、人を困らせている魔族には何かしら対策をしなければならない――それはショーコもよくわかってるはずだよ。ね?」
「……」
ショーコは言葉を詰まらせた。目が踊る。心なしか肩を落としたように見える。
「気が進まないなら、無理強いはしない。……けれど魔族によって困らされている人の姿を見るのも、大事なことだと思うんだ。戦いに参加するかどうかは、その後で決めてもいいからさ」
ショーコは両腿に乗せた手をぐっと握りしめて言った。
「わかりました。魔族を保護する手立てが最後までないか、この目で確かめるために参加します」
「うん!ありがとう!あらためてよろしく!ショーコ!!」
「あと一つよろしいでしょうか?」
「え?なに?」
「相談事を解決後の相談者の勧誘は相談所の活動に入りますかぁ!?」
「遠足のおやつのノリかな?……好きにしなよ……」
「よぉっしゃぁーっ!!これで〝ハラショー様の出所までに信者百人できるかな?〟チャレンジ成功に一歩近付いたぁっ!!」
「インスタのノリで言ってんじゃねぇぇよぉっ!!もっと深刻になれぇぇっっ!!なんか勧誘禁止にしたくなってきたよぉっ!!」
「だから言わんこっちゃない……はぁ……」
ガチャ――
リュート達は玄関のドアに視線を集約させた。そこには当屋敷の主が疲れた顔をして立っている。それを見るなりショーコは起立して主を出迎えた。
「お帰りなさいませ。みっきぃ様!」
「ああ、ただいま。今日はキメラの親子を散々やっつけてきたぞー」
ショーコはそれを聞くなり項垂れて、視線を足元に落とした。
「やめたげてぇぇぇっ!!ショーコはそれ聞くたびに傷付いてるのぉぉっ!!」
「みっきぃさんの帰宅の度にヘコまされてるのね……気の毒だわ……」
「おう!リュートとティンクも来てたのか――って!そいつ誰だよ!?泥棒か何かか!?!?」
主に泥棒呼ばわりされたがりべんは、声の元へコブだらけの顔を向けた。
「げっ!?なんだぁ……?人んちの玄関で拷問でもしてたのか……?」
「あー違うんです違うんです……こいつが人んちの物を勝手に漁って、持っていこうとしたので……!」
「まんま泥棒じゃないっ!!!弁護できてないわよぉぉっ!!!」
「そんなことはどうでもいいんですっ!みっきぃさん!お話しがっ!」
「そんなこと……っ!?」
「おう、なんだっ?」
「ここをリュート相談所の事務所として貸してください!!」
「リュート相談所……?なんだそりゃ?」
「それはですね――」
「バカもーーーーんっ!!学校へ行けぇーーーーぇっ!!!」
突然の怒号に一同冷ややかな視線を送る。
「……」
「おいぃぃぃぃっ!ウジ虫を見るような目で私を見るなぁぁぁっ!!??」
がりべんは大声の拍子にバランスを崩して、ゴロンと後ろ手のまま床に転がってしまった。
「リュートお前!気安くその御方に話しかけているが、その御方がどのような方か知っているのだろうな!?」
「え?みっきぃさんのコト?え……?最初はトロルさんだったよ?」
「いや最初から俺な!?トロルは俺が倒したのっ!!」
「ティンク!ショーコさん!リュートにちゃんと説明してるのかっ!?この御方の立場のことを!?」
「え……?へ……?そ、そんなにすごい人なの?え……?」
「え……?立場……?いつも偉そうに指図して、自分は空高くへ上がってしまう立場のことですか?何のつもりですか?何様ですか?殿様ですか?」
「ショーコさん毒吐きすぎぃぃっ!?こんなキャラだったのかっ!?いやそれより貴様ら学校へ行けぇぇぇぇっ!!学校へ行かないからそんなこともわからんのだぁぁっっ!!」
がりべんはイモムシのように床で体をくねらせながら言った。
「この御方はなろうチューバー界に君臨するいわば王〝YAMIKIN〟様だっ!!」
「YAMI……!」
「KIN……!」
「動きキモっ……!」
それから三人は揃って首を傾げた。
「……って誰?」
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